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二次元のアイドルグループコンテンツについての仮説形成-1「アイマスから続くモデル構造」

※注意
あくまで初歩的な仮説形成、個人の見解の範囲を出ませんので、文献としての力はありません。異論や反例などは十分ありえると思われるので、その前提でお願いします。
もし、定量、定性的分析をしてくださる方がいればぜひお願いしたい。

 2010年代から連綿と続く「アイドルグループ」を題材としたメディアミックスコンテンツにはいくつかの型に沿っている、つまり類型化できそうな要素が揃っていると考えられる。そこで代表的な例を挙げながら、そのことについて考えていく。
 2010年代以前と明確に分けられるのはアイドルコンテンツのメインが「ソロのアイドル」から「アイドルグループ」のコンテンツへと推移していったことだろうと思える。確かにそれまでとは一線を画すものの、アイドルの活動を通してのグループの成長だけでなく、その中での個人の成長にスポットが当たるのはそれまでと変わりがないとも言える。
 黎明期とも言える時期に生まれたのがアイドルグループコンテンツの金字塔、「THE iDOL M@STER」だ。実はこの作品の最初期に当たる「765プロ」の構成自体がのちのアイドルコンテンツに大きな影響を与えたのではないかと私は考えている。
 まずグループ内の中心人物にあたる人の特徴についてである。

765プロの中心人物といえば、ご存知の方も多いと思うが、天海春香という少女。おさげ髪、頭のリボン、よく転ぶなどなどの特徴はある彼女だが、実は至って普通の女の子という形容詞が物語の中ではつく。
 しかしこの普通の女の子であったはずの天海春香から続く系譜がアイドルコンテンツ内での中心を担う人に受け継がれていく形になっているという仮説を考えた。
いわばそれがアイドルグループコンテンツでの「主人公の型」とも言えるものになる。
 中心的に描かれる存在として類するのは同じアイドルマスターシリーズの中ではシンデレラガールズの島村卯月、ミリオンライブの春日未来、ディアリースターズの日高愛、シャイニーカラーズの櫻木真乃など。他のコンテンツでは、ラブライブ!での高坂穂乃果、ラブライブ!サンシャイン!の高海千歌、TOKYO 7thシスターズの春日部ハル、IDOLY PRIDEの川咲さくらなど……
私なりの類似点をそのまま書き出していく。

・イメージカラーや髪色が暖色系(赤が主)
・大事な時に論理よりも感情で動くケースがある。
・ポジティブ思考が強い
・何事にもひたむきな姿勢があり、芯が強い
・時に情熱的な行動や言動をとる
・仲間やその中の和を大事にする
・よく笑う
・グループの中では比較的正統派に近い

これらの印象の多くは視聴者が感じ取る要素として強いワードではないだろうか。
 いずれ調査するとしたらいくつかのユーザーに鑑賞をしてもらい、それぞれの印象を書き出してもらうことで分析ができそうだ。

そして暖色系があればそれと対になる寒色系を持つ少女も登場する。
特徴としては

・イメージカラーや髪色が寒色系or黒(青が主)
・論理的に動く傾向があるが、我が強い
・練習にはストイック、完璧主義
・クールで冷淡な印象を持たれやすい
・初期の方ではライバルや仲間との比較をよく考え、時には他の子やプロデューサーに異議を申し立てることがある
・普段から1人になりやすい傾向
・普段は無表情に近い

 765プロには如月千早がいるが、これに類する存在も他コンテンツにはいる。
渋谷凛、最上静香、水谷絵理、風野灯織、園田海未、天堂寺ムスビ、長瀬琴乃……(サンシャインでのメイングループ、Aqoursの渡辺曜はこの分類には当てはまらないと考えられる。詳しくは次回に持ち越すが、これはむしろサンシャイン以降のラブライブ!というコンテンツの独自性を表していることを示唆する。)
 この暖色系少女と寒色系少女の対比を中心に物語を考えていくのが近年のアイドルコンテンツでよく見られる手法なのではないかと言える。(上記に挙げた作品以外だと,ゾンビランドサガでの源さくら、水野愛やプロジェクトセカイのMORE MORE JUMPの花里みのり、桐谷遥の2人などがある。)
 
