渚に/て//

ひとつひとつ殺意を込めて順に息の根を絶やしていく仕事。海の映像がまたひとつ乱れて砂嵐に変わる。砂の城はきみの指先にいとも簡単に壊されてしまって、そのままわたしはさらに大きな波に呑まれてゆく。こうして身を委ねているとき、わたしはいつもそこに打ち棄てられた遺体になったような気分でいる。毛先の靡く方角にひたすら進んでいるとまるで魂をくり抜かれたような気持ちになるのに、きみに手を引かれるがままに歩いている時は何もかもが輝いて見えるのが可笑しくってこわくなって結局すぐに振り解いてしまった。深夜のサービスエリアで流れていた知らないJ-POPを歌えるフリしてきみと一緒にハミングする時にはいつも決まって目は合わせずにその小さく動く口元ばかりを見ていた。そういうの、全部気付かれてたんだろうな。わたしたちはいつも手を繋いでいない方の手にはそれぞれナイフを握っていて、決してそれを翳すことなく生活を捲り続けている。きっとこの手を離す時もわたしたちはわたしたちにそのナイフを翳すことはなくて、それが何よりもわたしたちを抉る事実だと思った。どんなノンフィクションよりもきみの作るフィクションのほうが本当で、公転のなかで踊るとき、きみの右手が自転軸になる。互いの引力で遠ざかるふたりの重力にこの手が振り解かれた瞬間、だんだんときみは霞んでいって、改札の中に紛れてゆく背中が滲んでいって、そうして焦点が合わなくなっ て。き みが◼️みじゃなくなる瞬間。瞼の裏のお揃いのメモリが光に遮//ら/れる。 _ _ _ お探しのページが見つかりませんでした。__ _ _

__ _まもなく◼️番線に電車がまいります。危ないですから黄色い線の内側までお下がりください。_ __ _

一体どちらが内側なのか分からずに立ち尽くしている身体の、その背後で流れるメロディを耳にして、崩れたはずのノイズが波になって押し寄せる_ __ ___ ______________________
_.√
どこかで息を吹き返す音が聞こえた。
(ほら、あの時ちゃんと根を絶やしておかなかったから。)  砂の城はもう元には戻らないのに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?