【愛しのアイリーン】という映画がとても好きな話


だけど絶対周りにオススメできない。

と言っても私別に友達がいるわけでもないので、周りってなると三親等以内の親戚しかいなくて、尚更ムリなわけで。


だってどう説明すればいいんですか?
「人生オワタの男がフィリピンで女の子買って成り行きで人殺して最後には自分も死んじゃう映画だよ」
なんて説明するんですか?それとも
「お金のために日本来たらゴミみたいな男の嫁にされちゃって姑から酷いイビリ受けてたらなんやかんやで夫と姑が死んじゃって母国へ戻る映画だよ」
なんて言えばいいんですか?


ごめんなさい、そんなんじゃ全く足りないからやっぱりムリです。
この映画は、どんな人間も持つ、
汚くて酷くて卑しい本性と
暖かくて優しくて重たい程の愛とが、
何重にも重なり合って出来ているものだから。


特に愛については
お母さんから岩男への愛、
岩男からアイリーンへの愛、
そして、
アイリーンからの岩男とお母さんへの愛、、
その全てが違う形で、
側から見れば歪な形で成り立っている。


離脱したくなるほど息苦しい愛も、
苛立つ程冷たくて情けない愛も、
過去に縛られたままの愛も、
目的がなくなってしまっている愛も、
その全てをまとめ上げ、尚且つ、赦すことができたのは、
ラストシーンのアイリーンの表情があまりにも素晴らしかったから。
観ているだけでダメージを喰らうほど醜いものばかりを与えてきたこの映画は、
最後の最後に全身が震えるほど美しく儚いものを観せてきた。
いや、魅せてきたのだ。


決して見た目の美しさではない。
ボロボロの服、乱れた髪、
死にかけの姑を背負い必死に雪を掻き分け進むその姿は、どう見たって美しいものなんかじゃない。
ただ、間違いなくその姿は美しかった。
救いようのない者ばかりが映し出される中、
ただ一人強く正しく生きようとしている者の姿であった。
その強さは、他人に威嚇をしかけ大きく見せるようなものではなく、
自分の信じたこと、信じたいと思う人を信じ続ける強さであった。


私はこの映画が大好きだ。
だが誰かにオススメすることはしない。
さすがにここまでエロティックでグロテスクでバッドエンドな映画を勧めることはできない。

…というか、したくない。
この映画は、夜中の2時とかいうアホみたいな時間帯にアマプラサーフィンしてたら偶然見つけて寝落ちするまで観るかと思いながら気がついたら一睡もせず最後まで観て頭ガンガンに冴えちゃうような出会い方するのが一番良いんだ。
だから他人には勧めない。
あなたの興味ありそうな作品に出てくるまでアマプラ漁ってほしい。

何ならお家デートかなんかで観てほしい。
いやはやカップルなり不倫なり知らないが、序盤のR18シーンに感化されイチャイチャしながら観ていたら、急にバカでかい銃声が聞こえてきて一気にそんなムードじゃなくなる様子をモニタリングしたい。(やめましょう)


要するに言いたいのは、
この映画はそれぐらい突然の方が楽しめるんじゃないだろうか。


それこそ前回触れた【世界は救えないけど豚の角煮は作れる】でも書かれていたように、
記憶に濃く残る映画とは案外、
“出会ってしまった映画”だったりする。


是非、1人でも多くの人がいつか、
出会ってしまってほしい映画である。

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