見出し画像

読書記録「オーダーメイド殺人クラブ」

厨二病感あるタイトルからは想像できないほど、刺さった。

クラスで「リア充」なグループにいる主人公・小林アンは猟奇的なものに惹かれる自分と同級生たちとのズレを感じていた。
ある日の河辺で、昆虫系だと下に見ていたクラスメイトの徳川の足元に、血まみれのビニール袋があった。その中身は徳川が殺したネズミの死骸だという。
「私の少年Aになってほしい」
小林アンは徳川に自分自身の殺害を依頼する。ただの殺害ではなく、誰もが話題にするような、ずっと記憶に残るような死に方で。

どんな展開になるんだろうと思ったけれど読みながら立てていく予想を、易々と超えてぐちゃぐちゃにしていく。
そして圧倒的誠実なクライマックスが本当に刺さった。

たぶん、この小説の読まれ方には2通りあると思う。
「オーダーメイド殺人」という現実的には捉えにくい厨二病チックなストーリーだけど、そこに添えられた中学生らしさに身に覚えがあり過ぎて、私は感情移入しながら読んだ。
文庫版の解説では物語の外側から読んでいるような解説だったので、読み方に違いがあるのだと気づいた。
中学生の外側から、厨二病だなあと他人事として読むか、彼らに感情移入しながら読むか。

自分自身の中学生の頃を思い出すようなエピソードがあったので、つい感情移入してしまった。

この小説は【中学生女子】がリアルなのだ。
例えば、中学生になるとプールを休む女の子が増えること。
真面目にやっていることがバカらしくなること。先生の揚げ足は取るもの。恋愛のゴタゴタ。
高校生になると逆にやらなくなるよねってこと。
そして、奇数で女の子が集まるとそうなるよねってところ。

私も中学生の頃に奇数グループに入っていたことがあるので、主人公の気持ちが分かりすぎてしんどかった。
どちらの味方でもあってどちらの味方もしたくなかったら、どちらからも捨てられる。
私はトイレで呼び出されてどっちの味方なの?って言われたことがある。
その時のことを思い出して胸が縮まる思いで読んでいた。

私は往復2時間かかる通勤電車でいつも読書をしている。
主人公が友人関係で辛い状況に立たされる時、ちょうど最寄駅に着いてしまい、帰宅してから続きを読んでしまうかめちゃくちゃ悩んだ。
結局翌日まで我慢したが、どう展開されるんだろう、救われてほしい、解決してほしい、と小説のことを考えながら過ごしたのは久々だった。
それくらい日常に引き込んで楽しめる小説だった。
そして翌日の展開が刺さりまくった。

「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」といい、辻村深月先生の作品は女性のリアルな嫌さが書かれていて胸が詰まる。
中学生の頃なんて思い出そうとしても思い出せなかったようなことを「オーダーメイド殺人クラブ」では思い出させてくる。
なんでこんなに繊細に、引き起こすようなことが書けるんだ。

主人公・小林アンの綺麗なうちに死にたい願望は「厨二病」と片付けてしまえばそれまでだけど、割と中学生や高校生に多かった思いだと思う。
私の同級生にも、家庭科の時間に裁縫をしながら「20歳までに死んじゃいたいな、綺麗なうちに」と笑っている子はいたし、電車内の高校生が友達に「早く死ななきゃな〜」と言っていた。

圧倒的誠実なクライマックスがオタク琴線に触れまくり。
「かがみの孤城」でもかなり衝撃を受けたんだけど、そちらは読者全員を優しく包むようなエンドであったことに対し、この「オーダーメイド殺人クラブ」では刺さるところに刺してくる。
クライマックスを読むまではあんなに不安で仕方がなかったのに。
「と、徳川〜〜〜〜」と語彙力欠如感情が溢れた。
読後に満たされながら考えて、ようやく徳川が河瀬(主人公の元彼)が嫌いなのか分かったり、ここはそういうことだったのねと納得する。
ぐちゃぐちゃに絡まった展開へ、誠実に真正面から向かう感じ、ずっと忘れない。


▼読書記録「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」

▼読書記録「かがみの孤城」

▽読書記録

この記事が参加している募集

#読書感想文

188,615件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?