事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)

以前の記事でご紹介した事業承継を実行するまでの5つのステップ

このうち、ステップ③ 「事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)」について事業承継ガイドラインを参考に深掘りしていきたいと思います。

「事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)」の目的

近年、中小企業において親族内承継が減少し、従業員承継や社外承継が増加している背景として、当然、少子化問題もあるわけですが、

事業の将来性や経営の安定性について
後継者候補が懐疑的になっている

ことが挙げられます。

こうしたことからも、承継前に経営改善を行い、後継者候補が会社を継ぎたくなるような経営状態まで引き上げておくこと、企業価値の高い魅力的な会社にすることが大切であると考えます。

企業価値が高い会社とは?

そもそも「企業価値が高い会社」とはどういう会社のを指すのでしょうか?

色々な見方があると思いますが、

・他社に負けない「強み」を持っている会社
・業務が効率的で無駄がない組織体制を構築している会社

であると考えます。

自社に強みがある分野において業務を拡大していくことができ、
拡大していながらも、各部署の権限や役割が明確になっていて、意思疎通が図られ、業務がスムーズに進行する運営体制がある。

このような企業であれば、
後継者候補の考えが変わり、承継を承諾する可能性は十分にありますし、
社外承継となった場合でも、企業価値は高く評価されることでしょう。

過度な節税対策は企業価値を下げてしまいます

親族内承継においては、相続税対策に重点が置かれすぎるあまり、事業とは無関係な資産の購入や節税を目的とした持株会社の設立等により、

株価を意図的に低下させるなど、中小企業の事業継続・発展にそぐわない、企業価値を下げてしまう手法が用いられていることが指摘されています。

事業承継は、
経営者交代を機に飛躍的に事業を発展させる絶好の機会と考えることもできるのです

画像1

  (出展:事業承継ガイドライン)

事業承継ガイドラインによると、
「経営者の交代あり」の企業は、「経営者の交代なし」の企業に比べ、経常利益率の上昇幅が大きいことが見て取れます。

経営者の交代が企業の収益力向上に寄与しているのです。

事業承継は、経営者交代を機に飛躍的に事業を発展させる絶好の機会であるにもかかわらず、過度な節税対策を講じたがために企業価値を低下させることは、あまりにも勿体ないことだと思います。

経営者は、
後継者が継ぎたくなるような魅力的な会社に磨き上げたうえで、次世代にバトンを渡すまで経営改善に努め、より良い状態で後継者に会社を引き継ぐ必要があるのです。

会社を磨き上げの対象は?

魅力的な会社に磨き上げる というと、「業績の改善」や「経費の削減」等によって、収益を増やすことをイメージしませんか?

確かにその通りです。
しかし、それだけではありません。

商品やブランドイメージ、優良な顧客、金融機関や取引先との良好な関係
優秀な人材、知的財産権、営業上のノウハウ、効率的な生産体制 など

決算書に表れない「自社の強みとなる知的資産」のすべてを指します。

磨き上げとは、
自社の「強み」を高め「弱み」を改善すること


そもそも「磨き上げ」とは何をするのか

「磨き上げ」の対象はわかりました。

しかし何をすれば良いか分からないと感じる方もいると思います。

ご心配なく、難しく考える必要はありません

「磨き上げ」の事例を紹介します。

自社のシェアが高く、ニッチ市場における商品・サービス拡充によって市場でのブランドイメージを高める
技術力を活かして製品を高精度化し、生産ラインを再構築して短納期化にも対応することで高付加価値化を図る
営業部門・製造部門の合同会議を行ってコミュニケーションを向上させ、顧客ニーズや生産情報を共有して、製品品質と生産性効率の向上を図る
大量生産に対応できないことを逆手にとり、
小ロット多品種に対応する体制を構築して、大手企業には対応できない小ロット案件の受注増加を図る
社員研修を強化し、資格取得を奨励することにより
優秀な人材を確保し、サービス品質向上を図って、他社との差別化を実現する
特定の取引先に対する売上依存を是正するため、
技術者を営業同行させる体制を構築して新規開拓を進め、経営リスクの回避を図る
社員全員が参加する会議で会社の将来について
自由に議論し、実際の経営計画に盛り込むことで、社員が主体性をもてる体制を構築する
社内の風通しを良くして、いつでも相談できる体制を構築したうえで、社員に権限を委譲し、社員のモチベーションを向上させる
業務マニュアルを整備し、業務が効率よく流れる体制を構築する
事業に必要ない資産を処分し、余剰負債の返済に充て、
スリム化を図る

いかがでしょうか?

「磨き上げ」のイメージができたでしょうか?

難しく考えることはありません。
自社にとって「こうした方が良いのではないか?」と感じることを
少しだけ工夫して実行する。

これは立派な「磨き上げ」なのです。

まとめ

事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)を掘り下げてた今回の記事はいかがでしたか?

目的は、
後継者候補が継ぎたくなるような魅力的な会社にすること

方法は、
「こうした方が良くなる」ことを少しだけ工夫して実行すること

これを忘れずに「磨き上げ」を進めていただきたいです。



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