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イーロン・マスクの「ロビー世界戦略」

イーロン・マスクの伝記からわかった「知られざる10の真実」

分娩中の恋人の写真を友達とシェア!? 本人初となる公式伝記で明らかに
By Yoko Nagasaka  エル 公開日:2023/09/11

日本時間9月13日にイーロン・マスク初となる公式の伝記『イーロン・マスク』が日本を含む世界同時発売される。
著者のウォルター・アイザックソンは過去3年間マスクに密着。本人をはじめ家族や友人、ビジネスパートナーたちへのインタビューを通して、電気自動車会社「テスラ」や宇宙開発事業「スペースX」のトップとしての日々、Twitterの買収劇、そして知られざるプライベートを克明に描き出したという。
その抜粋をいち早く入手した新聞「ニューヨークタイムズ」が伝記で明かされた新事実を報じている。そこから特に気になる10のポイントを紹介する。

【1】出産中の恋人の写真をシェア

2020年5月に元恋人のグライムスが彼との間の息子エックス(写真)を出産した。そのときマスクは分娩中の彼女の写真を撮影、彼女の父親や兄弟、友達にそれをシェアした。グライムスは当然驚愕。恐れ慄き、彼に写真を削除させようと奔走した。グライムスによると彼はその気持ちを理解してくれなかった。曰く「マスクには私がなぜそんなに動揺するのかわからなかった」。

【2】父エロールがトラウマである

子だくさんで知られるマスク。著者によると家族は彼の安らぎの場だという。でも自分の父エロール・マスク(写真)だけは別。著者によるとエロールは感情的、身体的な虐待者で、マスクは彼と疎遠だった。2016年、久しぶりに父と会うことに同意したがそのときマスクは激しく動揺。ある友人は「イーロンの手が震えているのを見たのはそのときだけだった」と語る。

【3】11人目の子どもが生まれていた

これまでマスクには死別した第1子を含め10人の子どもがいると報じられていたが、実は11人に増えていることがわかった。母親は2021年に破局したシンガーのグライムス(写真左)。彼女との間には2018年に長男エックス、2021年に長女エクサが誕生しているが、もう1人、男の子が生まれている。名前はテクノ・メカニクス。マスクとグライムスは「タウ」というニックネームで読んでいる。生まれた時期や方法は明らかになっていない。

【4】「トランプ大統領は詐欺師」

リベラルな論客や民主党議員を批判、極右の陰謀論を支持するなど、共和党の支持者にも見えなくないマスク。でもこの本によるとトランプ前大統領について「私はトランプのファンではない。彼は破壊的だ」とコメント。著者によるとマスクは前大統領を「詐欺師」「一種の狂人」と呼び「軽蔑している」。
(写真は2017年、就任したばかりのトランプ大統領(当時)がビジネスリーダーたちを招いて開催した会合で)

【5】「バイデン大統領はものすごく退屈」

でもジョー・バイデン大統領の支持者でもない。過去にバイデン大統領に会ったときのことをマスクはこう振り返っている。「副大統領時代にバイデンとランチをしたことがあるのだが、彼は1時間もダラダラ話し続けた。まるで紐を引っ張ると同じことを何度も言う人形みたいでものすごく退屈だった」。

【6】社内のSlackを検閲、自分を批判する人をクビに

2022年10月にTwitterを買収したマスク。すぐに腹心の部下たちを使って社員の社内でのコミュニケーションやSNSの投稿を徹底調査。さらにSlackのアーカイブから「イーロン」というキーワードを含むメッセージを検索、彼を批判したり皮肉ったりした社員数十名を解雇した。

【7】Twitter買収は「次の大統領選を動かすため」?

マスクの息子たちは10代で、ほとんどTwitterを使わない。だから父親がなぜ買収したのか見当がつかなかった。そんな息子たちにマスクは「他にどうやって2024年にトランプを当選させる方法がある?」と問いかけ、次期大統領選を左右するためにSNSを買ったと話した。著者は「これはマスクの冗談だった」と書いている。

【8】Twitterのサーバーを急襲

Twitterの買収直後、マスクはコスト削減のためカリフォルニア州サクラメントにあったデータ施設に設置されたサーバーを他の場所に移すことを計画した。しかしTwitterのインフラ責任者は「高価な機器を安全に移動させるには数か月かかる」と断固拒否。怒ったマスクはクリスマスイブに自分のチームと引っ越し用のバンを連れてデータ施設を襲撃。サーバーを運び出した。ちなみにこの決断を今は後悔していると著者は書いている。

【9】ビジネス哲学は「削除」「加速化」「自動化」

著者はマスクが電気自動車会社「テスラ」と宇宙開発企業「スペースX」の経営のなかで彼のビジネス哲学を磨いていったと書いている。マスクはそれを「アルゴリズム」と呼ぶ5段階のアプローチに集約、従業員たちにしつこく説いているという。マスク曰く「私はアルゴリズムの壊れたレコードになった」。ちなみにそのアルゴリズムとは順番に「要件を問う」「部品やプロセスを削除していく」「単純化し最適化する」「プロセスを加速化する」「自動化する」。

elon musk announces new xai companyNurPhoto//Getty Images

【10】世界の人口減少を懸念してAI業界に参入

今年7月に人工知能企業xAIを立ち上げたマスク。AI産業に参入した理由は世界の人口が減っていることを懸念したから。「人間の知能の量は人間が子どもを生まない横ばいになっている」「一方コンピューターの知能は指数関数的に上昇している」と指摘。今マスクはxAIの従業員たちに「コードを書けるA.I.チャットボット」「政治的に中立であるように訓練されたA.I.チャットボット」「推論し真実を追求できるAI」の3つを作るように命じている。高いハードルにも見えるけれどマスク曰く「AIに『より優れたロケットエンジンを作れ』という大きな仕事を与えることができるはずだ」。マスクの夢は大きい。

『イーロン・マスク』(ウォルター・アイザックソン著 井口耕二訳) 上・下巻 各2,420円文藝春秋社刊


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