この2人は決して最後まで対立関係で描かれるわけではない。
決して友情というものが同じような性格を持つもの同士でのみ発生するわけではないように、対立関係を経てから同じ事務所、同じグループ内で刺激を受けながら、互いの良いところを理解しながら高めあう関係へと発展していくことが描かれていくことが多い。
 どちらかというと、「寒色系少女が暖色系少女から受ける影響が顕著に描かれる場合が多い傾向にあるというのではないか」という仮説を立てておくが、これはシナリオライターなどがどういう物語を描くかで割と分かれやすいため一概に言えない。
 そしてアイドルマスターではこれに加えて、3人目の少女を用意することが多い。(俗に言う信号機) 765プロだとかつては萩原雪歩だったものの、アイマス2以降のアニメなどのコンテンツでは星井美希を3人目に取り上げる例が強い。
 アイドルマスターの他コンテンツではこの系譜として、本田未央、伊吹翼、八宮めぐる、かなり特殊な例ではディアリースターズでの秋月涼などがある。
主な特徴としては

・イメージカラーや髪色が黄色または緑色系など
・フレンドリーだったり、社交的な印象が強調される。
・自分のペースに相手を巻き込んでいくことで楽しむような印象
・才能型な傾向にある。
・スキンシップが多い

アイマスは基本的にこのような型にはまった3人を中心とする構図が必ずどんな形でもある(SideMなどでもある)ものの、他コンテンツなどを見ると実はこの例が必ずしも踏襲されるわけではない。
 ラブライブ!には南ことりという例があるが、前述した他のコンテンツ、例えば「Tokyo 7th シスターズ」(以下ナナシス)の角森ロナのように内気で努力型という、765プロでの萩原雪歩のような型の少女を取り上げるような形や「IDOLY PRIDE」(以下アイプラ)のように寒色系と暖色系の2人のみを中心に据える場合(それぞれを2つのグループに分けて、そのリーダーを川咲さくら、長瀬琴乃に任せる)もある。
 これ自体はアイドルコンテンツとしての個性の見せ方、コンテンツとしてどういう物語を見せるかと考える中で、そのためにどういうグループを作るか、さらにそのために中心にどういう少女を何人据えるのかというモデルを作り上げる中での違いがある。
 ただ多くの例でアイマスの作り上げた暖色系、寒色系の系譜のような中心を描く例が多いことから、アイドルマスターの影響力というものは未だなお大きいということが考えられる。加えて、他のキャラクターも性格や年齢などの面で類型化しやすいものが何個かある。

・内気な性格枠(765プロの萩原雪歩、μ'sの小泉花陽、ナナシスの角森ロナ、アイプラの白石千紗、兵藤雫など)
・大人枠(765プロでの三浦あずさ、シンデレラの346プロの川島瑞樹や高垣楓など、アイプラでの佐伯遙子、ナナシスでの晴海サワラ)
・双子あるいは姉妹枠(765プロの双海姉妹、346プロの城ヶ崎姉妹、283プロの大崎姉妹、Aqoursの黒澤姉妹、ナナシスでの晴海三姉妹、アイプラでの白石姉妹など)

などの個性ある型からキャラクターを作り上げる例はどこのコンテンツでも存在する。(ここら辺はまた個性ある分類ができるため、別でお話ししたい。)
 特に今回挙げたこれらの型などはアニメで主役を張るような回での話が書きやすい(喧嘩や失敗などの負の側面から新たな成長を描きやすい)ことやキャラの個性が立っており取り上げられやすいと感じる部分が多いのではないかと考えられる。

