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きみの脈拍を感じてわたしは所詮他人なのだと知ったあの日、はじめてきみとひとつになりたいとこころから願いました。願い事は、叶わないからするものなのだということも知っていたから。きみをもっと解りたくて、だけどそうしてきみに触れる度にわたしたちは他人になる。きみの脈拍を感じた瞬間、わたしの身体もおおきくおおきく脈を打つ。ああ、きっとわたしたちはひとりでも生きていけてしまうんだね。それでもこうしてふたりで身を寄せ合っていること、わたしを抱きしめるその腕の力とだんだんと速くなるその脈拍が、きみのことをすこしだけ教えてくれたような気がして、わたしはいつもそれだけできみのすべてを解ったような気がしてしまう。その傲慢さこそが、わたしたちが他人である事を何よりも証明しているというのにね。

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