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ピアノ調律師同士で考えたい

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同業者の方と一緒に考えたいことや、おすすめのグッズなどを紹介しています。
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#私の仕事

正義感を暴走させないように気をつけたい

業界の良くないところをさらすようで恐縮なんですが、これ、お客さまにも誤解を生んでそうだなと思うので書いておきたいと思います。 調律の時にピアノの中を掃除するか?しないか?と言う問題。 ここはそれぞれの調律師の考え方がけっこう出る部分で、それ自体は当たり前だし、良いんです。 それぞれの考え方があるんですが...ピアノの内部にはホコリが溜まりやすくて、調律師によって対応は様々です。 この違いによって、たびたび良くないなと思うことが起こります。 1や2の考え方の調律師が、

専門家の見えているものとユーザーの見えているもの

ピアノの故障をお客さまに説明するときに、ピアノの内部を見てもらうことがあります。 ひとつの事象を説明するにも ・何のための部品なのか ・何の素材でできているのか ・本来はどうなっているものなのか ・今はどうなってしまっているのか ・どんな不都合があるのか ・どう直すのか ただでさえ前提条件からの説明が必要で、さらにピアノの中身は複雑なので…なるべくピンポイントに絞って説明しているつもりですが、うまく伝えられてないな〜と思うことがあります。 最近気づいた原因のひとつが、

誰かが手を入れないとピアノは整わない

ピアノと「時間」は切っても切れない関係です。 〈ピアノの演奏と言うのはいわゆる時間芸術〉 〈ピアノはメンテナンスをしない時間が長ければ長いほど悪くなっていく〉 〈新品のピアノが鳴るようになるためにも時間が必要〉 あたりまえすぎることですが、ふと思いました。そもそも「時間ってなんなんだろう?」 いろいろ調べてたどり着いたのはどうやら「エントロピー」という熱力学の法則が重要らしいこと。 なるほどエントロピーの観点でピアノを見ていくと色々と納得ができましたし、このイメー

同業者の友人に独立を相談されたときに伝えたい10の本音

フリーランスのピアノ調律師として働き始めてちょうど15年が経ちました。 ゼロから始まった当時は想像もできなかったお客さまも1,500名を超え、小さいながらもなんとかひとつの形にはなったかなと、しみじみと感じています。 もちろんこれらはただの数字で、これからもひとりひとりに向き合っていくことは変わらないのですが。でも改めて、これだけ長くたくさんの方の大事なピアノのメンテナンスに選んで頂いたと言うのは本当にありがたいことです! 今回の記事は節目として初心にかえる意味もありつ

弾き手にピアノの「あら探し」を手伝わせないようにしたい

ピアノ調律の作業って、そのピアノのポテンシャルを引き出すことをゴールにしているわけで、言うなればピアノの「あら探し」をする仕事とも言えます。 〈いま何がこのピアノの100%を邪魔しているのか?〉 大きな原因を改善したら中くらいの問題点を潰して、さらに細かいところまで潜っていき...重箱の隅をつつくように、調律師は常に悪いところを血眼になって探しています。 なので以前は調律をはじめる時にお客さまには「なにか気になるところはありますか?」と聞いていました。 調律のいちばん

何気ない言葉が今の自分を形作っている

調律師として仕事をしていて、影響を受けた言葉や考え方というのはたくさんあります。その中でも明確に自分の行動理念となっているなあと感じる、2人の方から頂いた言葉があります。 「調律師って言うのはね、モテないとだめなんだよ。」 高校生のときに、調律の道に進もうと思った際に話を伺ったある楽器店の社長さん(元調律師)に言われたことです。当時は正直「あ〜…おじさんの下世話なノリだ…」と軽く流していましたが(失礼)仕事をはじめると意味がわかりました。 調律の仕事って対・ピアノだと考

