銭湯従業員より愛をこめて

こんばんわ。
本日も無事に仕事を終える。尊い。
『無事』とは言うものの、日曜日でいつもより営業時間が長く、来店されるお客様も多く、まったくなにもないというわけでもない。

勤務中はほぼノンストップで動きまわっているため、お客さま対応案件が発生するとフロントさんから館内放送がかかる。サウナのテレビのチャンネルとか、浴室の暑い寒いとか、申し訳ないけどせっけん買ってきて、などなど。動きまわっている途中でお客さまから直接お声がかかることもある。きょうもそんなふうに呼びとめられた。


「ロッカーから生姜の匂いがする」と。


むむ。これは女性ロッカーあるある案件か。昨年の夏、記録的な連日の猛暑のなか、スーパーの買い物帰りの生モノやおすそ分けの漬け物での異臭騒ぎがいくつか発生し、張り紙で注意を呼びかけたことがあった。ここは銭湯。およそ３０度前後に保たれ、浴室からたちこめる湯気で高湿度の脱衣室。キムチは秒でバレる。

しかしそのロッカーは、カギが行方不明のためしばらく使用していないロッカーだ。むむむ。最後にロッカーを使った人がなにか食べ物を忘れていったのだろうか。だとしたら、けっこうヤバめな腐食具合になっていることはまちがいない。かといって確認しないわけにもいかない。よし。

シフトの交代で一緒になった先輩とふたり、フロントでマスターキーを借り、深呼吸をし、勇気をふりしぼり、いざ問題のロッカーを開け放った。にわかには信じがたい光景を目の前にして、私は言葉を失った。

なんにも入っていなかった。