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3.11 パンダ発見の日

パンダはいい。
生まれた時はネズミみたいだが
すぐにすくすく成長し
あっという間にぬいぐるみのごとき丸さを有する。

パンダはいい。
多少顔の造形が崩れていたとしても
それも味として認められることが大半だ。

パンダはいい。
最初にパンダを発見した人は
きっと驚きつつ誰かの作った偽物かと
首をかしげたことだろう。
白と黒の愛らしき姿。
いったいそのツートンカラーで
自然界のどこに身を隠そうというのか。

パンダはいい。
きっとパンダのことが
宇宙で一番好きなのは
人間でしかあり得ないとまで思う。
両耳の先と目の周りだけが黒く塗られた
何故そんなに人間受けする顔をしているのか。

ぼくはパンダになりたかった。
出来ることなら無条件に
不特定多数の人間に愛されたかった。

深夜のノリとテンションで
段ボールをマッキーで黒く塗りつぶし
その耳をテープで頭に付け
墨汁で目の周りを黒く染めてみた。

鏡に映ったぼくはどうみても妖怪の類で
ぼくは衝撃のあまり激しく吹き出し倒れ込み
しばらくの間畳の上を転げまわった。
腹を抱えて転げまわった。

少し冷静になると
その姿は上野の赤ちゃんパンダに近いようで
ぼくはまた涙をながして笑い転げた。
涙は目の下の墨汁を溶かし
畳に跡を残した。

やっぱりパンダはいい。
劣等感だらけのぼくを
こんなにも笑わせてくれる。

パンダになれない事が分かったぼくは

無条件に多数の人間には
愛されないことも同時に理解したので

粛々とただ自分を磨いていくことにした。

たとえ受け取れる愛の数が少なくても

たぶんぼくがこれからの人生をかけて

なんとかパンダになるよりは
その方が早いと思うので。

3.11 パンダ発見の日
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