ピアノ調律師が買ってよかった、仕事のモノ2022

2022年も色々と新しいアイテムを試しました。その中で仕事道具としてレギュラー入りしたモノたちです。 鍵盤に貼る付箋調律前にお客さまが気になっている音などがあれば教えていただき、該当の鍵盤にペタペタ貼っていきます。台紙がカードになっていて取り出しやすくて、デザインもかわいい。こういう細かいところで地味にテンションを上げていくの大事。 電源タップ自前の掃除機や電動ドライバー・コテなどを使うのにコンセントをお借りする際には、間にこれを差して使っています。延長ケーブルとしての意

「好きを仕事に」の罠

・好きこそ物の上手なれ ・好きを仕事に! ・好きだから頑張れる ここ数年、これらの是非についてよく考えています。 個人的には「好きという感情」は、仕事においてはかなり危ういものだと思っています。 好きなことって不思議なもので、あるとき急にそんなに好きじゃなくなったり、むしろ嫌いになったりしますよね。もちろんさらに好きになることもありますが…とにかく波が激しい感情です。 好きを原動力にして働いていると、本来おまけであるはずの「自分の好きという感情を満たすこと」がメインの報

働くということを考えたら最初に入った会社のことを思い出した話

ピアノ調律師という仕事が珍しいのもあってか、仕事先でお子さんの進路のことでご相談されることがちょくちょくあります。軽々しくアドバイスはできませんが、さすがに18年くらい社会人をやっているので、ひとつの例として少しは参考になるかな?と思うと同時に、改めて自分の仕事についても考える機会になります。 今回はそんな“働く”において大事に思っていることのひとつを書いてみたいと思います。 この仕事ではいろいろな訪問先があります 僕の場合は基本的に一般家庭のピアノの調律がメインで、8

18年間で仕事のツールはどう変わったか

社会に出て働きはじめて丸18年が過ぎました。 2005年〜2023年。ただ文字にしてみるとそんなに劇的に時代が進んだ感じもしないのですが、仕事のやり方、なにより仕事のツールはだいぶ変化しました。 一旦整理するという意味も含めて、18年で大きく変わったことを振り返ってみようと思います。 【※大前提として】 僕の仕事はピアノの調律師で、主に一般家庭に訪問してピアノを直すと言うことをしています。 紙の地図からGoogleマップへ2005年。仕事をはじめた頃は外回りの車には広

除湿機がいらなくなる?新しいピアノ用の乾燥剤を試してみた話

今年のはじめ頃、ピアノ用調湿剤の新製品が発売されました。 長らくピアノの乾燥剤には「B型シリカゲル」が使われてきました。 こちらのSHARPが開発した「TEKIjuN(適潤)」はその3倍の調湿力があると言う素材。発表時にはいろんな湿度管理が必要なものにつかえる夢の素材!と話題になりました。 そして満を持して発売された、ピアノ用に調整されたこちらの商品。 かんたんに言えば…ピアノに入れるだけで除湿機、加湿器が無くても年間をとおして湿度50%に保ってくれるよ!ということの

専用工具だけじゃない?ピアノ調律師の仕事道具

ピアノの調律にはチューニングハンマーをはじめとして色々な専用の道具を使います。 今回はそう言った専用の道具以外で個人的に「これがないと仕事にならない!」ものをご紹介してます。 並べてみて気づいたのですが、とにかく道具を選ぶときの基準は時短とスペースを重視している気がします。 調律師の方もそうじゃない方も、何かの参考になればうれしいです。 電ドラボール これは訪問して作業するすべての人にとって革命だったんじゃないでしょうか? 本格的な電動ドライバーを持って行くのは結構

ストレスのない仕事道具を探して

ピアノのサイズを測ったり、壁との距離を測ったり、仕事でメジャーを結構使います。メジャーはものによって使い勝手の違いがかなり大きい道具かもしれません。 でも、どのメジャーにも共通した悩み。コワイんですよね…しまうときの勢いが。 この凶器のような勢いと手に来る衝撃。少しでもおとなしいものが無いか探していたら、文具メーカーのMIDORIからこんな商品が出ていたので買ってみました。 これほんとにゆっくり戻るので安全ですし、全くコワくないです。手に来る衝撃も完全にゼロ。 ただ欠