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karakurist目録#2_設計を始める前に

実のところ、からくりに興味があったとしても自分も作りたいと思う人は1割にも満たないと思います。
更に、自分も作りたいと思う人でも具体的な作品をイメージしている人は少ないでしょう。

はじめに「何を作るか」です。

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何を作るか。どういうからくりを作りたいのか。ここが一番大事です。
「この機構はかっこいいからこの機構を使って何かしたい!」という考え方はあまりお勧めしません。プログラミングを例にすると、機構とは条件式のようなものです。つまり機構はあくまでもプロセスであり、最終的なアウトプットではないと思います。
また、設計をしてみるとわかりますが、「この機構を使って何かしたい」と思って設計した場合、機構の応用的な使い方がしにくくなり、基本に忠実な使い方に留まりがちになります。
どういうものを作りたいのか、この時だけは機構のことをあまり考えないようにします。機構のことに足を引っ張られると、現実的なアイデアしか出てきませんから。機構単体ができる動作というのはとても限られています。
「これが実現できたら面白そうだ」とか自分のワクワク感に任せてアイデアを出していくのが良いと思います。

次に「何で動かすか」です。

いわゆる動力源について、具体的な方法を決めます。動力を何にするかで使われ方や使う機構が変わってきます。また、機構にはそれぞれ必要な力が隠しステータスのように存在します。材料によっても必要な力は変わるので、歯車の速度伝達比が著しく大きなものはその影響も大きくなります。

手回しで動かす

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最も簡単な方法です。手動でからくりを動かすので、必要な力についてあまり深く考えずにからくりを作ることができます。また、手動のメリットとして操作による入力と出力の関係を直に感じることができる点があります。

錘(おもり)で動かす

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分銅のような重さのあるものを紐で繋ぎ、歯車を回すものです。半自動でからくりを動かすことができます。
位置エネルギーを利用し、錘が徐々に下がりながら機構を動かします。最大巻き上げ時と止まる寸前まで一定した力を取り出すことができます。
錘で動かす場合は脱進機や調速機などの速度を抑制する機構が必要になってきます。これが無いと錘は最大スピードで機構を動かすことになるため、怪我や破損の原因になります。
また、徐々に紐が伸びてくるため大きな空間が必要になったり、設置する高さも考慮する必要があります。

ゼンマイで動かす

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ゼンマイバネを巻き上げ、元に戻ろうとする力で歯車を回します。錘と同じくからくりを半自動で動かすことができるようになります。錘同様、ゼンマイを使用する場合は速度を抑制する機構が必要になりますが、錘よりもコンパクトになるため、場所を選ばない設計ができます。
ゼンマイを使うには、ゼンマイを収納して力を取り出すための箱を設計する必要があります。また、巻き上げが最大の時が最も力が大きく、力を開放しながら徐々に弱くなっていきます。

電気で動かす

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モーターを利用して機構を動かします。低速なギヤードモーターや速度を自由に指定できるステッピングモーター などが良いでしょう。モーターを使う場合は、機構の動きはモーター自身の回転速度に任せるため、速度を抑制する機構は不要です。
電気を使うメリットとしては安定した出力ができるようになることや、操作のしやすさなどが挙げられるかと思います。電力さえ供給できれば壊れるまでからくりを動かすことができます。
電気を扱うため他の知識が必要ですが、電気を使うことの難しさは他にあり、電気を使う部分とからくり機構を使う部分の線引きが曖昧になりがちになります。(特にステッピングモーターは回転・停止・加速・減速まで指定することができます。)
作品のコンセプトにもよりますが、機構特化型にするなら利用は最小限に抑えるべきかなと思います。

そして「何を使うか」です。

作品全体の構成を考えていきます。
目的の動きを目指して使う機構を模索していくと、どうしても基本的な機構では実現できない動きが出てきます。
ここを解決するのが機構特化型からくりの醍醐味です。
機構単体の動きはとても単純ですが、複数組み合わせていくことでどんどん複雑にさせていきます。
機構には大きく分けて「歯車系」「リンク系」「カム系」の機構があります。それらが組み合わさってできる機構もあります。

歯車系

平歯車c

歯車は回転を伝える機構です。歯数の違うもの同士をかみ合わせることで回転速度を変えることができます。全ての機構に回転を伝えること、指定した回転速度で各機構の動作タイミングを揃えることが主な役割です。
基本的な形状である平歯車が一般的ですが、特殊歯車というのもあり、速度変化をするもの(非円形歯車・段階変速歯車)や回転・停止を行うもの(間欠歯車・ゼネバ歯車)もあります。特殊歯車の設計は難しいですが、使いこなすことによって単純な回転から複雑な回転を作ることができるようになります。

リンク系

てこクランクc

リンク機構とは棒状で両端がジョイントになっているリンクを複数組み合わせて歯車では作れない動きを作ることができる機構です。リンク機構で基本的なてこクランク機構は、回転を往復運動に変えることができます。リンク系の機構は歯車の回転を変化させる役割で、主に最終的なアウトプット部分で使われることが多いです。派生していくと直線や擬似直線を作り出す機構や変則的な動きをする機構も出てきます。リンク機構の動きはリンクの長さが肝になってくるため、複雑化していくと製作した際に動きの誤差が顕著に出てきてしまいます。

カム系

板カムc

カムは輪郭に起伏がある回転する円盤で、その輪郭を棒状の部品がたどることによって往復運動を作る機構です。往復運動といっても、リンク機構よりも複雑な動きをさせることができます。カムは形状が複雑になるほど大きな力の伝達には向かなくなります。往復する動きをより詳細に詰めることができたり、設計がリンク機構よりも簡潔にできるのが魅力的です。摩擦の生協を受けるため、必要に応じてカムとの接触部分は滑りの良いものやベアリングにする必要があります。

この3つ以外にもロック系や継手系など、他にもたくさんあります。

僕が作っているサイト[ http://karakurist.jp/ ]にたくさん機構が紹介してあるのでよかったら見てみてね〜

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