自分の心と体をととのえる、お酒の革命【人と計画の車輪 #1】前編
こんにちは、301 Magazineです。
今回はちょっとだけ新しい視点で、noteを書いていこうと思います。
今まで詳しくお伝えする機会のなかった、301が0から1を生み出すときの理論や哲学、その過程のお話です。創業8年目にして初めて、見える形に整えることができました。
「人」と「計画」の観点でプロジェクトを捉えて対話を重ね、思考を深めていくオリジナルフレーム『人と計画の車輪』です。
301全ての企画の共通するのが「人生と仕事をひとつにする」という考え方です。その仕事において、人生をかける価値を見出せるのか、301と依頼主がお互いに追求していきます。
深く思考に潜っていくと、そのプロジェクトを通して追い求めるべき"問い"が必ず見えてくる。というより、見つかるまで、深く深く潜り続ける。
その"問い"こそが企画の核となり、人が集まる理由となり、社会における存在意義になっていきます。
これが301の考えるいい企画のはじまりであり、その価値の探究と実現を支えているのが『人と計画の車輪』という地図です。
『人と計画の車輪』のコトハジメ
クラフトジンのブランド「HOLON」ができるまで
ここからは具体的な事例と共に、301の仕事をお伝えしていきます。
クラフトジンのブランド『HOLON』が生まれるまでのお話を、HOLONプロデューサー 堀江 麗さんと301代表 大谷省悟の対談形式でお送りします。
0. 発起人_ブランドの起源を探る
「飲み会文化への違和感」
ーー大谷
301の根底にある考え方として、”課題解決”よりも”想い”から仕事が始まるべきだと思っています。そのため、発起人(=プロジェクトの中心になる人)自身の思考をとことん深堀りする、それがスタート地点です。
HOLONの場合は違うけど、企画やデザイン、ブランディングの依頼背景として、担当の方から「会社としてこういう課題があるんですけど」という相談を持ち込まれるケースも多いです。
そこで必ず行なうのが、主語を会社ではなく「自分」に置き換えてもらうこと。会社のもつ課題を解決するためではなくて「あなた自身は何がしたいの?」と、目の前の人の想いを聞いています。
この対話をすることで、依頼を受ける側も、目の前の人の想いに共感するポイントを見つけられる。お互いがプロジェクトに意味付けられている、熱量の高い状態を作れます。仕事が始まる最初の段階で、常に意識していることです。
ーー麗さん
初めて301を訪ねた時は「健康にいい、新しい養命酒を作りたい」くらいの抽象度でした。でも、大谷さんと対話する中で、自分は特に心や精神性への興味が高いことに気がついて。それがブランドの設計にも強く結びついています。
やっぱり自分の頭の中だけだと、どういう機能のものを作りたいっていう、後から勝手に出てくるはずの手段ばかり考えてしまって。「じゃあ本当の目的はなに?」という部分を問いきれていなかったと思います。
ーー大谷
最初の2ヶ月くらいは、何がしたいのかって話を永遠としていたよね。
お酒がつくる安心感と、内観の共通性
ーー麗さん
その中で、大学時代に抱いた違和感がベースにあると気がついて。自分はもともと社交的なタイプではあるけど、飲み会文化には全然馴染めなかった、苦い思い出がありました。
そこから「飲む」という行為について調べた時に、昔から儀式的な役割を持つことを知りました。飲み物は個体よりも、身体への影響が瞬発的なので、場合によっては命を奪うことも容易です。そのため、人と飲み物を交わすことは「安心できる関係性」の確認として、重視されていたそう。
ただ、お酒はそのような安全性の確認と同時に、強制力を持たせる側面も持っていて。「私飲むから、あなたも飲むよね」っていう、現代でいう飲み会コール文化にも繋がるものだと考えています。
安心を共有する側面に共感した一方で、強制力が働くことには違和感があると気がついたんです。お酒との付き合い方を考えていた時に出会ったクラフトジンが、そのイメージを大きく変えてくれました。
クラフトジンはお酒の中でも使える素材の自由度が高く、特に香りの表現の幅がとても広いです。その豊かな香りを感じた時に、意識のベクトルが自分の内側へ向いていくという、初めての感覚を味わいました。
普段から瞑想やヨガを手段として取り入れていても、それが目的にすり替わってくると入り込めないモヤモヤがあって。でも、クラフトジンを飲んでいるときは、自然と自分のための時間を取れて、私に馴染む”メディテーション”のカタチだと感じました。この飲酒体験の変化という部分が鮮烈だったことに、大谷さんとの会話の中で気がつきました。
そして、最後の最後で「そういえば私、精神性の話はとても興味があります」と、また1つ重要な原体験を話していきましたね。
自分の内側と繋がる時間、余白をつくること
ーー大谷
かなり話した後に、突如チベットの話が出てきて。そんな隠し球持ってたの?と思いましたね。
ーー麗さん
これも話すと長いですよね(笑)実は大学一年生の時に、今の自分のルーツとなる出来事があり、このブランドの文脈にも繋がりました。
当時は国際協力に関心が向いていたことから、ユネスコ職員をされていた大学の先生に、インド遠征へ誘っていただきました。そこで、ダライ・ラマ法王とお話させていただくという、ある意味で強烈な体験をしたんです。チベット動乱の末に、数万人の民とともにインドへ亡命した「世界一有名な難民」とも言われる方なので。
当時の知識量や思考力で解釈しきれなかったことも、その後の人生で社会への視点が深まるにつれて、実感を伴って反芻されている感覚があります。こんなに貴重な体験をしたのだから、影響のない人生を送ってはいけないなとも思います。
また、その頃は近い人との対話や関係性に悩んでいた時期で、自分の感情のコントロールの仕方を学ぶ目的から、心理学の勉強も始めました。ヨガや瞑想などの手段を取り入れ始めたのもその頃です。自身の精神状態と繋がっていくという意味で、気持ちに余白を作る方法や、自分を見つめる時間についての発信など、今後もライフワークにしたいと考えています。
ーー大谷
大学時代の違和感から始まり、クラフトジンとの出会い、精神との向き合い方など、様々な点が繋がっていったね。
ーー麗さん
最終的に、自分が本当にやりたいことは「メディテーションという新しい捉え方で、飲酒体験を作っていくこと」であると思いました。
発起人の"なぜやるか"を深く掘り下げ続けることで、「飲酒体験のパラダイムシフトを起こす」という、共通の問いが見えてきました。
次回は、その問いを実現させるために必要な体験設計や商品機能など、具体計画がどのように積み上がっていったかについて。お話が進みます。
▶︎後編は【1.体験】【2.ナラティブ】【3.プロダクト】の3点から成る、計画の車輪についてのお話です。
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CREDIT
Speaker:Rei Horie(HOLON)/Shogo Otani(301)
Graphic Designer : Yurika Omoto(301)
Text:Natsumi Nakajima