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「ホスピタリティ戦略」による関係人口の構築

地域おこし協力隊の副次的な役割としての関係人口の創出

思いのほか、前回の地域おこし協力隊の記事は注目を浴びたようで、フォローしていただいた方も増えました。
ありがとうございます。

やはり、地域おこし協力隊の制度はいろんな意味で関心があるんだなと思いましたし、フォローいただいた方の地域おこし協力隊の活動の記事を見てもさまざまな苦労があるんだな、と改めて思ったところです。

さて、地域おこし協力隊について、総務省のホームページを見ると次のとおり説明されています。

地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を異動し、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。隊員は各自治体の委嘱を受け、任期はおおむね1年から3年です。

(総務省ホームページ https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/02gyosei08_03000066.htmlより引用  太線筆者加筆)

地域おこし協力隊の目的は、もちろん地域おこしという面もあるのですが、地域と連携協力を図りながらその場所への移住定住を目指す取り組みといえます。
一方で、地域おこし協力隊に関して、国では令和8年度までに1万人の隊員確保を目指していますが、例えば1万人の隊員の方全てが首都圏居住者で、その方々全てが地方に移住定住したとしても、首都圏居住者4434万人(令和2年)分の1万人、率にして0.0002%に過ぎず、地域おこし協力隊が移住したからといって、地方の人口減少対策に大きな影響がある訳ではありません。

そういった意味で、移住定住という視点で地域おこし協力隊を見てみると、首都圏や大都市圏からの呼び水としての側面が浮かび上がってきます。
すなわち、地域おこし協力隊が都市圏から地域に来て活動することによって、地域おこし協力隊を核として地域に関わる関係人口が構築され、地域おこし協力隊以外の方の首都圏、大都市圏からの移住者が増えるという副次的な効果を総務省は期待しているのではないか、と推察されます。

関係人口とは

「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉です。
地方圏は、人口減少・高齢化により、地域づくりの担い手不足という課題に直面していますが、変化を生み出す人材が地域に入り始めている例も多くあり、「関係人口」と呼ばれる地域外の人材が、地域づくりの担い手となることが期待されています。

(総務省 地域への新しい入口「関係人口ポータルサイト」https://www.soumu.go.jp/kankeijinkou/about/index.htmlより引用)

地域おこし協力隊を核とした「関係人口」の創出に関しては、前回記事でも「ぶどう農家をやりながら、ぶどう栽培に関心を持ってもらうべく首都圏の方との関係人口を構築する活動を行っている方」の事例を紹介しましたが、いろいろな地方自治体の地域おこし協力隊員が自身の活動の一環として行っている事例があるようです。

「関係人口」の構築には、地域おこし協力隊が活動している事例のみならず、地方自治体がシティプロモーションの一環で行っている事例や、地域住民が独自に関係人口を構築している事例、また企業とコラボレーションしている事例などもあります。

興味のある方は、総務省の関係人口ポータルサイトの地域の取組事例を参照していただきたいです。


花巻市における「関係人口」の取り組み

さて、花巻市における関係人口の取り組みですが、市としても移住定住に関して様々な取り組みを行っていますが、ガチで「関係人口に注力する!」といった形にはなっていないように見受けられます。


地域独自で頑張っている例もあって、花巻市の高松第三行政区では2008年に「高松第三行政区ふるさと地域協議会」を組織し、地域づくり活動を開始して以来、地域コミュニティの活性化を目標に「景観形成、 農福連携、6次産業化、交通弱者の外出支援、配食サー ビス」などの活動を行っていて、活動以降地域の環境に魅力を感じて移住者が来るようになり、移住者は8世帯を数えるとのことです。

こういった地域での頑張りを市全域に広げたいところですが、なかなか地域での取り組みには限界があるのが現状です。

地域資源を活かした関係人口の構築

上記のように、関係人口の構築・拡大には様々な手法がありますが、有効な手段として、地域資源を活用する方法があります。

私は、全国の地方議員が集まる研修に行ったり、全国的なPTAの集まりに行ったりする機会があるのですが、その際参加者から「自分の地域にはウリがない」とか「自分の地域には特産品・観光地があるが全国的には知られていない」といった声を聴くことがよくあります。

いわゆる地域資源だったり、地域そのものの認知度ということだと思いますが、我が花巻市はそういう意味で言うと、黙っていてもPRしてくれるメジャーリーガーがいる。

我が首長は「地域活性化のために花巻東高のOBのメジャーリーガーを利用することは避けたい」とよく話していますが、別に利用せずとも花巻市の名前は他自治体に比べてめちゃくちゃ認知度が高い。

言い換えれば、彼らが活躍するたびにシティプロモーションになっているので、それを活かさない手はないと私は考えます。

ここで「関係人口の構築」を図るのです。


「ホスピタリティ戦略」による関係人口の構築

花巻温泉郷観光推進協議会(会長・高田貞一大沢温泉社長)は26日、花巻東高出身の米大リーガー菊池雄星、大谷翔平両選手の2023年シーズン同時2桁勝利達成を記念する碑を同校に贈った。
 花巻市松園町の同校で贈呈式を行い、関係者約50人が出席。高田会長は「卒業生の多方面での活躍が花巻の名を世界に広めてくれている。私たちの誇りであり、励みだ」と述べた。
 記念碑は学校の野球グラウンドバックネット裏に設置され、高さ2.4メートル、幅1メートル。両選手の勝利数のエンブレムや直筆サインを収めた。隣には2年前に寄贈した21年オールスター戦同時選出の記念碑があり、ともに自由に見学できる。

(岩手日報WEB記事 https://www.iwate-np.co.jp/article/2024/4/27/162213より引用)

4月26日、花巻温泉郷観光推進協議会が花巻東高出身の米大リーガー菊池雄星、大谷翔平両選手のモニュメントを花巻東高校に送った件。
隣にある2年前の二人の手形をかたどったモニュメントと合わせて、メジャーリーガーの聖地を訪れる人が絶えません。

ゴールデンウィークでも多くの観光客がこの聖地を訪ね、花巻東高校は花巻でも特有の観光地になりつつあります。

観光客がメジャーリーガーの聖地を訪ね、1回きりの体験で花巻を離れてしまえばそれは「交流人口」です。

しかしながら、花巻を訪れたその時の体験がその方にとって貴重な思い出となり、「花巻にまた行ってみたい」とか「花巻のファンになった」とか、もっと進んで「花巻に移住してみたい」となれば、これは立派な「関係人口」となります。

せっかくメジャーリーガーの力を借りてシティプロモーションに成功しているのですから、花巻に来た人、花巻に興味を持っている人を離さない取り組みを講じていくべき。

そして、そのためには、市民が観光客を温かく迎える、清掃や樹木管理等の環境整備のみならずWifiなどを含めたデジタル的な環境を整備する、公共バス等の交通アクセスを整備すること等によって、観光客の満足度を向上させる、いわゆる広い意味でのおもてなし=「ホスピタリティ戦略」が必要だと思います。

花巻市は行政も市民も「ホスピタリティ」の部分が少し弱い。
今後、市を挙げての「ホスピタリティ戦略」で関係人口を構築していき、移住定住につなげていくべきと私は考えます。

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