保育士の私が子どもから教えてもらったこと…その2(『自分で歩く!』)

※名前は仮名です。

アケミさんは二分脊椎という診断で、歩行が不安定な子どもさんでした。実際、良く転びましたし、ご本人も怖がってお母さまから離れるのがとても不安に感じるようでした。

ある日のこと、とても天気が良くクラスで散歩に出かけました。園外に出る時は、2対1の対応(園内では基本3対1)になりますので、園長先生や主任の先生も同行します。担任は、特に対応に配慮が必要な子どもに付くため、私はアケミさんと一緒に歩いて行きました。
おひさまが暖かく、風も穏やかなひととき…自然の優しさに助けられたのか、アケミさんはいつになく表情豊かでした。途中の公園でベンチブランコに誘っても(しっかりと手を離しませんでしたが)嫌がらず、揺れを受け入れていたので『今日のアケミさんはちょっとちがうな』と感じました。
帰り道は緩やかな上り坂でした。ずっと手を繋いでいて汗ばんできたので反対の手にしようと『アケミさん、手を反対にしましょう』と声をかけた時です。
『自分で歩く!』
そう言って手を振り払って歩き出しました。
アケミさんの障がいは自分の気力や頑張りでどうにかなるものではありません。とても危険でした。ですが、私はいつでも支えられるよう側にいて一緒に歩いて行きました。坂を登り切ったところで『アケミさん、坂道を1人で歩けたね。』と話しながら、振り返って登ってきた道を指差し、一緒に見ました。アケミさんは満面の笑みでした。
今回は危ないからという理由で止めなかったし、歩いている途中『頑張れ』などの応援もせず、ただただそばで見守りました。私は転びそうになった時に大きなケガにならないよう支えるという支援に徹しました。歩き終わった後、一緒に登ってきた道を振り返ったことでアケミさんのチャレンジを共有でき、嬉しさのお裾分けをもらえた気持ちになりました。アケミさんの『自分で歩きたい』という思いを支援できて良かったです。

保育士は、ただ《遊んでいる》ように見えるかもしれませんが、子どもの発達に応じておもちゃや遊ぶ内容・設定を考えます。《声の掛け方》も大切な環境。常に子どもたちに声を掛けて一生懸命関わる保育士が良いとは必ずしも言えず、時にはあえて関わらず見守る場面も大切だと考えます。子どもの行動には必ず理由があります。何故そうするのか?その行動にはどんな思いがあるのか…
保育士はとことん考え、その子どもから学びます。
他人に害を及ぼしたり…と、時にはきっちりと止める場面もありますが、それは害を及ぼす前の段階で何かできることがなかったか、その子どもの思いから保育士が学ぶきっかけになるのです。

アケミさんから学んだこと…子どもの気持ち(願い)をスタートにして支援を考えていく。

最後まで読んでくださいまして、ありがとうございました。



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