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「人を信じるな」という言葉を携えて

 皆様こんにちは、にーきゅうです。
 表題の台詞は前職の上司の言葉でございます。

 お題「#大切にしている教え」とのことで、真っ先に思い浮かんだのがこれでした。なんで?


 改めて「人を信じるな」
 言葉だけ取ると実にダークサイドですね!

 ただ、私自身はそこまで悪い意味では捉えていないのです。この言葉を発したときの上司の心情はともかく。

 皆様もよくご存知の通り、私はかつて盗賊ギルドに所属していたのですが……とか書いちゃうと茶番寄りになってしまいますので止めましょう。悪い仕事はしてないですワヨ。

 詳細は濁しますが(古めのオタク、身バレ怖さに自分の情報明かすの嫌いがち)、まぁ大きめの会社に10年以上勤めておりまして。
 最終的には周囲からも良い評価を頂いていたのですが、最初の数年はもうボロボロのボロ。
 何故かって、業種は学生時代の専攻とも異なる分野でしたし、荒っぽいおじさま達の中に馴染める気がしませんでしたからです。そもそもいずれ転職する気に満ち溢れていたため、モチベーションが低かった。今なら確実に自分が悪いと言えますが、若造だった私にはそう思えなかったのです。

 さて、件の上司の話。当時はあの人も五十そこそこだったでしょうか。よく怒鳴る人でした。暴言を自ら愛情と言う人でした。思い込みで濡れ衣を着せてくることもありました。ペットのチワワには激甘で、部下には激辛でした。……書いてて腹立ってきたぞ。

 ある日、仕事において私は一つの失敗をします。再確認を徹底していれば防げたのですが、帰宅直前の気が緩んだ状態。また、平常時であれば問題のない工程ではありました。直前の先輩の作業抜けがなければ。
 慌てふためき報告をした私に上司は激昂して叫びます。

「人を信じるなァ!」

 えぇ……現実でそんなこという人おる??

 元々ミスの多い先輩が原因だったのもあるのでしょうが、勢いのまま吐き出された言葉はなかなかの熱量を持っていました。聞いてた無関係の先輩はちょっと笑っちゃってました。

 とはいえ当事者としては笑ってもいられません。大事にならなかったのは不幸中の幸いでしたが、気が落ちるのは当然のことでしょう。
 この件以外でもアレコレあったため、萎縮してパフォーマンスが露骨に落ちていまして。それが原因で怒られてまた落ち込む、といった負のスパイラルに陥っていました。

 時系列的には少し後なのですが、その辺りのモヤモヤがきっかけで退職を願い出た結果(全三回中一回目)、とりあえずその上司直下を外れる形でひとまずの決着と相成ったのですが……。
 それでも職場は変わりません。理不尽は大なり小なり襲いかかってきます。晴れないモヤモヤを抱えた私は、やがて思います。


「もう誰にも頼らない」


 そう、魔法少女まどか☆マギカのほむらちゃん状態ですね。

 人を信じるなと言うのなら、分かりました。私一人で全部やりますと、そういった開き直りです。
 ですが私は事なかれ主義がモットーです。周囲からの孤立は選べず、コミュニケーションもきちんと取るようにはしていました。いましたが、仕事に関してのスタンスは相応に変化していったように思います。


「他の人の挙動は全部把握するが?」
「言われたことはまず自分の目で確認するが?」
「無駄が多い工程は自分のやり方でやらせてもらうが?」
「担当外でもやり方は覚えるが?」
「今のはメラゾーマではなくメラだが?」


 なぜか内心半ギレでした。
 
仕事を覚え、新人を脱するあたりに抱きがちな全能感も相まって、若干イキっていた感もあります。みんななるよね?
 でもまぁ、アレです。(初期の頃よく言われた)大人しくて覇気がない評を受けるよりはこっちの方が良いとは思います。職場で発言力がない状況は辛いですし、積極性は社内評価にも大きく関わってきますからね。
 ……イキる時は絶対にミスしないことと、周囲に嫌われないようにネタっぽくすることをおすすめします。

 ただ、この時期に実力がついたのは事実であって、上司の評価が上がったのも間違いないのです。振られる仕事量も増えましたが。
 また、他人のミスで怒られるよりも自分の不手際が原因であった方が納得しやすいのは実感としてありましたね。

 そこから要領よく立ち回るコツを身に付けるだとか、若手が同じ目に遭わないように(かつ自分が楽できるように)しっかり教育するだとか、誰かがやらかした時は助けに行くだとか、マニュアルを整備するだとか、意識高めの頼れる中堅社員を演じる方向にシフトしつつ。その過程で色々得たり失ったり失ったりしました。
 ガチ目に人間不信になったりもしましたが、信頼できる人もいたことで救われたりもしました。社内にプライベートで遊ぶような同僚や先輩もチラホラといましたし。敵ばかりの環境というわけではなかったのが、十年以上踏みとどまれた理由です。

 客観的に見れば落ち着いて少し成熟したのね、といったところでしょうか。それでも、私の仕事のスタンスの根幹には今も「人を信じるな」という言葉があるのです。……と公言はし難いので、口に出すときは「人の話を鵜呑みにしない」くらいに言い換えてますけれど。


 短所と長所は表裏一体です。よく面接対策とかでも短所を長所に言い換えてみましょう、とか言いますよね。

 その観点で考えてみると、
「人を信じないのは、転じて自分を信じること」になるのでしょうか。

 ……私はそうは思いません。
「信じるに足る根拠を得るために尽力すること」だと考えています。

 言葉遊びの範疇な気もしますが、この考えは心構えとしてあっても損はしないと信じています。十年かけて根拠を得ましたからね。胡散臭いですね

 だから、今後の人生においても常に携えていこうと思っているのです。


 さて。表裏一体といえば。
 件の上司は、飲み会では二次会まで気前よく全額奢ってくれる人でした。カツラがバレバレな人でした。毎週パチンコで大敗北していました。規律を正せる人でした。認めた人間の提言はしっかり聞いてくれる人でした。必要なら更に上の邪悪な上司にも立ち向かってくれる人でした。

 今なら言えます。
 そんなに嫌いじゃなかったぜ。


 と、今なお大絶賛無職継続中のにーきゅうでした!(台無し)
去年の六月末が退職日なので、えっ、うわぁ……となるくらい働いてないですねはっはっは。
 さ、さすがに何もしていないわけではないので、ある程度形になったらここでお話しする機会もあるかと思います。

 といったところで今回はここまで。またお会いいたしましょう。
(最近めっきり創作らしい創作をしていないことに目を瞑りつつ)


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