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未来新聞

フリマアプリで買った靴が届いた。
段ボール箱を開けると、そこには新聞紙が緩衝材として入っていた。いかにも素人らしい梱包である。

ふと、新聞の日付が視界に入った。するとそこには半年後の日にちが書かれていた。
未来の新聞……?出品者のいたずらだろうか。くしゃくしゃになった新聞紙を広げると、ひとつの記事が目に飛び込んできた。

『カクイチ、新宿に新店舗』
カクイチとは僕が勤めているスーパーだが、新宿に新店舗が出来ることはまだ社内の人間しか知らないはずだ。しかしその記事に書かれていた立地、店舗規模、開店日、全てが正確だった。

驚いた僕は、他の記事にも目を通した。体裁は普通の新聞だ。いたずらにしては紙面の完成度が高すぎる。しかし、出来事としては確実に未来のことが書いてある。本当に未来の新聞だという信憑性が増してきた。

もう一枚、新聞紙を広げてみる。社会面だった。そこには、ある無差別殺人事件の記事があった。
被害者の名前に目が留まる。僕と同姓同名だ。年齢も一致している。心臓が早鐘を打つ。これは僕か?
被害者が多いらしく、紙面にはそれぞれの名前しか出ていない。顔写真がない以上自分だと断定はできない。しかし可能性はゼロではない。
殺された場所を確認する――関東一帯。これでは引越しのしようも無い。今の職場に通えなくなってしまう。
しかし、殺されるのは絶対に避けたい。どうにか...。

「この度は私共の結婚相談所にご入会いただきましてありがとうございます。お相手に求めることはございますか?」
「違う苗字の婿養子希望であれば、どなたでも」


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