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事業承継の構成要素③知的資産の承継

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円滑な事業承継を実現するためには

①人(経営)の承継
 ⇒ 経営権

②資産の承継
 ⇒ 株式、事業用資産、資金

③知的資産の承継
 ⇒  経営理念、従業員の技術や技能、ノウハウ、
   経営者の信用、取引先との人脈、顧客情報、
   知的財産(特許等)、許認可 等

これらの各経営資源を適切な形で後継者に承継していくことが重要です。

今回は事業承継の構成要素のひとつである「知的資産の承継」について事業承継ガイドラインをもとに深掘りしていきます。

知的資産の承継とは

事業承継の3つの構成要素のうち、多くの中小企業経営者は

①人(経営)の承継

②資産の承継

この2つに重点を置いてしまう傾向が強く、
事業承継とは単に

「株式の承継」+「代表者の交代」

と考えてしまい、事業承継の手法や手続きの議論に終始してしまうことがよくあります。

後述しますが、この③知的資産こそが

「自社の強み」・「価値の源泉」であるため、

知的資産を次世代に承継することができなければ、その会社は競争力を失い、将来的な事業の存続すら危ぶまれる事態に陥ることも考えられます。

知的資産とは何か

事業承継における知的資産とは、

従来の貸借対照表上に記載されている資産以外の無形の資産であり、企業における競争力の源泉のことです。

・経営理念            
・従業員の技術や技能
・ノウハウ、組織力        
・経営者の信用
・取引先との人脈、ネットワーク  
・顧客情報
・知的財産権(特許やブランド)  
・許認可

等々、財務諸表には表れない目に見えにくい経営資源の総称を指します。

ウチの会社にはそんなもの無い?


いいえ、そんなことはありません。
必ずあります。

どのような規模、どのような状況の会社であっても、自社から製品やサービスを選び、購買してくれる顧客がある限り、自社にとっての知的資産があり、事業運営に活用されています。


もしも本当に知的資産が一つも無いのであれば、顧客に価値を提供できず、その会社が存続することはできないでしょう。

現在に至るまで自社が存続していることが、自社に知的資産が存在していることを示しているのです。


知的資産の承継 その前に

事業の円滑な運営や付加価値の高いサービスを提供できる要因が、

例えば、
「経営者と従業員が良好な信頼関係を構築していること」だったとします。

これも知的資産です。

事業承継により、経営者が交代することによって

その良好な信頼関係が崩れ、事業の運営が不安定になったり、サービス品質の低下を招いたり、さらに従業員が大量に退職するような事態に陥る。

という事も十分にあり得ます。

このような事態を未然に防ぐためには、
「自社の強み」・「価値の源泉」が経営者と従業員の良好な信頼関係にあることを後継者がよく理解し、従業員との信頼関係構築に向けた行動をする必要があります。

このように「自社の強み」・「価値の源泉」がどこにあるのか?

現経営者が理解し、後継者に承継することが極めて重要なのです。


知的資産の承継を実践する

知的資産の承継にあたっては、まず自社が保有する知的資産に気づくことから始めると良いでしょう。 

これは知的資産の棚卸しです。

知的資産の棚卸しとは何をすればいいのか?

まずは企業概要と沿革を整理していきましょう。

創業から法人設立、そして現在に至るまでを時系列で整理します。

次に業務の流れを一覧にして整理しましょう。

製造業であれば、
製品企画 ⇒ 設計 ⇒ 仕入調達 ⇒ 製造 ⇒ 営業販売 ⇒ 納品設置

それぞれの業務内容を細かく掘り下げましょう。

会社が成長してきた過程において、又は一連の業務の流れの中に
何らかの「自社の強み」があるはずです。

例えば、

・企画力・設計力・技術力・提案力を認められた
・設備投資して、短納期の依頼に対応できる
・品質管理やアフターサービスが評価された
・企画、設計、製造、納品設置まで一括で対応可能
・従業員教育に力を注ぎ、人材が豊富
・受賞歴があったり、公的認証を取得した
・地元での知名度があり、集客力がある
・安定して販売ルートを保有している
・仕入れ先との良好な関係でアイテム数が豊富
・接客力が高く、リピーターが多い


いかがでしょうか?

難しく考える必要はありません。
実は、経営者や従業員にとっては当たり前すぎて、普段はあまり意識していないことが「自社の強み」であることは往々にしてあるのです。 

次に今まで経営者として大切にしてきた
「経営理念」や「経営方針」を改めて整理してまとめましょう。 

これらを後継者と一緒に整理していく過程で、業界動向や現在の課題、将来のビジョンなどを対話していくことになるはずです。

場合によっては、専門家をファシリテーターとして招いて「棚卸し」をするのも良いでしょう。

ただし、注意が必要なのは


棚卸しの主役はあくまで現経営者と後継者です。
第三者が勝手にまとめた「棚卸し」では全く意味がありません!


財務諸表に表れない経営資源の重要性を現経営者と後継者がともに理解し、共有することで知的資産の承継が進んでいくのです。




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