4年●組のあの子

太陽の色を瞼の裏に映して見るのが好きだった。
ルーペを使ってわたしの足元のアスファルトを焼き払ってしまおうと思い立った時、集合の合図が横切って、光を遮る手が昇る。瞼で感じるその光の温度よりも、それを遮る手のひらの体温の方が高いことには気付かずに。きみの後ろに並んでいると前ならえの空白も突然こわしてみたくなる。ピンと伸ばした腕をほどいて急に抱きついても笑って赦してくれる子のことが好き。わたしが水色であの子がピンクだったけど、本当はわたしもピンクになりたかったことだけ今でもずっと覚えてる。もう忘れちゃったけど。少女漫画は読まなかったくせに携帯小説で恋をして、先読みしようとして捲れた国語の教科書がわたしの教室を広げてゆく。席替えで隣の席になれるだけで運命だったら良かったのに。わたしも早くきみに掴まえられて鬼になりたかった。雑誌のコラムの占いで一喜一憂していた夕方を恋しく思う時、心の縁が焼けていくような気がして思わず全てを吹き消してしまった。お誕生日おめでとう、わたしたちがはじめて暗闇を望んだのはここに生まれてしまった時だったね。蝋燭の灯を吹き消して、子宮の記憶をたぐり寄せようとする時、拍手の音に弾かれて、暗闇を遮る声が響く。あなたがくれた言葉と羊水の温度の、一体どちらの方があたたかいのか、わたしはずっと気が付くことができないまま、茫然と目の前のフラッシュに焚かれている。
飛散した光を掻き集めて、そこにわたしが浮かび上がってくるまでの時間にいるとき、はやくおとなになりたかったわたしが瞼の裏を駆け抜けていった。
              鬼さんこちら、手の鳴る方へ。

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