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「ピアノ調律の料金設定」について考えてみた

お客様から「調律料金安いですね!」と言われることが多いので、料金に対する考え方を少し。

調律料金のシステムは大きく分けて2パターン

(1)前回の調律からの年数に関わらず一律料金

(2)基本料金+前回の調律からの年数によって追加料金(1年ごとに1,000〜2,000円程度)

当社では空き年数に関わらず一律料金なので、作業料金が安くなる理由はこの追加料金がかからないことが大きいです。(もちろん修理やタッチの調整などは状態とご希望に応じて別途かかります!)

かと言って、別に安売りをしているわけでもなく、適正料金より安くすることは作業のクオリティを落とすことになりますので「作業には適正な料金を設定するべき」「理由の無い値引き・値下げはしない」と、むしろ料金設定の考え方は頑なな方だと思います。

追加料金は単純に頂く必要が無いと考えているから

年数の空いたピアノの調律は確かに毎年調律をしているピアノよりも少し手間がかかります。音を合わせてもすぐに元の狂いに戻ろうとするので、通常1回のご訪問で1周の調律で済むところを、2〜3周調律しないと弾ける状態にもなりません。

ただ、ここで大事なのはいくら数周の調律をしても、長年の狂いが一気にチャラになるわけではない、ということなんです。

「長年の狂い = 歪み」がなくなりピアノが安定した状態になるためには、調律をした後に弾き込んで頂き、数ヶ月経ったらまた調律、というサイクルを数回行う必要があります。1回のご訪問でたとえ連続で何10周調律をしても、この“歪み”は時間をかけないと絶対に取れないんです。

なので毎年調律しているピアノも、長年調律していないピアノも、“調律”としては一回のご訪問でできること(かかる労力)は実はそんなには変わらないんです。回数の手間がかかる反面、安定しているピアノよりも音の合わせるポイントを広めにとる(あえてシビアに合わせすぎない)ので逆に労力が少ない面もありますので、調律自体の労力は意外と変わらないと思います。

「前回の調律からの期間」で料金を考える難しさ

たとえば(1)前回の調律が5年前で、それまでは毎年調律をしていたピアノと、(2)前回が1年前でその前は20年調律が空いていたピアノ。

前回からの調律年数で料金を設定すると(1)の方が料金は高くなりますが、もちろん歪みは(2)の方がはるかに大きいです。

また、調律の記録がなければそもそも正確な空き年数もわからないですし、環境によって歪み方もぜんぜん違う。単純に前回からの空き年数で整合性のある料金を決めることが難しいという事情もあります。

追加料金はペナルティ?

独立をしてはじめに料金を決める際には色々考えましたが、追加料金がある意味ペナルティ的に設定されるのであればなんか違うなと...

ちなみに調律を長年しなかったことで受けざるを得ないペナルティがあるとすれば、安定するまで調律を短い間隔で行わなければならないこと、すぐに100%の状態で弾けないこと、修理やタッチの調整が必要になる可能性が高くなること、ピアノの寿命が短くなること、などですかね。

長年期間が空いたピアノの調律にはリハビリが必要で、体のリハビリと同じで1回にたくさん行うことは出来ないので必要なのはとにかく時間と回数です。

追加料金がかかることで、この「歪んだピアノにはリハビリが必要」という感覚がお客様に伝わりづらくなっているとも感じます。よく聞く話ですが「追加のお金をかけた調律をしたから今までの狂いがチャラになった、これで当分調律をしないで大丈夫!」と思ってしまい、また期間が空いてしまうのはもったいないことです。

料金の考え方は業者によってそれぞれ

料金設定が高いか安いかでの良し悪しは全くありません。調律を長年していない場合に必要になるであろう修理の料金も含めた追加料金、という考え方でトータル的には安くなるように...と言う業者さんもあるでしょうし、実際に調律の追加料金がかかる業者さんでは無料で行っている修理などが、当社では有料ということもありますしね。

これらは実は料金設定のお話という以上に、調律師ごとのピアノやメンテナンスに対する考え方がわかるすごく重要な部分なのですが、なかなか料金表やご訪問時に簡潔に説明するのは難しいなあと思います。

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