【形から入るあなたへ】読んでみたくなる名言(当社比)集めてみた
世界の名作に出てくる名言がさらっと引用できたらかっこいいんじゃないか。
そんな中学2年生が抱きそうな思いを胸に様々な本を読んでみて、わかったことがひとつある。
名言の引用は、8割が伝わらない
まぁここ、日本だしね。基礎教養としてシェイクスピア作品の引用がバンバン出てくるグレートブリテン北アイルランド連合王国とは文化が違うのだ。わたしの知人は「源氏物語」を「祇園精舎の鐘の声」だと思っていた。さすがに日本人としてそれはどうなんだろう。
とはいえ、インプットしたものはアウトプットまでしたいのが人情だ。だからこれは完全に自己満足である。古今東西、世界の名作から日本の文芸作品まで、今しばらくわたしの自己満にお付き合いくださいませ。
①太宰治『人間失格』(新潮社 他)
自分には、あざむき合っていながら、清く明るく朗らかに生きている、或いは生き得る自信を持っているみたいな人間が難解なのです。(p.24)
いきなりド王道かよ。ある1人の男が、遺書だか手紙だかの形をとって語っていく人生のお話。薄いし安いし読みやすいので結構おすすめします。
人間のもつ普遍的な違和感をさーっと描写していく子供時代の回想は「うっ、心が」ってなった。自己肯定感低めの人間ならば一度は抱いたことのある感情ではないか。
ところがどっこい。女と酒と薬に溺れてく後半部に関しては、落ち方が真性のクズだったので読み物として楽しく読めました。逆に前半のトーンで最後までいってたら死人がでてたと思う。
②シェイクスピア『お気に召すまま』(白水社 他)
この世は全て舞台。
男も女もみな役者に過ぎぬ。(二幕七場)
これ、「世界劇場」って概念でして。他にも『マクベス』とかに出てくるような、割とシェイクスピアの哲学的な部分が落とし込まれてるセリフの一つ。
レスリングの試合でお互い一目惚れしたロザリンドとオーランドーが二人とも国を追われ、ロザリンドは男装してアーデンの森で再び出会う。ロザリンドは男のふりをしてオーランドーと恋の駆け引き。
なんで男装バレねぇんだよ、とか、終盤話がぶっ飛びすぎだとか、悪い奴の改心がはやすぎるとか現代の感覚では色々あるけど、シェイクスピアの円熟喜劇にあたるこの作品、わたしは結構好きです。まぁつまり、
こまけぇこたぁいいんだよ。
ってことですね。
③森絵都『ラン』(KADOKAWA)
あなたにしてみれば十把一絡げのケチな不幸かもしんないけどね、私は私で重たいものを抱えて生きている。平凡な人生の重みよ。(p.113)
序盤に出てきて嫌味を言って主人公にさらっと論破されたあたりでは、このまま二度と出てこないと思っていた真知栄子。蓋を開けてみればかなりの主要キャラだった。
典型的なぐちぐち言う鬱陶しいオバサンなんだけど、これが結構ツボなんだわ。好き。どれぐらい好きかっていうと、
人生に絶望して「あ、死のう」ってなったら、迷わず醤油の一升瓶買ってきて一気飲みするぐらいには好き(読めばわかる)。
その真知栄子が発した言葉がこちら。ここに限っては主人公よりもこっちに共感したのを覚えている。森絵都は単純に言葉がすごく綺麗なのでとても読みやすいです。なおこの本はスポ根ではありません。
④サリンジャー『フラニーとズーイ』(新潮社)
もしそれで幸福になれないのなら、たくさんの知識を持っていたって、頭が面白いように切れたって、どんな意味があるんだろう?(p.171)
サリンジャーといえば、斜に構えた若者のバイブル『ライ麦畑でつかまえて』ですが、わたしはこっちの方が好きかな。宗教論争的な部分もあるから人は選ぶけど。
特に何が起こるわけでもなしに、フラニーはボーイフレンドに禅問答みたいなことをはじめ、ズーイは閉じこもったフラニーに容赦のない言葉をバカスカ浴びせます。引用した言葉は母親のセリフなんだけど、母親もなかなかいい性格してるのでよくこの家族破綻しなかったな、と思わずにはいられません!
グラース家のお話として他の著作にも彼らは顔を出してるけど、多分これがいちばん読みやすい。異論は認める。
さて、とりあえずはこんなもんだろうか。雑な紹介ではありましたが、お付き合いありがとうございます。もし1ミクロンでも興味が湧いたら本屋さんでお買い上げいただいて、世の出版社さんを助けて頂けると嬉しいです。
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