ロマンスの時刻合わせ【ショートショート】
”異性の子ども時代を想像できたら結ばれる”
遠い昔にそんなことを聞いたようなと、ぼんやりしていた真知子は機械的にハンコを押した。お昼当番で座っていた窓口に、郵便屋さんが書留を持ってきたのだ。
20歳代中頃かな? 配達のヘルメットからのぞくイガグリ頭が初々しい。新卒って言っても通るぐらいのあどけなさだ。きっと、小学生の時分から、こんな感じやったんだろうな。
開襟の白シャツにパリっとしたアイロンがいつもあたっていて、勤労少年の肌にその白が映える。お母上が当ててくださったのか。いや、この利発な少年ならばきっと自分であてていたのだらう。と、少年時代に想いを馳せる。
夏場は白のランニングで過ごしてはったみたいだけど、グンゼみたいなあっちのタイプでオシャレ度はゼロな感じ (こら!)。お父上は出兵なさって不在の模様。お! アルマイトの弁当箱を開けたら日の丸が出てきました。梅干しとご飯のみ。すごい〜。
アレ? ちょっと待って。時間が動いて…いる? 一体彼はいくつの設定やねんな。てゆーか、そもそも恋愛対象外やん。ずいぶん年下なはずで、まだ子どもなんだから。犯罪やん。そうそう、想像するにも躊躇いのブレーキをかけないと!
ところが真知子の倫理観をよそに
動き出した時間は止められない。
彼女の想像が、タイムマシーンを出動させた。
彼と真知子のロマンス時刻を合わせるために。
脚本で韓国デビューを目指す会社員です! もし、アタイをサポートしてくれはるのなら…あなたのおはようからおやすみまで笑いで見つめるライオンと化します(ガオー)