この感想を書き終えたら、もう一度観ようと思う。
【万引き家族】
正直、書くかどうか迷った。
この映画が好きではないから。
あまりにも酷い。
こんなこと言ったらおかしいだろうが、
役者の芝居が下手であればまだ見れたかもしれない。
だが上手すぎる。
揃いも揃って。
言ってしまえば、この作品を醜いものにさせてしまった共犯者だ。
この一家のように貧しい人はきっと沢山いるんだろう。
出会ったことはないけれど、それは私が知らないだけだ。
しかし、どうしても彼らを現実として見れない。
子供に万引きをさせているから?
生保頼りの生活をしているから?
そんなんじゃない、もっと何か、
別な違和感を感じた。
私の知らない彼らと、
私の知りすぎている世界が、
どうやったって結びつかない。
それでも彼らはそこに存在する。
そこで生きている。ここに生きている。
どうしても納得できなかった。
頭では“いるんだろう”と分かっていても、
鑑賞中浮かぶ言葉は“ありえないでしょ”という言葉ばかりだった。
きっと、
私はあまりにも幸せすぎているんだろう。
貧しいのになぜリン(ジュリ/ユリ)を拾ったのだろう。
そんな余裕ないはずなのに。
虐待されていて可哀想だから、
その理由だけで彼女を助けた?
自分の過去と重なったから?
そうは思えない。
じゃあなぜ?
寄せ集めの彼らが暖まるには、
もっと人数が必要だったんじゃないだろうか。
精神的にも、勿論、物理的にも。
何人増えたって構わない。
側から見たら否定される関係を、
一人でも多く肯定するために。
いつでも誰でも
家族になれるよ、と。
それもあるんじゃないかなと、思ったり。
ただ、分からないんです。
何を見聞きしたって、他の家の事情なんて分かるはずもない。
のに、
他人の心にズカズカ土足で踏み込んで
カーペットやら何やらを散々泥まみれにし、
まるで良いことをしたかのように清々しい顔をしている奴らが何と多いことか。
《一瞬だけ入る記者の声》
「ここで家族のフリをしていた…」
《警察の言葉》
「でも産まなきゃ母親にはなれないですよね」
よく言うなぁ、こんなこと。
特に警察の言葉は、その全てが、一家を傷つけるものでしかなかった。
それが何の悪意もなく吐かれた言葉であればあるほど、鋭く尖ったものだった。
もうね、終盤はだいぶ鬱でした(笑)
この物語は、
『色んなカタチの家族があるんだよ』とか
『こんな家族があってもいいんだ』
ではなく、
ただ、淡々と、
『こんな家族はあってはならないんだ』
と言うことを伝えていた。
聞いてた話と違うんだけど〜?とか思ってた。
予告見る限り、
『誰に否定されても私たちは家族だ!』
みたいな物語を予想しちゃってたから。
まあこれは一方的に私が悪い。
夫婦やリン、ショウタついては少しだけその後が見えたけど、
アキはどうなったんだろう。
アキには何が残るんだろう。
4ばんさんのところに行ったのかな?
なんだかんだ彼女が1番気になる。
家族に受け入れられない、
おそらく、探されてもいない、
そんな状態で、心の拠り所だった、
自分を大切に思ってくれてると信じていたおばあちゃんが、
お金のために自分と暮らしていたと知った。(警察の言葉でそう勘違いしてるだけかも)
でも最後、家に戻ってきたんですよね。
何を思ったんだろう。
あの場所で彼女は、
これからも生きていくんだろうか。
アキの未来が見えない。
いずれにしたって言えることがある。
この家族は、誰一人として、
きっと幸せになれない。
6人が揃っていたあの一瞬が、
それぞれの人生の最高潮のように思う。
どうしてここまで悲しい物語を作るのか。
だけど、悲しいと感じるのもまた、私の独りよがりな思い違いなのかもしれない。
彼らは前に進んでいる。
それがどんな未来であっても。
ただ、何か一つでも希望があればなあと思う。
私はこの作品が好きではない。
しかしそれは“この一家が好きではない”に直接繋がるものではない。
警察やマスコミ、それら事情を知らない赤の他人が好き勝手騒ぎ立てる様が、
ニュースを見てあれやこれやと意見をする普段の私たちに重なった。
私たちはこんなにも醜い者であったのかと思い知らされた。
それが虚しくて、恐ろしかった。
こんな映画見たくないと背を向けた。
あれから2年近く経つ。
そろそろ振り返って向き合うべきなのかもしれない。
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