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カメラの上達を「関数」の視点から考える

いつも世界の仕組みを知りたいと思っています。もっと詳しくいえば自分を知りたいということかもしれません。
夕焼けを見て胸の辺りざわつく感じ、作品を見て感動したとき、音楽を聴いて昔を思い出すとき、「どうして自分はこのような感情を抱くのだろう」と考えます。

自分はテーマの一つに「情報を正しく伝える」というものを掲げています。この「情報」について自分は主に「感情」を想起することが多く、仕組みを知りたいと言う思いは感情を効果的に伝えられるメカニズム・能力を身につけたいという気持ちになるのでしょう。

とはいえ物事の仕組みを理解するのは単純ではありません。自分は好奇心が強いことからさまざまなことに挑戦しては挫折してきました。
昨今ですとこの状況にAIが追い打ちをかけてきます。文章生成、画像生成、音楽生成と、自分にできないクオリティの創作をたくさん出してくるじゃないですか。

無力感に一時期落ち込みましたが、人間をまねたAI(機械学習)がここまでスキルアップできるということは、裏を返せばAI(機械学習)の機序を真似れば人間もまた効果的な学習ができる可能性があるといことです。2022年後半自分は常にこの考えに取り憑かれており、行動経済学・脳科学・進化論・進化心理学・データ分析・プログラミング設計などさまざまなの本から物事の仕組みを理解する方法を模索しました。

そうしてたどり着いた答えが

  • 変換前のデータ(入力)

  • データを処理する機構や我々のアクション(関数)

  • 変換後のデータ(出力)

として物事を捉える関数的な思考です。

機械学習やフロントエンドプログラミングでは頻出の入力→関数→出力ですが、馴染みのない方が目にすると少々面くらう内容かもしれません。
というわけで、今回は筆者が年末年始に取り組んでいて今一番興味があるカメラを例にとって話を進めます。

本来は「物事を関数として捉える」というnoteから公開する予定だったのですが筆者の能力の関係からまだまとめきれておらず、先行してテーマを「カメラの上達」に絞り執筆することとしました。まだ思考が発散しており、至らない点があると思いますのでお気軽にコメントいただければ嬉しいです。

カメラの上達とは

そもそも、カメラが上手い状態とは何を指すのでしょうか。真っ先に思いつくのは「頭に思い付いたイメージをカメラを用いて再現できる」ことです。
SNSやギャラリー、写真集などを見て私たちは憧れ抱きカメラを用いて写真を撮ります。
好きな雰囲気の写真をある程度取れるようになったら少し上達したと言っても良いかもしれません。

人によっては目的が異なるでしょう。なんとなく心に響く写真を撮りたいという人も多いと思います。私もその1人です。
その場合「写真を撮って鑑賞者に良い感情が生まれる」のであればそれがゴールとなります。
この「良い感情-心に響く写真」を突き詰めていくと、おそらく言語を媒介して考えるようになるのではないでしょうか。「暖かな家族の団欒」「静謐で寂しげな雪林」「雄大で穏やかな海」など、より詳細な心の響きを考えていくはずです。

まとめると

  • 頭に思い付いたイメージを写真に再現できること

  • 頭に思い付いた言語などの感情を写真として再現できること

ことがカメラの上達といえるのではないでしょうか。
そしてこの目的達成のために関数的な思考が有効だと筆者は考えています。

カメラを関数として捉える

早速カメラを関数として捉えながら上達法を考えていきます。はじめに完成図です。

鑑賞する方に特定の感情を想起していただくために、写真撮影で関係する主なパラメータ(変数)とその結果をあらわしたものです。

いきなり詳細の図を見てもわかりにくいので、少しずつ具体化して考えていきます。まずもっとも簡単なカメラ関数は以下です。

被写体がカメラによって撮影され写真となります。
撮影と一概にいってもただシャッターを切るわけではありません、私たちはカメラにまつわるさまざまな設定を行なってから撮影に臨みます。

レンズを変えたり、カメラ本体の設定値を調整することによって出来上がる写真が変わります。このように設定できる変数・パラメータはカメラ側だけではなく撮影対象にも存在します。

