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咽頭炎はのど風邪のこと

寝不足と、仕事の疲れもあってか、他者との境界が希薄になる。侵食されていく。情報が入ってきすぎて気持ち悪い。だめだ。今日はもう何も入らない。脳のスイッチ切りたい。退勤後、帰りの電車でお守りの指輪をはめるルーティンすらも今日はこなせない。孤独を守りたい。個でありたい。LINEの返信もできない。返信できないけど無事だから心配しないでねってことだけ、なんとか言いたい。あれ、でも、彼とは意外と話せる、なんだか大丈夫。なんでだ。終いにはスラダンの感想を電話口で声高に熱弁していて、さっきまでの〇〇はどこ行ったのと笑われた。

また来た。病は気からというけれど、今回は病に引っ張られてるな、完全に。本調子でなくぼーっとしていると、なぜか彼の顔ばかり浮かぶ。その間は安寧。気が弱っていると、自他の境界が曖昧になる。今日はバリア厚めに張っておこう。あまり人と触れ合わないようにしよう。この調子ではきっとすぐにキャパ越える。些細なことで心が砕ける。よく分かっている。絵の具みたいに自分と世界が混ぜこぜになって、どっちがどっちかわからなくなって、消えてなくなりそう。引き摺られる。思考が内に向く。内は過去。思い出さなくていいこと思い出す。間違えた記憶思い出す。想像でしかない相手の感情に飲まれる。自分が何歳で、今どこにいるのか分からなくなる。汗ばむ首元を強すぎる冷房が冷やす。優先席は一向に空かない。イヤホンのボリューム上げるけど、こういう時は音楽もただの雑音になる。とても届かない、聴けない。まだ聴けそうな曲を探す。サカナクションならわりといける。今日は指輪はめられた。音量上げて目を閉じて指輪に触れる。そうしてやり過ごす。胃液が上がるのが気持ち悪い。のど飴舐めてないと咽せるから、一日ずっとのど飴舐めてたら、口の中が甘ったるくて気持ち悪い。

忘れろ。忘れろ忘れろ忘れろ。考えるな。何も考えるな。食事を摂らないことも眠らないことも家に帰らないことも、同じ感情に留まり続けることも、自傷だからやめろ。考えるな。何も感じ取るな。おまえは自分で自分の機嫌とれるでしょ、とるの上手でしょ。こういう時には酒が手っ取り早いのに、胃の調子が悪いから今日は飲めない。そういうとこでは結局自分を傷つけられない。羽目外せない。悔しい。仕事の連絡も好きな人からの連絡も溜まっていって、返せない。20時から21時の間で荷物の受け取りがあるのを思い出して、ようやく改札を出た。そうでなければ帰れない。家に帰ることもできない。ああ、よくない、この思考はよくないなあ。やっぱり今日はこういう日だよなあ。こうなるって朝から分かってた。それでも一人だったらもう少し上手くやれるのに、支えてくれる人が現れてしまった途端に一人で立てなくなったのかな。悲しい。とても悲しい。どこまで肩を借りればよいかわからない。よくない。人に入れ込みすぎるのは、よくない。その分落ちるから。処理しきれない。しきれない分が涙になって体の外へ排出されるのだろう。だから人は喜怒哀楽すべてで泣くんだろう。

こういう時って自分の世界がすごく狭まっているに違いない。たぶん忘れている。友達や家族のこと。今一緒にいる人だけが私の世界の登場人物だと錯覚している。ふと、友達がおすすめしてくれた曲あったな、感想まだ言ってなかったなって思い出して、LINE開いたら、するする言葉が出てきた。かなり楽になった。雁字搦めになっていたと気づく。私の世界はそこまで狭くない。すぐに自分で狭めてしまう。昔からずっとそう。自分で減らしてる。視界が明るくなった。友達がいること思い出せてよかった。一緒に生きる人も必要だけど、違うところで生きている人と繋がっていることも必要。私には。あなたは間違ってないよ、それは誰だって悩んで当然のことだよ、って言われて、ようやく息吸える。一人じゃないって思い出した。二人でいると、世界はすぐに一人になってしまうから、私は恋愛が苦手だ。

以前ならこういう時全力で自分だけあやせばよかった。自分のことだけ考えてればよかった。でも連絡しなくちゃいけない相手がいるから、傷つけたくないから、ある程度ちゃんとしていないといけない。29歳でいようとしてしまう。ある程度自分の状態を把握して、適切な距離感で接したり、必要があれば適切な言葉を選んで説明しないといけない。自暴自棄になれない。人と生きるってこわい、そういうところが。見せたくない自分も見てほしい自分もいて、一人で完結できなくなる。こわい。こわいこわいこわい。一人で生きるより、永遠に傷つきたい、そう思えなきゃ、楽しくないじゃん、お守りがわりにずっと唱える。誰も悪くなくたって、嫌いなとこなくたって、私とあなたが違う限りは傷つくし傷つける。あー、やっぱ私は私だ、なんかちょっと安心してる、この感じ。深いところへ潜る。声が遠のく。

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