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観劇記録「正三角関係 / NODA・MAP(東京芸術劇場)」

劇場で演劇を観るのは2回目の初心者です。

2023年秋に「ロミオとジュリエット(主演:高杉真宙・藤野涼子)」を劇場で観て、演劇に興味を持ちました。
そこで、演劇好きの知り合いに勧められたのが「NODA・MAP」。たまたま配信されていた「兎、波を走る。」を観て、無職手前有給消化中の暇な私はトリコとなったのでした。

「正三角関係」について、自分なりの感想を残しておこうと思います。物語のネタバレはあるかも、鑑賞前の方はご容赦ください。


前情報はいれず、わくわくして鑑賞。
以下のあらすじはHPの言葉を借りました。

日本のとある場所のとある時代の花火師の家族。
"父殺し"という事件を扱ったサスペンス。唐松三兄弟の長男は花火師・富太郎(松本潤)、次男は物理学者・威蕃(永山瑛太)、三男は聖職者を目指し教会に従事する在良(長澤まさみ)。

舞台は法廷から始まる。"父殺し"について被告・富太郎の有罪 / 無罪を決めることが『正』三角関係なのかな。場面は法廷と証言の再現を行き来する。言葉遊びやコミカルなシーンで笑っていたら、ギュイィーンと舵を切ってヘビーな展開へ。感情があちこちに飛んで、体力使いました。そうだった、私はこの舵を切られる感じにはまったんだった、と思い出しながら。

唐松家は腹違いの三兄弟。
長男・富太郎(松本潤)は花火師。戦時中で火薬が自由に使えないので、花火があげられない荒んだ花火師。
聞き逃せない下ネタが出て、びっっっくりした。油断してはならない。

次男・威蕃(永山瑛太)は物理学者。
量子力学の演出が魅惑的だった。長男と比べて、流されない、自分の信念にまっすぐな印象だった。
計算式を解いている上からの映像が新鮮。ピタゴラスの定理という言葉も出てきて、学生以来の定理や式に頭が混乱しそうになる。

三男・在良(長澤まさみ)は教会で働く聖職者。
計算を解く次男の横にいるけれど、計算式を見ると寝てしまう。素朴な三男。三男……男!?って驚いたけれど、鑑賞後にHPをみたら男役って書いてあった。
グルーシェニカと呼ばれる女性の一人二役。
グルーシェニカが登場すると一気に空気がガラッと変わる。大人しくて、かわいらしい弟から、露出もあって派手で明るい目が離せない女性へ。見失っている間にフッと変身して現れる。目の印象すら変わる。目が丸くつぶらな三男から、切れ長で少し荒んだ女性へ。メイクとか、どうなってるんだろう。全然わかんなかった。魅了されちゃって、観劇中はそんなこと思い出せなかった。

富太郎・威蕃・在良の名前は原案となった「カラマーゾフの兄弟」それぞれに近しい名前になっているけれど、日本名でこれほどバラバラだと、腹違いの母親がそれぞれ好き勝手に付けた名前って感じ。

たくさんの三角関係が出てくる。
「長男・次男・三男」「長男・父親・グルーシェニカ」「長男・許嫁・グルーシェニカ」。ここまでは長男が回す三角形。そして「検事・弁護人・裁判長」。ここにも中央の点には、被告となった長男がいる。

検事の名前は盟神探湯と書いて"くがたち"と読むそう。
三兄弟の父親である唐松兵頭(竹中直人)と一人二役。
竹中直人さんはコメディor悪役が多いイメージの役者さんだったので、ひとつの物語でどちらの面も見れてお得な感じ。ありがとうございます。
髪と羽織で印象がガラッと変わる。

不知火弁護人(野田秀樹)は神父さんと一人二役。
検事も弁護人も役の入れ替わりがメタ的で舞台ならでは。「舞台」にしかできないことが楽しい。小説でいう叙述トリックのような。その媒体にしかできない演出って大好き。
親しみのあるキャラクターだった弁護人がだんだん不穏な空気を纏っていくの怖かった。演劇、演じるってすごい。
神父さんが、死に際に「間に合った~」と言う人へ苦言を呈していたけれど、日常の違和感を掬い取る言葉選び・言葉遊びにわくわくする。

長男の婚約者として登場する生方莉菜(村岡希美)は、グルーシェニカとの掛け合いがかっこよかった。セリフも印象的。観劇後、真っ先にメモしたセリフでした。ここには書かない。
また、長男とふたり、ソファに並ぶ場面の演出がロマンティック。揺れている照明が場を掌握していた。

ウワサスキー夫人(池谷のぶえ)が中盤の癒し。
登場するとホッとした。『読んではいけないメモ』が登場するあたりから、空気が変わるんだけど。
ネコの名前はアドリブだそう。パンフレットで触れられていました。会場は笑いが起こっていたので、演劇が好きな人って多いんだな~と実感。
テープレコーダーの演出も好き。特に、テープレコーダーの余韻で返事するところ!

証人の番頭呉剛力(小松和重)は不憫な人だけれどコミカルで愛されな存在。こう見ると、すごい名前だ。そして誕生日会に三兄弟を誘うなんて、仲がよいな。

そういえば、長男・富太郎が「正しい」と信じていたものは何だったんだろう。次男は科学を、三男は神を信じていた。

演出もわくわくした。
布のゆらめきはもちろん、電車にはびっくりした。布が電車になるんだぜ。
赤い和傘がパッパッと開く姿はそういう生き物みたい。火花みたいな毎日を送っているのかな、と想像が膨らむ。
他にはテープレコーダー。登場していないけれど、登場するのが不思議な世界。時を越えて3か月前と電話など。不条理がすんなり受け取れる。
面白かったのがヒキガエル。動くんだ、とあの場の観客全員くぎ付けになったと思う。

忘れられないのが養生テープ。あんな使い方されたら、養生テープもわくわくしちゃうだろうな。

あと、終盤にゆらゆらと椅子で揺れる三角形。
一直線になったとき、もう彼らが戻れないことを予感した。

鑑賞後の、咀嚼が楽しい~~~~
感想を書きながら「そういうことか!」と気付ける。舞台を思い返せば返すほど、いろいろなことに気付ける。例えば、長男の職業から。花火は夏にあげるものだった。例えば、舞台装置から。あれは気付けば、眼鏡橋だった。たくさん気付けていないことが、まだまだたくさんあると思う。
私は具体的な地名が出てくるまでピンと来ていなかったので……

東京の千穐楽でした

初めての東京芸術劇場でした。
池袋駅も初めて。迷いながら到着すると、ガラスが交差する屋根が開放的。

1990年竣工で建築家は芦原義信。
ホールが3つも縦に重なっていて驚いた。劇場ってこんなに自由なんだ。
そしてゆったりした広場。この空間をアトリウムと言うらしい。

ホールの反対側が開放的!

なんだか面白い建築物ダナ~と写真を撮っておいて良かった。
これからは建築物を調べてから行くのも楽しそう。
次回から劇場へ行くときは下調べしておこう。

▼参考記事


演劇好きの知り合いには他の劇団もオススメしてもらったので、そちらもぜひ劇場で観てみたい。舞台初心者はチケットの情報収集が難しい〜

▼観劇記録「兎、波を走る」

今作の戯曲は単行本で発売されたら買っちゃう予定です。

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