写真の重要な要素として被写体、光の方向、構図などが挙げられるでしょう。

被写体などはさらに細分化できますが、一旦この程度に留めておきます。
こうしてみると上図から写真は
20個ほどの変数によって決定される画像データ
だと考えられます。撮影の内部メカニズムは基本的に光や信号変換の物理法則の上に成り立つので変わりません。
つまり、頭の中の画像イメージを写真として再現するにはその画像イメージに対するパラメータを再現すれば良いと考えられます。

これが、カメラが上達した状態として挙げた「頭に思い付いたイメージを写真に再現できること」につながります。

写真の上達方法を考えてみる1:頭に思い付いたイメージを写真で再現する

つまり、「好きな写真がある・撮りたい具体的なイメージがある場合」にはあらかじめその写真とそのパラメータを洗い出しておけば、自分でも狙った絵が撮れるということです。
見方を変えるとこれはカメラの講座、特に風景写真の指導で見られる手法だと思います。一流のフォトグラファーに指示をもらい、間違いのないポジション・構図・レンズ・絞り値・シャッタースピードでクオリティの高い写真を撮る。

こうした行動を続けていくと私たちの脳に写真とパラメータの関係が作り出され、少しだけ抽象化されたイメージとそのイメージのための設定値が想起されるようになってくるのではないでしょうか(撮影モード:絞り値優先、絞り値:2.0~3.0、光:逆光orサイド光…など)。
筆者はまだカメラ初心者なのですが、ポートレートに関してはこのような結びつきが少しずつ出来上がってきました。

しかし、このままだと上達にいくつか問題が生じます。
一つは脳内の画像イメージに対して全てのパラメータがパッと決まるものの、なんとなく想定と違う際にどのパラメータを動かせば良いかがわからなくなることです。
何か違う、あるパラメータを変更する、出来上がったイメージも何か違う…という試行錯誤のうちにシャッターチャンスを逃してしまいます(筆者です)

このパラメータの調節方法上達については後ほど考察するとして、一度カメラの関数化を進めていきます。

写真を関数として捉える

写真は鑑賞者の目に入ることによって感情が生じます。つまり先ほどの図は完全ではなく以下のよう変更できます。

感情は感想や言語的なイメージに置き換えられます。つまりこのように捉えるメリットとしては、画像的イメージだけでなく言語を起点としたパラメータを考えられるようになることです。

写真の上達方法を考えてみる2:頭に思い付いた言語などの感情を写真で再現する

まずは前提として「写真の上達方法を考えてみる1」におけるたくさんのイメージと対になるパラメータの記憶、もしくはイメージからパラメータを想定できるようになる必要があります。

次に言語化です。写真から抱いた感情を言語化します。

少し恣意的ですが、

  • 和風な雰囲気がどこか懐かしさを感じさせる。人と煙が相まって暖かさが感じられる

  • 日が沈み夕焼けによってどこか悲しく暖かい気持ちになる。遠景によって雄大さを感じる

  • 香ばしい香りと湯気、出来上がったコーヒーによって一息つけそうな落ち着きを抱く

のような感情を抱けそうです。
この二つの回路は写真を媒介して繋ぐことができ、感情から撮影用パラメータが決定される回路が出来上がります。

こうして、

  1. 何か伝えたい想いなどが思い付いた際に写真が想起される

  2. イメージに近い写真が選択できる

  3. 写真からパラメータを設定できる

といった手順で撮りたい写真が撮れるはずです。

写真の上達方法を考えてみる3:パラメータ調節の上達方法を考える

良い写真を撮るためのパラメータ決定方法を、最終的に出来上がる写真イメージ、そしてその感情から見てきました。
まとめると以下のような図になるでしょう

しかし、私たちは世にある素敵な写真をそっくりそのまま真似たいわけではありません。
写真を撮るとその撮った写真そのものに違和感を持ったり、もしくは「もう少し〜な印象を」という言語的な感情を抱く場合があります。

