今日湯船に浸かりたい

実家を出て1年。
同棲を始めて半年ちょっと経った。

7月中旬だというのに
半袖だとだいぶ寒くて
待ちゆく人たちもジャケットや
カーディガンを羽織っていた。

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「湯船に浸かりたい」

湯船に浸かりたい。

実家を出てから……というか
実家でもお風呂はシャワーで済ましていた。

実家を出てから
湯船にお湯をはったのは
台風16号が来たときくらいだ。

お湯をはった
というより
完全に防災の観点である。

台風過ぎたら浸からず
普通にそのまま流したし。

今日が寒かったのも相まって
どうしても湯船に浸かりたかった。

「今日湯船に浸かりたい」

彼に言うと

「ん?あぁ、いいんじゃない?」

と言われたので
一応せっせこ風呂掃除をしてから
湯船にお湯をはった。

誕生日プレゼントに友人から
お高めの入浴剤をプレゼントされてたので
有り難くそれも投入した。

お湯が白く濁る。
アロマティックな香りが
浴室を包み込む。

湯船に浸かるというだけなのに
何故かワクワクが止まらなかった。

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いつも彼と一緒にお風呂に入る。

いつも通りのルーティン。

でも今日は少し違う。

湯船に!浸かる!

せーので湯船に足を突っ込んだ。
意外と深い。

「ふぁああ……」

丁度良い温度
身体の芯から温まる。

彼が後ろからギュッと
抱きしめてくれる。

ンンン〜〜〜〜!
これこれ〜〜〜!!!

私が
「なんかめっちゃ同棲カップルみたい……!」
というと

「同棲カップルじゃん」

と彼は優しく笑った。

それこそ
ラヴなホテルでは
一緒に浴槽入ってゆっくりして…
みたいなシチュエーションは過去にあったが

やっぱり自宅で
リアルな狭さの湯船と
いい感じの入浴剤と
大好きな彼に包まれてるこの感じは
最高の言葉の他に言い表すものはなかった。

幸せってコレだわ……。

なーんて思ってると

「まって。もう俺のぼせそう。
先上がるわ!」

と彼。

もう少しこの幸せな空間にいたかったが
彼の暑がりさんは仕方ない。

せっかくなので私はしばらく
浴槽に浸かり
次はいつこの入浴剤を使おうか
と考えていた。