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読書記録「本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む / かまど・みくのしん」

久しぶりに、発売日に本屋で探した本です。

本を読んだことがないけれど、読書してみたい"みくのしん"さんが友人の"かまど"さんと読書に臨む本。
『走れメロス』『一房の葡萄』『杜子春』『本棚(書下ろし短編)』の4編の読書が収録されています。

みくのしんさんによる"五感で行う読書"が本当に楽しそうで、羨ましくなります。

また、『走れメロス』はこの記事で読めます。

まず1ページ目の、読書なのか疑いたくなるダイジェスト写真が既にワクワクさせてくれます。
2022年にこの記事が公開されて、一文一文に対して向き合う読書が新鮮だっでした。自分もこんな読書がしてみたい、と思ったことを覚えています。

『走れメロス』は中学の国語で学んだので、話は覚えている……けれど、共感して読んだらこんなに喜怒哀楽が詰まっているのか、と衝撃を受けました。
また、本の内容とweb記事は少し違っているので、二度楽しめます。

『一房の葡萄』と『杜子春』は、初めて読む作品でした。

たぶん、『一房の葡萄』を私だけで読んでいたら、ぼんやり読み進めてしまい、印象に残らなかったと思う。
みくのしんさんの感想があたたかくて、100年以上前に書かれた名作が名作とされる所以を味わえました。

『杜子春』も100年以上前の名作。
ユーモアもあってどん底もあって、感動も。この作品を知れてよかったです。
芥川龍之介のイメージは『羅生門』。これは国語の授業で知ったけれど『杜子春』も載せておいて欲しかった……。
タイトルも知らないまま大人になってしまいました。

特に、主人公・杜子春が修行する場面での、みくのしんさんの感想が印象的でした。五感を使って読書をする人の「やっぱり声ってすごいんだよ」の説得力。名作と呼ばれる作品は、ものすごく繊細に計算されて文章が構成されている。

また『杜子春』の読書感想文が大好きです。

どんどん雪玉が大きくなるような、そういう感じもありつつも、それだけじゃない。大きくなった雪玉がこれ以上大きくなるのかと思ったら、そのまま水になるところまで描いて、それまたその水が誰かの口に入るまでを描いているような話の書き方。

本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む / 「杜子春」を読んでみて p.254

こんな感想、言えるようになりたい!

この感想は「なんでこうも一文字一文字生きている文章が書けるのか。」とつながりますが、こんな一文字一文字生きている感想が言えるところがすごい。
ひとつひとつををこんなにすくってもらえたら、作者も幸せだろうな。

『本棚』は『変な家』で有名な"雨穴"さんの書下ろし短編です。
書下ろしを書いた経緯も、みくのしんさんの人柄が出ていました。
誰かのために書いた作品って、強い。他が介入できない部分を覗き見したような読書でした。

私が読んでいたら、何気なく飛ばしてしまいそうな一文からの広がり。
こんな一文にこんな役割があったのか~と気付ける。
一文を情報として読むか。情景として読むか。

また、本書の言葉を借りると、本書は「読書体験のデザイン」がされています。次頁の展開が気になる仕掛けになっていて、ページをめくりたくなる。
漫画においてのいわゆる「引き」が構成されています。
紙で読まないと気付けなかったので、手に取って読むのがオススメです。

【本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む】
作 者:かまど・みくのしん
出版社:大和書房
発行年:2024年


私のする読書は「物語の展開」を重視しがちだと気付けました。
人物への共感や、景色の想像をすれば、もっと読書は楽しくなりそう。

また、読書は好きだけど、普段はエンタメ小説を読むことが多く、純文学をあまり楽しめない。難しい、と感じてしまって手に取らない。でも、一行一行の描写に注目してみれば、もっといろんな本が楽しめそう。私の読書観が広がる一冊でした。


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