見出し画像

「実在論の否定」

敵方の捕虜として弟が捕らえられたまま
自分は無事に帰還することができた
けれどそれを日々悔やみ
そして恨み病み

 Fragility Suffering Tenderness Adore

ぼくが一人でいる時
それはきっと
この世界に僕ひとりきりということ
ぼくが一人でいる時
それはきっと
この世界を創ったのは僕だということ
 
ぼくを追いつめる者がいないということは
奴らによって負った傷を
癒す為の時間としてあてがうことができるということ
奴らによって混乱してしまった気持ちも
整える為の時間にあてがうことができるということ
 
君がその森にいなければ倒れる木は音をたてない
その森にきみがいないのだから木は倒れない
 
ぼくがいない場所について
誰かが語っても
僕が語ることは何もない
ぼくがいない場所にいて
誰かが愛を語っても
僕が語ることは何もない

誰かが振り向けば
それは忽ち生命を手に入れる
だから生命は乗り物だよ
君はそう言った

きみの世界では全てが君によって定義づけられる
そのような存在条件は
平等に人類に与えられたものだ

君が振り向かなければ
僕は存在しない
ぼくが振り向かなければ
きみは存在しない

もしも
きみが君を感じることの出来ない場所があるなら
それはあまりに人工的な場所であって
もはや君の場所ではないし
きみの場所でもない

君はいつものように
きみもいつものように
息をしているだけでいい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?