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愛すべき看護学生たちー人生ただいま修行中


 看護学生は愛すべき存在で、彼らから学ぶことは本当に多い。「この子は大丈夫なのかしら?」と心配になる看護学生も、いざ資格を取って臨床に出れば看護学生時代の甘さがなくなっていく。
 しんどい辛いと言いながらも、笑顔で学習を進めていく姿は本当に愛おしい。

 でっかいピアスをして、髪の毛は束ねてない。私服で手洗い演習をする場面から始まる。
 「袖めくって!肘まで!袖のすそで不潔になる!」と、ついつっこむ。
 でも、日本の看護学校のような息苦しさは感じない。看護学生たち、楽しそうに手指消毒の演習をしている。
 看護学生1年目から追いかけたドキュメンタリーだから、初学年は勉強や演習が楽しいのだろうな。

 学生のいでたちが様々。アフリカ系の学生・ヘジャブを被った女子学生・社会経験があるであろう学生たち。看護学生たちの男女比は半分くらいかな?フランスでは昔から男性も看護師になれたのか、日本のように最近男性も看護師になれるようになったのか。ちょっと聞いてみたい。
 ひとりひとりに「どうして看護師になりたいの?」と聞きたくなる。
「人の役に立ちたい」と1人の学生が看護師を目指す理由を話すけど、きっとそれだけじゃない。

 フランスでも「手に職をつけたい」「資格が欲しい」「安定した仕事と収入がある」というのは、ご法度なのかな。
 日本ではいまだに「人の役に立ちたい」「病で苦しむ人を助けたい」と人道的な理由でないとNG。それが理由でも十分構わないんだけどな。
「人に役に立ちたい」だけが動機だと、燃え尽きちゃうよ。

 学年が進むに従って、ユニフォームが届いてシミュレーターを使った学内演習が始まる。看護学生たちは必死だけど、次のステージに上がったことで嬉しそう。
 注射の演習の時の学生の不器用さ。自分の手が思うように動かない。注射器のどこを持っていいのかわからない。それでも必死で薬液を吸い上げ、シリンジにたまった気泡を抜き、シミュレーターに注射する。
 清潔不潔滅菌などの定義も演習の中で学ぶ。学生同士で知識をシェアし、看護教員からアドバイスを受ける。

 看護教員から「裾は折り返さない」「サイズはいいかしら?」などチェックがあるけど、日本のような「髪はひっつめて!」「爪は短く!」「ユニフォームはアイロンかけて!」など細かいことは言わない。
 看護教員だっておしゃれだ。ピアスに指輪にネックレスをつけて、スカーフを巻いて、ヒールの靴を履いている。日本の看護教員の野暮ったい服装とは大違い。これもおしゃれの国フランスだからだろうか。

 学内の演習風景は楽しそうだけど、病院実習になると学生が緊張しているのがわかる。かつての日本の病院実習のように、注射もガーゼ交換も学生が行う。ギブスカット・抜糸など、日本の看護師はやらないことも病院実習で行う。
 フランスの看護師は、診療の補助の範囲が日本よりはるかに広い。

 看護学生たちは本物の患者さんと接して緊張している。それを実習指導看護師が優しく励ます。だけど実習終了の面接の時には、ハラスメント行為を受けていることを看護教員に話す。
 ここは日本も同じ、看護学生にやたら冷たい臨床指導者は山ほどいる。

 各分野の病院実習が終わった時に、看護教員と面接がある。学生たちが打ち当たる現実。患者さんの死・患者さんを怒らせたこと(実は患者さんが不安で、落ち度のない学生に感情をぶつけたケース)・生きるために売春をしている女性を受け持ったこと。
 受け持ち患者さんの選定は、日本は学生に相当配慮している。ここは日本の看護学生は恵まれているのかどうかはわからない。看護師として働き始めて初めていろいろな社会背景の患者さんがいることに気づくのは、遅すぎるのか早すぎるのか。

 看護教員が看護学生を大切にしているのがわかる面接風景。泣き出しても何も言わない。その感情は持っていていい感情と伝える。学生のメンタルをさりげなく確認する。見習わなければならない。
 日本の看護教育は、看護学生に愛情を注いでいない。まるで看護学生のうちに自我や自信を潰しておかないと後から大変になる、といわんばかりに「厳しく!」を合言葉に学生を追い込んでいく。

 自分が看護学生だった頃を思い出せ、など甘いことをワタクシは思わない。「厳しく!」の結果、看護師不足と看護師の離職率は変わらないまま。定着率が上がったのは、病院の待遇が良くなったのではなく、不況だから。

 看護系の映画や物語は避けていたけど、この映画は見て大正解だった。
 そう思えるのは、ワタクシがゆるく看護師の仕事を再開しようと思えているからかもしれない。

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