現在の問題として上がっていたことが「パラメータと脳内の画像イメージをそのまま結びつけているからパラメータをどう調節したら良いかわからない」というものでした。
この点について、現在脳内イメージだけでなく言語からも考えられているため、感情・言語からパラメータへの結びつきを作成することができます。

例えば、「安定感のある、被写体が際立った爽やかな写真を撮りたい」という思いがあったとします。なんとなくイメージが浮かびパラメータを調整します。次にパラメータを調整するフェーズに入った際、「安定感に作用するパラメータは主に構図・被写体を際立たせるには焦点距離(によるボケ味)・写真の印象であれば色温度」と考えられれば効果的なパラメータの変更ができるはずです。

こうして脳内の画像イメージを経ず、さらに調節すべきパラメータに目星をつけられるようになります。

しかし、これらの結びつきを得るのは容易ではありません。
有効な手段としては参考書を読むことなどが挙げられるでしょう。
例えば、

勢いのある滝の流動感を表現する
白い筋を残すと滝の勢いが表現できる
滝の流れに最適なシャッター速度は1/4~1秒

完全版 写真がもっと上手くなるデジタル一眼 撮影テクニック101+ P046

というような文章を読むことにより
・言語イメージ:勢いのある滝
・シャッター速度:1/4~1秒
という知識の結びつきが出来上がり、読む前より調整するべきパラメータと調整する幅の目星がつきやすくなります。

画像編集を関数として捉える

感情・言語・画像イメージに基づいたパラメータ調整は撮影時だけではありません。私たちは撮影後に写真をレタッチすることができます。

写真そのものもまたパラメータの集合体です。被写体や構図は変えられませんが、イメージに基づき明るさや色味、ディティールの修正を施すことができます。

こうしてみると撮影時にこそ気をつけるべきこと、後から調整を施せるためそこまで気にしなくて良いことなどを分けて考えられそうです。

まとめと創作のむずかしさ

まとめると最初にお見せした以下の図が出来上がります。

そして、写真の上達方法は

  1. 脳内画像イメージと各種パラメータの結びつきを作る(Step1)

  2. 言語とイメージの結びつきを作る(Step2)

  3. 言語とパラメータの結びつきを作る(Step3)

という3つの要素に落ち着くと筆者は考えました。それぞれの結びつきや変換できる仕組みを作ることができれば、理論上良い写真を撮ることができるはずです。

とはいえ、現実問題とても難しいのも事実です。
創作は実際の「関数」のように入力側から出力側に進むものではありません。頭の中に浮かんでいたイメージは、ファインダーを除くと一気に具体化され変わってしまいます。スナップ写真などは被写体が目に映ることによって後から脳内イメージが固まることも多いでしょう。

一方でさまざまな変数が存在し、それら全てがカメラに取り込まれ写真に変換される事実も変わりません。
パラメータを列挙することはまず写真に関連するパラメータを認知することにつながります。パラメータとして認識していれば私たちの変更対象になりますが、パラメータの存在すら知らなければいつまでも望み通りの写真には辿り着けないでしょう。
また、特定のパラメータとイメージの関連付けを行えれば自分のたどり着きたい写真への近道ができます。最初から全てのパラメータを自由に使える必要はなく、最初はStep1を用いてイメージからざっとパラメータの初期値をセットし、その後自分の好きなテーマとそれに強く関連するパラメータを覚えていけば楽しく自分の好きな方向へ成長できるのではないでしょうか。

筆者もまだカメラを学び始めたばかりですので、今回作成したモデルを参考にどんどん勉強を進めていきたいと思います。とりあえず、まずは好きな写真家さんの写真収集と分析から…!

参考文献

画作りの名著です。良い画の理由を細かく説明してくれます。

被写体、構図やレンズによって想起される感情が詳細に記されています。


カメラはこれで勉強しています。説明がわかりやすいのはもちろん、撮影条件が掲載されており再現しやすく良いです。


以下の書籍はまた「物事を関数として捉える」公開時に詳細お伝えできれば嬉しいです。


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