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100%の実力

明日は息子の高校受験日。
前日ギリギリまで塾に行き明日に備える。
塾に車で迎えに行き 
帰り道の車内できいてみた。

父「どうだ?100%勉強やりきった?」
息子「うーん 70パーセントぐらいかなぁ」
父「人生初のお受験なのに、そんなものかよ」
息子「これでも上出来だぜ。世の中いろんな、誘惑が多すぎるんだから」
父「まぁ明日はがんばれ。70パーセントの力で。
どうせ100の力は出ないんだから。」
息子「いうねー」

自分の高校受験を振り返る。
自分の時はどうだったっけ?
自分の場合はただただ、意味もなく深夜まで起きて勉強をした感だけ味わっていたと今振り返ると、そんな気がする。
深夜のラジオ
雑誌
CDを歌詞をながめて聴く
お腹が空いたら冷蔵庫を漁り
たまに大学受験を控えて勉強している姉が味噌たっぷりの焼きおにぎりを作ってくれた。
これがめちゃ美味かった。
特に机の上で問題集を広げて卓上ライトだけを点け聴く深夜のラジオはとても面白かった。
美味しいものを食べると、また欲するようにラジオもそうだった。決まって同じ時間同じ番組を期待するようになった。
テレビだと親の目がある。
ラジオだけは誰にもバレずにしっかり楽しめた。
問題集の内容よりも
深夜のラジオ内容の方が頭に入った。

勉強は捗らないくせに
毎日寝不足だった。
中学3年生後半には塾に通った。
嫌々行ったが、それだけ進学校はギリギリの成績だったからだ。
今思うと、この後半の塾での追い上げがなければ僕は理想の進学校には受かっていなかっただろう。親に感謝だ。

当日の受験本番。
感触はイマイチで、自己採点しても
受かったらラッキー程度の結果だった。
仲の良い友達とは離れ離れにはなるのは辛い。
受験が終わっても不安だけがつきまとった。

合格発表の日。
受験した、友達数人で電車に乗り
現地の高校まで発表をみにいった。
僕以外の友達は受験から解放されたウキウキで楽しそうだった。
僕は落ち着かず、そんな彼らを横目で見て、「どうせ落ちて残念だったなぁ、と肩をたたかれてしょげて帰るのは僕だけだろうなぁ」と想像していた。
ドキドキしていた。
高校の正面玄関前に大きな合格発表の白壁がそびえ立つ。既にキャーキャー女性の一団が喜びに騒いでいる。
僕らも続いて番号を確かめる。
4人いるひとりが「あったぁ」と大きな声を出す。そして僕が確認する前に友達が言った。
「おーい、お前のもあったぞー」と。
まじか?
と思いつつ、自分でも下の方にある番号を確かめた。
あった。あった。ほんとうだ。

この時ただ一度だけだ。
今40歳を過ぎてもなお、
喜び泣きをしたのは。。
涙がでた。
ホロホロとでた。
嬉しかった。
みんなとこれからまた一緒だ。
良かった良かった。と。
自分が思うより涙はずっと出ていた。
なんであんなに泣いたのか今でもよくわからない。それだけ不安だったのだろう。
自分の将来をはじめて意識したような。
受験とはそういうものかも知れない。
落ちるとこの世の終わりみたいな。
なぜか今でもそんなバカなイメージがある。

ただ
合格発表をみにいっただけなのに
帰りの駅まで行く道
電車を待つ時間
そして電車の中。
あんなに楽しかったことあっただろうか。
別に何するわけでもない。
友達とおしゃべりし合っただけなのに。

駅で母親へ公衆電話から
母親の勤める病院へ電話した。
「受かったよ」
伝えた言葉は安心の言葉?
母親は「良かったねぇ。今晩何食べたい?」
と聞いてくれた。
今日は何て良い日なんだろう。
幸せな1日となった。

その週末
はじめて家族で隣街の一軒しかない寿司屋に行った。僕の合格祝いだそうだ。
うまれて初めて食べた握る寿司屋の寿司はとても美味しかった。
沢山腹一杯食べた。
幸せだった。

今思っても高校受験の時がいちばん感動し、幸せをもらった時だった気がする。
大学受験の思い出はそんなに思い出と呼べる感はない。
就職活動もそうだ。
あの時ほどの感動は全くない。
親への電話も
合格したあとのご褒美も
高校受験の時だけだった。
なんだろう。
そんな一大イベント高校受験!

自分の息子もあの時の僕の様に
明日はドキドキで 
合格発表までは気が気ではないだろう。
合格したら
自分がやってもらったように 
彼には美味しいものを腹一杯食べさせてやろう。
この味は何年たっても忘れない味となる。
思い出とは舌で 耳で 目で 記憶している。
五感全部でお祝いしてやろうじゃないか。
合格電話は今は携帯電話で直ぐに電話できてしまう。それは味気ない。
僕の時のように、公衆電話前で順番に待ち
短い言葉で100円分以内で親に伝える。
そんな方が気持ちの余韻が伝わるのだ。

まぁそんなこと言っても令和の現代
今は今らしくなにか、別の余韻らしきものが伝わるのかもしれない。

明日は高校会場までは親の送迎必須だそうだ。
僕はわざわざ明日は仕事休みをとった。
正に令和の仕組み。
車で送迎ミッションは親の役目だそう。
大丈夫か、こんな過保護で。
と思いつつ
明日は1日落ち着かない待ち時間になりそうだ。
天気は雪にならない事を期待している。
僕の車は車高が低いスポーツカータイプであるからだ。

御守りも
神頼みもしない
信じるのは己のみ、の息子よ
人生一度きりの高校受験をどうか楽しみなさい。
これもあなたにとって良い思い出となりますように。。

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