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読書記録

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友達に紹介するような文章で記録をつけています。 小説、実用書、歌集、雑誌。好きなものをのんびり。
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2023年5月の記事一覧

読書記録「たかが殺人じゃないか」

タイトルに惹かれて文庫本を購入した。 「たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説」というタイトルあるように、戦後を舞台とした推理小説である。 戦後での「たかが殺人」とは。 主人公は高校三年生の風早勝利は、ミステリ小説家を目指す推理小説研究会部長。 中止となった修学旅行の代わりに、推理小説研究会と映画研究会の合同合宿として温泉での一泊旅行へやってきた。そこで密室殺人事件の第一発見者となる彼ら。 さらに、廃墟で映画を撮影していたら解体殺人事件の第一発見者となる。 犯人は、そし

読書記録「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」

女性同士の鬱屈とした駆け引きがねっとりと書かれている。 アラサーになったこの年齢で読めて良かったなと思う。 学生の頃ではこのリアル感が掴めなかったと思う。 これは初期の作品にあたるのかな? 辻村先生の過去作品は、ねっとりとした女性のやり取りが多い印象がある。特に主人公たちが女性だと。 不穏な空気感の中に伏線が張られ、最後の方にようやく回収されるイメージ。 学生の頃に読んだ「子どもたちは夜と遊ぶ」の月子と紫乃のことをずっと覚えている。マスカラがダマになっているなんて人に指摘す

読書記録「四日間家族」

終始ヒリヒリしていて、安心できる時がないようなスピード感のある小説だった。ミステリー小説というよりは、サスペンス小説に分類されるのかな。 映画を見たような満ち足りた読後感。 最初の一文がこちら。 初っ端から不穏だ。 「じめじめ」で「湿っぽい」「古い」「機械油」に加えて「刺激臭」。 一文に不穏が詰まっている。最悪が待っていそうな一文。 集団自殺のために集まった四人が、山奥で赤ん坊が捨てられていることを発見する。 最後の人助けだと四人は赤ん坊を保護するが、赤ん坊の母親を名乗

読書記録「名探偵のままでいて / 小西マサテル」

「孫が持ち込んだ謎を解く認知症の安楽椅子探偵ミステリ」である。 この設定にまず惹かれた。そしてラストにぐぐっと惹かれた。さらに最後に提示された"謎"の虜である。 孫の楓が持ち込む謎を、話を聞くだけて仮説を立てていく祖父。 古本に挟まっていた記事やプールでの人間消失など。 祖父は仮説のことを「物語」と呼び、真の物語に迫る時には煙草を燻らす。 名探偵の「さて、」のような謎解きのお約束が祖父の「煙草を一本くれないか」。もう「古典ミステリ感」を漂わせていて、堪らない。 この小説の