さらにこれだけでなく、765プロから続くアイドルグループのコンテンツの型となりそうな要素が存在する。
 まずは年齢層である。中心となるメンバーが16歳や17歳の高校生でそこから±4歳くらいまでが構成される年齢層の範囲となる事が多い。21歳や20歳だとその事務所やグループの最年長枠となりやすく、最年少でも12〜13歳となるのが傾向としてある。
 次が人数の規模である。765プロは最初には9人で始まっていて、その後にアイマス2の設定がポピュラーとなって、アニメなどでは12人で取り上げられるようになったが、この大体9人から15人前後のグループのまとまりが一個の基準として事務所が作られて、さらにここから2〜5人に分けられて、事務所内ユニットとして活動する単位となるモデルを受け継ぐ例は他のコンテンツでも多い。
 765プロではゲームシステムとして3人のグループを選ぶような形がとられていたり、アニメ版でも竜宮小町といった事務所内でのユニット分けが取り上げられる。
 少しでもアイドルマスターを知る方はシンデレラガールズはもっと大人数で構成されているのではないかと思われるが、アニメ版では中心となるシンデレラプロジェクトのメンバーが14人で形成されており、ニュージェネレーションズ、LOVE LAIKAなどのグループにも分けられているため、実はこのモデルが当てはまっている例もある。
 これ以外にもμ'sやAqoursなどは9人、ナナシスの中心グループの777sistersは12人であり、その中でユニット分けもなされていたり、アイプラでもアニメでは事務所である星見プロの在籍アイドルは10人であり、それが二つのグループに分けられている。

ただ、このモデルは「アニメ版」という前提を基にした場合にのみ、ほぼ基本となる型だといえる。
 シンデレラガールズはソーシャルゲームの中ではより多くのアイドルたちが取り上げられるし、スマホ版のソーシャルゲームだと、765プロも新たなメンバーを追加した新プロジェクトを取り上げるミリオンライブがあり、これは新たに39人のアイドルを取り上げている。283プロという新たな事務所を舞台とした完全新作、シャイニーカラーズは当初は16人のアイドル、4つのグループだったものがアップデートを経て現在は25人、7つのグループにまで拡大している。
 ナナシスでも事務所には777sisters以外のアイドルも多く在籍するし、アイプラはソーシャルゲーム版では扱うユニットが増える。

ここで述べたように、メディアミックスを主軸とするコンテンツの中でアニメ版とゲーム版では、同じコンテンツでもこれらの人数のモデルを考えるときに多くのズレが出てくることがわかるだろう。

 ゲームとアニメのメディアの違いがこのように人数などの構造に違いを生み出していると考えられる。
 アニメは1クール12話、長くても2クールで24〜25話で全部合わせても1クールで300分か2クール600分ほどのため、区切りがあるということからも必然的にゲームよりも話の質が求められる。グループや事務所の成長の話に加えてそれぞれ個人にフィーチャーした「誰々の回」のような話も作ることを考えると必然的に取り上げることのできるメンバーは少ない。
とすると9〜14人のグループなどが収まりが良くなる。
 しかしソーシャルゲーム版ではより長い期間でストーリーを提供することが必要になり、そのための運営としての利益を考えると、多くのユーザーに遊んでもらうということ、そのために多くのキャラクターやそれを使った多彩なストーリーでのファンの獲得は一つの方法になると言える。質を重視していないということではないものの、アニメ版よりも数自体がとても多くなるのは傾向としてあると思われる。

さらにさらにこれ以外だけでなくライバルユニット、ライバル事務所を取り上げるものもある。古くは初代アイマスの961プロ、プロジェクトフェアリー(星井美希、四条貴音、我那覇響)や玲音から始まり、アニメ版アイマスでのJUPITERやアニメ版シンデレラガールズでの346プロ内の他プロジェクト「Project:Krone」、ナナシスの4U、KARAKURI、AXiS、アイプラのLiznoirや「TRINITY AiLE」といったユニットが該当すると言える。
これらを使う目的としてはライバルとのステージでのぶつかり合い、それぞれの哲学、考え方の衝突から見える新たな考えや考えの補強、自らの成長などが上げられる。
以上のことから類型化できることは

・暖色系の少女と寒色系の少女を中心に据えている(アイマスでは緑黄色系も含め3人)
・アニメなどでは内気枠や大人枠、姉妹枠、才能型枠などの他のキャラクターを合わせた10人前後の事務所や中心グループを構成。それぞれの成長とグループや事務所としての発展を描く。
・ゲーム版ではより拡大して多くのキャラクターの採用や多彩なストーリーを描く。

ことが言えるのだが、実はとある大きなコンテンツはこれの例とは大きく違うモデルを描いているという仮説が立つ。そう、「ラブライブ!」である。

次回はラブライブについて考える。

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