シェア
小島
2020年3月27日 15:13
彼女の家の時計はいつも二分だけずれていて、だから彼女の家では毎時〇二分と三二分に鐘が鳴る。だいたい十度くらいずれた彼女の日々は、容赦なくわたしの暮らしにすべりこんでくる。 「酔狂だね」 耳元で掠れた、少し低い声がする。薄暗くだだっ広いホールの中に隣り合って座っていた。周囲を見渡してもほんの数人しかいない。若いカップルや女の子たちなんていなくて、小さい子どもを連れた家族と、おばあちゃんの団体