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長い殺虫剤の夜事件

こんにちは、にかです。

寮のキッチンに、夥しい量のハエや小虫が大量に湧いていました。

写真は、悍ましすぎるので撮っていません。

そういうわけで、僕も彼らの大粛清の覚悟を決めました。

僕たちとハエたちとは、ある意味では仲間でした。つい先日まで、お互いがキッチンに共存していたのです。
しかし、今夜はそんな彼らが大量に増殖してしまいました。

我々も彼らの個体数が少なかったから許していたものの、こうも大量に存在されるとその存在が邪魔になり、不都合になってきます。

そう、かつての仲間を粛清せざるを得なくなってしまった。まさに、現代の長いナイフの夜事件ではないでしょうか。

長いナイフの夜、それはヒトラーとその親友レーム君との間に起きた事件です。

二人はとても仲良しでした。レーム君は突撃隊(SA)のトップの座についていました。突撃隊とは、当初ヒトラー率いるナチスの力となっていた数百人の組織でした。
しかし、数年で数万人にまでその数は増えます。他でもないエルンスト・レーム君の力です。

数が増えすぎると、だんだんと収拾がつかなくなってきます。突撃隊の中には、ヒトラーにとって都合の悪い思想を持つ人たちもたくさん生まれてきます。

こうも邪魔な存在になってしまったなら、仕方がない...というわけで、ヒトラーは長年の親友レーム君を粛清する、つまり殺すことに決めます。これが長いナイフの夜、またはレーム事件です

もちろんヒトラーは自分の手は汚さない人間ですので、直接ヒトラーが殺したわけではありません。部下に殺させました。というか、ヒトラーは生涯で自分の手で誰一人として殺害したことがないとも言われています。

長いナイフの夜という名前は、どうやら5世紀ドイツのある逸話から来ているらしいですね。

ともかく長年の仲間を殺してしまったこの事件は、今晩我が寮で実行せざるを得なかった粛清事件と似たところがあるように思えます。


そしてこのレーム事件を題材にした、非常に有名な演劇があります。
その名も『わが友ヒットラー』です。

さあ、勘の言い方はお気付きでしょう。作者はもちろん三島由紀夫です。
中学生の頃に初めて読んで以来、ずっと愛読している作品です。結構長い戯曲ですが、4分の3くらいは暗唱できます。

『思ってもみよ、諸君!我らの祖国は今や屈辱の時を脱して、歩一歩新しい独立と建設の時に向かって進み出した!』

という力強い一文で始まるこの戯曲。小蝿駆除に凛々と勇気を与えてくれる気さえします。

wikiの最後にあるように、三島由紀夫の肉声朗読が残っており、YouTubeできくことが出来ます。


思ってもみよ、諸君!我らの寮は今や小蝿たちによる屈辱の時を脱して、歩一歩新しい独立と建設の時に向かって進み出した!今晩を思い出したまえ。あの留学生活を楽しんでいた、5月27日を。あの時私は勇敢な住人として料理をし、キッチンにいたが、そこで腹わたの煮えくりかえるような思いがしていた。我々住民の住処を腐らせたバイ菌は、既にその時に胚胎していたのだ!!キッチンでは虫を相手にしない真面目な人間は笑いものにされ、自分の料理に虫がくっついている下品を自慢し、自慢するばかりか勇敢に殺虫剤を振り回す兵士よりも、自分の行為の方がずっと勇敢だと揚言していた。どう思う諸君?寮の退廃は既に何週間も前から兆していたのだ。ここ数日のもろもろの設備の衛生さの転倒は、卑怯者の平和主義は、トイレよりも臭い小蝿どもは、寮の敗北を喜ぶ小虫どもの陰謀は、壁に張り付く下劣な虫ケラは、ことごとくその日に兆していたのだ。。。

この粛清事件によって、大量の犠牲者が出ると思いますが、その数は今後も数を増していくこととなるでしょう。どうか僕の留学生活が穏便でありますように。

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