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わが愛しの原爆ドーム

#写真 #日々雑文 #好きな場所 #原爆ドーム #PS2021 #404美術館

社会人になって、自分と他都道府県の知人と原爆ドームの印象や捉え方が違うことに気づいた。高校生まで接していたのは地元広島市の人間がほとんどだったので、広島の繁華街・紙屋町近くまで出てきた時は原爆ドームの周りをふらつくのがルーティンだった。
だが他都道府県の知人に、「原爆ドームに行こう。平和公園に行こう。」と誘うと、怖いと怯えられることが多かった。
確かに慰霊塔がたくさんあるし、犠牲者が多く出た場所なのでいろんな意味で怖いのだろう。
原爆ドームや平和公園に連れて行ってという他都道府県の知人は、反核・反戦について考える目的を持っている。案内するわたしは正直今まで平和公園や原爆ドームで反核・反戦を考えたことはない。高校生まで受けた平和教育の時間には考えたが、原爆ドームと結びつけて考えたことはない。
ただ8月に入るとは原爆ドームや平和公園に近寄らない。8月6日原爆の日/平和記念式典があるので、警備が厳しくなり県内外から活動家が騒がしくやってくる。
とてもくつろげる場所でなくなる上に、交通規制があるので物々しい雰囲気の交通渋滞もうんざりする。
8月6日の原爆ドームは非日常だ。

原爆ドームの位置。
目抜き通りの端っこにある。周りには飲食店や百貨店が並ぶ。

名称未設定

わたしにとって原爆ドームは散歩コースで、時々じっくり鑑賞する憩いの場所だ。
地元でアクセスの良い場所に住んでいるから、四季の原爆ドームを愛でることができる。
原爆ドームは四季四季で見せる姿が違う。
春は桜が咲き、花見ができる。
夏は蝉時雨の中、周りが濃い緑に変わる。
秋は木の葉の色が変わり、いちょうのきれいな黄色や紅葉の赤がきれいだ。
1月2月に広島に観光するなら原爆ドームは外したほうがいい。写真で見るような原爆ドームは見られないからだ。冬はメンテナンスの時期なので、毎年様々な足場が組まれる。時々全部ブルーシートに覆われることもある。
近くにオープンカフェがあるが、そこは利用せずにテイクアウトの飲み物を買って好きな場所から原爆ドームを眺める。土日祝日は騒がしいが、平日は割と静かに過ごせる場所だ。
春秋の気候の良い時期は、木陰で隠居したシニアが囲碁をうち将棋をさす。
わたしだけでなく、近所に住んでる人にとっても心安らぐ場所なのだ。

            桜の時期の原爆ドーム。

桜の原爆ドーム

       秋の原爆ドーム。周りは色とりどりの紅葉。

秋の原爆ドーム

         今年のメンテナンス風景。

メンテ中の原爆ドーム2021

小さい頃、平和公園は遊び場だった。路線バスで15分くらいだったと思う。母親はわたしを連れて、平和公園と原爆ドーム周辺で公園遊びをさせた。原爆ドーム近くのいちょうの木の下で、落ち葉を拾って遊んだことはよく覚えている。その時母親は全く原爆のことも戦争のことも話さなかった。純粋に子どもを公園遊びに連れてきただけだったようだ。
わたしの家族だけでなく、他にも家族や友達同士で遊びにきている人は多かった。
中高生の時は見向きもしなかったが、社会人になってからまた原爆ドームの周りを散歩し鳩に豆をまいていた。
ベンチに座って缶コーヒーを飲みながら、当時の友達と世間話をしていた。
広島から離れた時は、帰省するたびに必ず原爆ドームの周りを散歩した。
地元に戻った現在は原爆ドームの四季を堪能し、見ることができる範囲でまじまじと眺める。


平日の人の少ない時間に行くと、時間をかけて原爆ドームを鑑賞できる。
柵の中の芝生の中に原爆ドームは保存してある。中に転がっている破片の石はいつも同じ位置にある気がするが、メンテナンスで毎年少し配置が変わっているのではないか。
ヒビが入った箇所は、そのままのところと修復したところがある。被曝した当時の形を残すために修復するべきヒビを見極めているのだろう。
剥き出しになった金属の部分は、錆び付いているが崩れ落ちる様子はない。
ここも特殊なメンテナンスをしているのだろう。
遠くから見るとメンテナンスをした部分はわからない。
じっくり近くで見ると、丁寧に修復をしてメンテナンスをしているのがわかる。
原爆ドームのそばを流れる本川には、今でも人が降りられるような護岸に階段がいくつもある。
昔の名残なのか、まだ使っているのかわからない。
「この世界の片隅に」のすずが、呉から広島市に海苔を配達しに来た風景を思い浮かべる。

もうすぐ木の葉が落ちて、冬枯れの原爆ドームを見ることができる。
年を越すとすぐ修復とメンテナンスが始まるので、12月から1月上旬の短い間しか見ることができない。
修復とメンテナンスのための足場が組まれる時期も、毎年見ておきたい。
毎冬の修復風景が違うのだが、職人さんが何をしているのかわからない。
素人目にはわからないが、細かい作業なのだろう。きっと膨大な修復した記録が残っているのだろう。

秋の紅葉が終わったら、冬枯れの原爆ドームを見に行こう。
来年の修復とメンテナンスの足場はどうなんだろう。
原爆ドームは反核反戦の思想家も観光客も地元の住民も、区別することなく眺めている。
そんな原爆ドームをわたしは眺め返している。そこには思想も何もない。
愛してやまない世界遺産、それがわたしにとっての原爆ドームだ。

PLANETS CLUB、楽しいですよ。

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