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【連載小説】雨恋アンブレラ

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2020年7月の記事一覧

【連載小説】雨恋アンブレラ_3

 3

 その日、ミキちゃんは朝から機嫌が悪かった。
 昨日、一昨日と学校を休んでいたから、一昨日のお昼休みのことは知らないはずなのに、知っているとしか思えないような機嫌の悪さだった。
 ハイヒールを履いているのかと思うくらい足音を鳴らして教室に入ってきたかと思えば、机に鞄を放り投げて、すぐに出ていった。
 その数秒だけで、教室の空気が凍りついた。わたしの下腹部は生理のときみたいに痛みだして、背中

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【連載小説】雨恋アンブレラ_2

 2

 雨が降る直前にだけ、立ちのぼるにおいがある。地面の底からふわりと香ってくるような、雨の気配がするような、重くて柔らかくて、どこかせつなくなるにおい。
 ずっと、誰も気づいていないんだと思ってた。小さいころから胸のうちに秘めていた、わたしだけが知っている世界の秘密だと思っていたんだ。
 でも、それは少しだけ違った。
 そのにおいにはペトリコールという名前がある、と教えてくれたのは、岡本先生

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