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しょうゆが入ったにおい

ボトルやしょうゆ差しからしょうゆを出したときは「これは、しょうゆのにおい」と認識する。
それなのに、しょうゆと何かが足された途端、「しょうゆだけど、しょうゆのにおいじゃないな」って思う。

しょうゆと料理酒のにおいなら、すき焼き。
いや、具材のお肉のにおいもたされているだろうか。
お砂糖もどばどば入れるけれど、砂糖自体のにおいを意識したことはないので、正確に言うのならばしょうゆとお肉と料理酒のにおい。
アルコールが飛ぶまでは食べちゃダメ!ってよく両親に注意されてた気がする。
あと、子供の頃、たまに家族以外の人の男性が一人か二人来ていて、すき焼きって特別だったんだなあっていうのを思い出す。
のちのち知ったのだけれど、この男性たちは当時独身だった父の職場の同僚や後輩だったらしい。

しょうゆとお湯なら、みたらし団子。
なんでかはわからないのだけど、みたらしだんごのたれのにおいって私は思う。
祖父母の家で迎えるお盆のとき、お供え用のお団子を作って、最終的に孫のお腹におさまるのが常だった。
だから祖母が団子のたれを、しょうゆとお砂糖をフライパンで煮詰めて作っていたと思う。
片栗粉? 入れてたかもしれないけれど、覚えていない。
お供えする団子というわりに、祖母は食べやすいようにまん丸の団子の真ん中をつぶして、ちょっと耳たぶみたいなかたちにしていたなあというのを思い出す。
ふつうのみたらしのたれより、少しだけゆるっとした透き通ったあまやかな茶色をしたたれだった。


せっかく久しぶりに台所に立つのだし。
白菜とえのきだけ、ニンジンのきれっぱしでスープでも作ろうかなと思ったけれど、炒め物は中華の素を使って雑に手抜きで仕上げてしまったので、少し悩んでしょうゆ味にすることにした。
昆布だしの素を事前にぱらぱらふりかけてあったので、まぁ、なんとかなるだろうと。
本当はあまりよくないのにふつふつと煮立たせてしまって、不意にしょうゆのにおいから思い出した。
なつかしいにおい。

においと思い出はセットになるのだという。
においは記憶と紐づけされて、記憶の引き出しから引っ張り出すことができるらしい。
ほかにも、しょうゆと何かを足したにおいで連想できるものがあるだろうか。
もし、これを読んでいるあなたの思い出があったらぜひ聞かせてほしい。


あたたかな記憶を引き出して、スープを飲みながらnoteを書く。
おだやかなひとときって、きっとこういうことを言うのかもしれない。

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