アンネ・フランクが愛した文学
はじめに
今回から、とあるオランダの作家の小説を翻訳してみようという試みを始めたいと思います。
誰も翻訳していないので、おそらく日本初の試みです(大袈裟ですが)。
この作家、名前はCissy van Marxveldt(シシー・ファン・マルクスフェルト)。
主に1920年代に活躍したオランダの児童文学作家です。
数多くの作品を残していますが、日本語に翻訳されたものは何一つありません。100年近く前の作家ですし、翻訳も存在しないため、彼女を知っている日本人はほぼ存在しないと思われます。
ではなぜ私が今になって彼女の作品を翻訳しようと試みるのか。
それは、彼女の作品を、かの有名なアンネ・フランクが愛読していたという背景があるためです。
アンネ・フランクの存在は日本でも非常に有名かと思います。
そんなアンネが愛読していた児童文学、と聞くと、もしかしたら興味を持つ方もいるかもしれません。
アンネは1929年生まれですから、もうすぐ生誕100年です。そう遠くない過去にアンネがどのような作品を読んでいたのか。ぜひこの機会にみなさんにもアンネの目にした文学を共有したく、本記事を執筆することに決めました。
作者について
そもそも日本においてほぼ無名の作家、Cissy van Marxveldtとはどのような人物なのでしょうか。Wikipedia(原文英語)によると、以下のように説明されています。
前述した通り、オランダの作家であり、『ヨープ・テル・ヘール』という小説のシリーズで有名とのことです。他でもないこのシリーズが、アンネ・フランクが愛読していたシリーズです。
さらにWikipediaには、興味深いことが書かれています。
一素人である私が調べた範囲でわかっていることとしては、Cissyが記した小説は全てオランダ語であり、英訳が何作か出版されています。
しかしその全てが現在絶版となっており、少なくとも日本国内では入手不可能だと思われます。海外でも入手するのは容易ではないのではないでしょうか。
国立国会図書館に一冊だけCissyの作品の英訳があるようで、本記事執筆時点では詳細を確認できていませんが、近いうちに国立国会図書館に赴いて調査を行う予定です。
今回翻訳に挑戦する作品
今回翻訳を試みるのは、全部で5冊ある『ヨープ・テル・ヘール』シリーズのうちの第1作に当たる『ヨープ・テル・ヘールの高校時代』です。
翻訳するにあたって参考にするのは、以下のサイトです。
これは私がCissyについて調べている際、たまたま見つけたものです。なぜか作品がまるまるひとつ全て公開されています(原文はオランダ語です)。
このように公開されているということは、おそらく著作権的にも翻訳を公開しても問題ないのではないかと判断致しました。
「目次」欄によると、全部で19の章からなることがわかります。したがって、1章ずつ翻訳していき、全部で19個の記事にする、というのを目標にしたいと思います。
基本的に一章ごとの日本語訳を全て記し、記事の後半に原文のサイト載せたいと思います。
翻訳方法
本作品の原文はオランダ語です。私はオランダ語がそこまで堪能なわけでもないため(学習歴はおよそ4年です)、単純に翻訳といってもさまざまな方法を駆使しながら翻訳を進めていきます。
主にこれら三つの翻訳を掛け合わせて、より日本語として正しい、かつ原文に忠実な訳を作りたいと思っています。
②の方法をとった理由としては、個人的にオランダ語よりもドイツ語の方が読みやすいためです。またオランダ語とドイツ語は語彙・文法共に近い存在のため、機械翻訳にかけた際の誤訳を最小限に抑えられると考えたためです。
また、①〜③は必ずしも順番を表しているわけではありません。
全てを同時並行的に行い、それぞれの訳の"いいとこどり"をしながら訳文を作成していきます。
登場人物やその他固有名詞の発音についてですが、日本語の定訳が存在しないため、機械翻訳も参考にしながら著者が決めていきます。
オランダ語は特に日本語にない発音が多いため、単純にカタカナ表記をするだけでは正確ではない場合も少なくなく、そういった点が難しいところではありますが...。
では今回はイントロダクションということでこのくらいにします。次回から1章ずつ翻訳を進めていきます。
戦前のオランダ児童文学に触れられる滅多にない機会かと思いますので、気になった方は読んでくださると幸いです。
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