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吉祥寺

私は吉祥寺に縁もゆかりもない。

エピソードもなければ、「実は1回も立ち寄ったことない」みたいな新鮮さもない。
マジで思い入れがないのだ。


しかし、私が好きな人は大抵、吉祥寺に縁が深かったり吉祥寺を愛していたりする。

まず、好きな芸人さんトップ2である又吉直樹さんと野田クリスタルさん。

大学時代、一番お世話になった先輩も、親友も、中央線沿いに住んでいて、吉祥寺を庭にしている。

人生で一番好きになった元彼も、青森出身のくせに吉祥寺にものすごく思い入れがあるらしかった。

そうなってくると悔しい。
私も吉祥寺を愛したい。
せめて思い出のひとつでも作りたい。
しかし作りにいくのは違う。
自然発生的に思い出が欲しい。

そんな思いを3年ほど抱き続けていた。


そしてつい先日、友達を誘ってアップリンク吉祥寺に行く予定を立てた。

無論映画を観るためである。


11時にアップリンクで待ち合わせることにした。


だが、せっかくの吉祥寺思い出チャンスである。
早めに着いて少しでも長く吉祥寺を謳歌したい。

とはいえ早く着きすぎるのも自然発生的でないので、10時過ぎくらいに吉祥寺に着く。

地元で買ったパンを携えて。

南改札の向かい側、井の頭線の改札の前に休憩スペースがあったので、そこで座ってパンを食べることにした。

鞄から塩パンとパン・オ・ショコラを取り出しながら、どうせなら吉祥寺で買うべきだったとひどく後悔した。

ひとつ吉祥寺思い出チャンスを逃してしまったのだ。

しかも駅の中でパンを食べるなんて、果たしてこれは吉祥寺を謳歌してると言えるのか?

などとある程度モヤモヤしていたものの、暑くてあまり出歩きたくないので、仕方なくぼさっと人の流れを眺めながらパンを食う。

まず塩パン、めちゃくちゃ硬い。
ぼさっと人間観察している場合ではなくなる。
集中力の全てを注がないと食えないパンだった。

そしてパン・オ・ショコラ、とにかく食べづらい。
なんか皮みたいなパリパリがこぼれるこぼれる。
集中力の全てを注がないと食えないパンだった。

こうして私の思い出は更新され、パンに全集中の街・吉祥寺となったのでした。
ちゃんちゃん。

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