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アルベルティ著 『絵画論』 中央公論美術出版

古典中の古典である『絵画論』を図書館で借りてきて読みました。

レオン・バッティスタ アルベルティは1404年イタリア・ジェノヴァに生まれたルネサンス初期の人文学者。 絵画論のほか、建築論も書き残しています。理論家であり、同時に実作者であったとされますが、残念ながら絵画作品は残っていません。

この絵画論によって遠近法が定式化され西洋絵画が確立されたと言われます。またレオナルド・ダ・ヴィンチが教科書にしたことでも知られています。

中身は3巻にわかれます。第1巻では点、線、面といった絵画の要素を幾何学的に説明する基礎知識。そのうえで光と色彩を論じています。さらに視覚的ピラミッド、つまり目を頂点とした外界に広がる四角錐を想定した遠近法を理論付けます。この部分がのちにルネサンスの線的遠近法として発展します。

第2巻はいわば絵画の効能書き。絵画は目前にいない人を示し、死んだ人を後世に伝え、神という目に見えない存在も見せます。貴いものは描かれることで一層貴さを増すのも効能です。さらに絵画は自然の観照から生まれるもので、輪郭は自然を表すものであり、構図は歴史的事件におけるドラマティックな感動を高揚するものであり、光と色は感動を与えるものであると論じます。こうした絵画の果たす心理的効果を論じたのはアルベルティが最初です。

第3巻は画家について。画家の仕事は本物そっくりに描くこととされます。それには技術的な修養だけではなく、道徳的に優れた人物になることを要求され、幾何学などの科学を学び、詩人たちとも交わって知識を持たなければならないといいます。ここで想定されているのは歴史画であり、それは神話や物語を題材にした絵画だからでしょう。

ここから絵の学び方を説きますが、これは現代でも十分に通用します。
第一に自然に学ぶこと。つまり写実です。しかもなるべく実物大で描くことが勧められます。というのも小さく描くと大きな間違いがわからないが、大きく描くと小さな間違いがわかるから。
第二に他人の模写は薦めません。
第三に、描く前に頭の中でどう描くかを構成を決めてから描くことを命じています。
第四に、歴史画であっても人物だけでなく、動物や周囲の事物などなんでも描くようにして、何かの専門を作ってはいけないと説きます。

こうして絵画が科学を基にした芸術の最上位の地位を与えられ、工芸から解放されていきます。美学的にはこのあと美術はさらに美的に自立していくことにもなるのですが、それは後の時代の話です。

15世紀初期ルネサンスの時代から、画家の仕事はそう大きく変わっていないことが驚きでした。

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