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karakurist目録#4_からくり設計のきほん

設計についてです。
設計の方法はPCでも紙に書くことでもできます。CADソフトを使って設計するとより細部までの設計がしやすいですが、複雑すぎなければ必須にはならないと思います。
ので、ここではどのように設計しても基本になりそうな部分を書いていきます。

大き歯車と小さい歯車

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大きい歯車と小さい歯車をかみ合わせて回すとどうなるかです。
大きい歯車→小さい歯車に回転を伝えると、小歯車は大き歯車よりも速く回ります。逆に、小さい歯車→大きい歯車に回転を伝えると大きい歯車は遅く回ります。
大きい歯車と小さい歯車を繋いで速度を変える。これが動力伝達の基本です。
回転を与える歯車を原動歯車、回転を受ける歯車を従動歯車と呼び、従動歯車の回転速度は
[原動歯車の回転速度]×[原動歯車の歯数]÷[従動歯車の歯数]
で求めることができます。
単純ではありますが、この回転速度と歯数の計算は後から間違いに気づくと修正がとても大変なので必ずチェックするようにします。
どっちをどっちで割るかわからなくなった時は、「小さい歯車は速く回る」ということを念頭に置いて考えるようにするといいです。

※ちなみに歯車系の用語でよく言われる速度伝達比というのは、
[従動歯車の歯数]÷[原動歯車の歯数]
です。速度伝達比が大きいほど従動歯車は遅くなります。
書くとややこしくなると思いますが、先述した通り「小さい歯車は速く回る」だけ覚えていればOKです。

レイヤー(層)

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じゃあ少ない駆動で回転数を稼ぐには大きい歯車からどんどん小さい歯車に繋いでいかないといけないのか!?というと、そうではありません。
小さい歯車に大きい歯車を結合することで、その大きい歯車は小さい歯車の速度で回すことができます。
その際に考える必要があるのがレイヤー(層)です。
歯車が重なる部分が出てくるので、干渉を回避するために歯車の階層を別にします。できるだけ省スペースで作るためにもレイヤーは極力増やさないのが望ましいです。

片持ちと両持ち

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歯車の軸を両端フレームに繋いで保持するか、1つのフレームから軸を生やして保持するかです。
結論から言うと、特別な事情がない限りは歯車の軸は両端を保持するようにします。これは強度を重視してほしいからです。両端をフレームに繋いでいれば、歯車の軸が歪むということは滅多にありません。
遅い歯車ほど回転する力は大きくということもあり、輪列(歯車の連なり)中に片方しかフレームと繋ぐことができない場面があっても、隙あらば小さいフレームを作ることも考慮しておくといいかもしれません。
ただ、どうしても回転軸の両方を保持することができない状況というのはあります。その代表的なのはリンク機構の回転です。

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リンク機構で代表的な4節リンク機構の原動節は回転運動です。中間リンクが回転軸の上を通過するため、原動節の軸を両持ちにすることはできません。この回転軸の強度は設計後、製作に取りかかってから問題になることがよくあります。
回転軸の強度は保持しているフレームの硬さと厚さで決まります。
フレームを木で作る場合は片持ち軸の強度を過信しないことですね。対策としては、厚さを増やすという方法です。回転軸を歯車と逆の方向に伸ばし、もう一つのフレームで保持すると片持ちの軸でも十分な強度を得ることができます。

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中間歯車

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中間歯車とは特殊な歯車の意ではなく、歯車の役割です。原動歯車と従動歯車を繋ぐ、1層のみの歯車です。別名「遊び歯車」ともいいます。
中間歯車は所謂、つなぎの歯車なので従動歯車の回転速度には影響しません。主に歯車の軸を通すための回避で用いたり、機構同士を同速で繋ぐのに使います。前後の回転速度には影響しないので、中間歯車の大きさは自由にできます。
ただ、影響しないとはいえ、中間歯車を加えると回転方向が逆転します。これは自然の摂理ですね。任意の回転方向にするために中間歯車を加える場面もあります。

三次元構成は慣れてから?

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所謂、全ての回転軸が同じ方向に無いような立体的な回転をする構造体のことです。基本的には傘歯車やピン歯車を用いることで回転軸を傾けることができます。

傘歯車c

ピン歯車c

立体的な構造体の設計はとても難しいと思います。それこそ、設計に3D CADを使わないとできないようなことにもなってきます。
慣れてからのほうがいいですか?という話ですが、まだ一度も作品を作ったことが無いなら歯車の階層の設計でできる作品を腕試しに作ってみるといいかもしれません。
というのも、ここに記載した内容以外にも、「歯車の寸法はどうする?」「歯車同士の距離は?」「回転軸と歯車の回転方法は?」といった細かい問題が出てきます。そういった設計するためのフォーマットが決まってからの方がいいでしょう。
立体的なからくりはその分より魅力的にも見えるものです。なので難しくはありますがぜひ挑戦してみてください。

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