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「読む」THINK_03(2011年6月24日)/ゲスト:安東陽子さん;テキスタイルデザイナー(安東陽子デザイン)

Introduction

今回の「読む」THINKは,2011年の6月に開催された第3回のTHINKをダイジェストで振り返ります.ゲストは,テキスタイル・デザイナーの安東陽子さん.当時は,長年勤められていたNUNOから独立して安東陽子デザインとしての活動を始められたばかりの時期でした.NUNO在籍当時から,建築空間における布(ファブリック,テキスタイル)の在り方を建築家と共に作り上げるパイオニア的存在として,今でも揺るぎない信頼を得ているデザイナーのお一人です. 

ーー定期購読マガジン THINK BOOK について

THINK BOOK は,読む "THINK" です.Suppose Design Office の谷尻誠が毎月魅力的なゲストを招き「"考える"ことを考える場所」として開催しているイベント"THINK"を読み物として再構成してまとめています. 多彩なゲストとの間で繰り広げられる本音のトークはここでしか聞けないヒントがたくさん詰まっています.過去100回以上に及ぶ記録資料などの掘り起こしを含め,月に2回程度,定期購読マガジンとして掲載します.ぜひ定期購読していただいて,皆さんの日常をTHINK するきっかけにしていただければ幸いです.(谷尻誠,西尾通哲:共同編集)

当時の告知資料より

告知ポスター

THINK03はテキスタイルデザイナーの安東陽子さんをお招きしてトークショーを開催します。安東さんは伊東豊雄氏、青木淳氏、山本理顕氏、隈研吾氏等、一線で活躍する建築家と数多くのプロジェクトを手がけてきた布のスペシャリストです。オーダーメイドのスーツのようにひとつの建築のために作られる布とはどういった過程を経て生みされるのか。建築と布の関係性についてお話しして頂きます。

トークショー:2011年6月24日(金) 19:00〜21:00
会場:suppose design offce 3階

PROFILE
安東陽子 (あんどうようこ)
1968年生まれ。武蔵野美術大学短期大学部グラフィックデザイン科卒業後、NUNO(株式会社布)に入社、クリエイティブスタッフとして勤務。2011年5月よりフリーでの活動を開始。伊東豊雄建築設計事務所「せんだいメディアテーク」「まつもと市民芸術館」「多摩美術大学図書館(八王子キャンパス)」青木淳建築計画事務所「白い教会(ハイアット・リージェンシー・オーサカ)」をはじめ、山本理顕設計工場、隈研吾建築都市設計事務所など多くの建築家とのコラボレーションが知られている。

会場には多くの観客が訪れた.

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蒸し暑い6月の終わりの金曜日.
サポーズデザインオフィスの3階はまだエアコンがなかった.今でもその当時の蒸し暑さが思い出される.結果的には,この数ヶ月後にはエアコンが設置されたのだが,当時の谷尻誠さんはこの会場にエアコンを入れるべきかどうか割と真面目に考えていた記憶がある.それは,できるだけ「素のまま」解体しただけの3階フロアに現代的な設備を入れることへの躊躇だったのだろうと思う.それだけ「何もない」空間に留めて置きたかったのかもしれない.さて,そんな蒸し暑い空気を,もちろんそれはまだ3回目というこのトークイベントへの観客のただならぬ期待感のもたらす熱さでもあったのだが,開放された窓から時折そよぐ夜風の心地よさとシンクロするような安東さんの柔らかく凛とした声が満たすのだった.
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現代日本建築におけるテキスタイルのパイオニア

谷尻誠さん(以下,谷尻):
ちょっと会場の皆さんに聞きたいんですけど,今日は建築関係の人ってどれくらいいますか?

(あまり手が上がらない)

谷尻:
ああ,思ったより少ないですね,却っていいですね.安東さんを知っていただくためにはその方が好都合ですね.さて,今日のゲストは,テキスタイルデザイナーの安東陽子さんです.安東さんは今はいろんな建築家の人からその建築で使われる布のデザインを依頼されている,いわばこの分野のパイオニアのような方です.僕も以前から何か一緒にプロジェクトをやりたいと思っていて,やっと最近の現場でそれが叶うことになり,その縁もあって今回このTHINKに来てくださいとお願いをして,お越しいただきました.今日はよろしくお願いします.

安東陽子さん(以下,安東):
よろしくお願いします.ちょうどひと月前にこれまで勤めてきたNUNOという会社から独立したんです.もちろん,今後もまだNUNOとの仕事は続きますが,自分のデザイン事務所を立ち上げたところです.

安東:
それで,まずはなぜこのような仕事をするようになったのかというお話をしますと,私はもともとグラフィックデザインを専攻していて,よくあるように子供の頃から絵を描くのが好きだったので,それで漠然とデザイナーに憧れて美大へ入ったんです.それで,学校を卒業した後で,友人からNUNOという会社を紹介されて,NUNOという会社は,小さいですけどオリジナルの生地を作って,服飾雑貨やもちろん洋服なんかを作って,六本木のショールームで販売するということをしていたんですね.そこで絵を描くアルバイトを始めたんですね,それが始まりです.

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