最近気づいたんだけど、適度に血飛沫が出る映画が好きらしい。【下妻物語】

夏休み一発目、
なに観ようか散々迷っての、
【下妻物語】
自分が意識ないぐらい子供の頃の作品を観ることはなかなかなくて、
だから色々新鮮だった。
深キョン今と全然変わってないじゃん!とか、
それもそうだけど、
中島哲也さんこういう作品も書くのか!と。
【告白】と【渇き。】のイメージ強すぎて、ドロドロぐちゃぐちゃがテッパンなように思ってた。
いずれにしろ、中島さんの描かれる“女性の強さ”は魅力的で憧れます。
(【告白】はどちらかというと外部の影響による“強さ”のような感じはあるけど)


桃子とイチゴの関係性が良い。
桃子は俗に言う“おひとりさま”主義者。
『人間は一人なの。
一人で生まれて、
一人で考えて、
一人で死んでいくの。』
『人は一人じゃ生きられないなんて、
だったら私は人じゃなくていい。ミジンコでいい。』
バチボコカッコいい。惚れる。
ありがちなストーリーなら、
「一人でいいなんて強がるなよ(キラ-ン)」
みたいなセリフを吐く大人が出てくるけど、
この作品はそれがいない。
そのなんと心地いいことか。
最後まで桃子を肯定してくれる。


一方でイチゴは、
“仲間”だとか“友情”だとかが大好きなタイプ。
でもだんだんと、
桃子の生き方を理解していきます。
一人きりでも、ちゃんと地に足つけて生きている。
イチゴの望んだ姿ではなくなってしまった『舗爾威帝劉(ポニ-テ-ル)』に見切りをつけ、
桃子のように、一人で歩き(走り)始める。


本作の主テーマとして、
「友だちなんていらない」
という考えをもつ桃子が、
イチゴと出会うことで変わっていく、
みたいなのがあると思うのだけれど、
これまたありがちな、
「だって私たち…友だちでしょ(ニコッ)」
みたいなセリフは無い。
そこにフォーカス当てて、
でました〜!どうぞ泣いてください!みなさんの大好きなアツイ友情ですよ〜!的なのが感じられない。

その代わりに、
桃子がイチゴの喜ぶ顔を見て泣きそうになったというシーンがあって、
そこがまた、なんとも、
良い。
語彙力完全喪失して、良い。
わざわざ“友だち”という名前をつけなくても、
彼女たちには絆があるんだ、と。


で、何よりも好きなのはやっぱり、
桃子が族を抜けるために“けじめ”を付けに行ったイチゴを助けようとするシーン。
この時、桃子は憧れのロリータファッションのブランドの社長から仕事を頼まれていて、完成品を届けに行かなきゃいけませんでした。
でもそれを差し置いて、
イチゴを助けたいと思った桃子。
社長に電話して、どうしても届けられないと告げます。
社長は、
『仕事に比べれば、友だちなんてなんの価値もない』と言います。
嫌なタイプの社長や〜と思っていたら、
『だから僕には友達がいません。一人もいません。自分をさらけ出して付き合える人がいません。』と。
『行ってあげなさい。行くべきです。』と。
…いやめっちゃ良い人〜!!!
絶対裏ボス的な何かだろうと思ってたら良い人〜!!!!
そしてイチゴを助けに牛久観音まで向かいます。
何人いるかも分からないヤンキーの集会に、
乗ったこともない原付カッ飛ばして。
すべて、イチゴのために。


初めのうちは、
桃子のことを“助けられる側”
だと思っていた。
2人が初めて出会った時、イチゴが
『なんかあったらアタイの名前出しな』なんてカッコいいこと言うから。
でも実際にはイチゴこそが
“助けられる側”であった。
パチンコも刺繍も失恋も脱退も、
全部桃子に助けられた。
イチゴはきっと、誰よりも優しい人。
だけど強さはあまり持っていない。
そんな彼女を、桃子は幾度も救った。
そして彼女を、成長させた。
桃子自身もまた、イチゴと出会ったことで、
“他人”を知ることができた。
新しい自分に出会うことができた。
どちらか一方だけが変わったわけじゃない。
お互いに、お互いを認め合い、
色んなことを学んだ。
めちゃくちゃいい関係性。


桃子の、
“自分を信じられる”
という強さは、他のなにと比べても一番強力な強さだと思う。
私も割とおひとりさま主義者だけど、
桃子のように、自分自身に対しての絶対の自信がない。
カッコいいなぁ、憧れる。

あと、桃子の名言で一つ、
めちゃくちゃ心に残っているものがあって、
『人間は大きな幸せを前にすると、急に臆病になる。幸せを勝ち取ることは、不幸に耐えることより勇気がいるの。』っていう、
なるほどなあ。
不幸でいる方が、言い訳が効く。
そんな場面が多すぎる。
だけど、胸張って、幸せだって、
きっと言わなきゃいけないんだ。


夏の一作目、これにして大正解でした。

あ、それとタイトル補足ですが、
桃子が血浴びて水たまりに落ちてもヤンキー共に向かってく姿がめちゃくちゃカッコよくて、普通に惚れました。

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