見出し画像

smc PENTAX-F 35-80mmF4-5.6について

 先日買って使ってみたらずいぶん気に入ってしまったsmc PENTAX-A 35-70mmF4なんですが、「そういえば安物だけど意外によいって聞くレンズが他にもあったな」と思いだして、表題のものを買ってみました。
 このレンズがZ-50Pについて、2CR5が入って1280円。単品で買うより安いくらいでは……。
 つまり、それくらいの扱いのレンズですね。

 ズームレンズは、ズーム倍率が大きくない方が、開放F値もあまり明るくない方が、画質的には無理がないものです。PENTAXのAFレンズの中では、最も低倍率で暗い標準ズームレンズ。(倍率についてはDA20-40mm Limitedがありますけどまあ置いといて)
 スペックを欲張らないからシンプルに設計できて、構成枚数も6群7枚と少ない。
 果たしてどれほどのものか。

スペックなど

 最短撮影距離は0.4m。まあまあ寄れる。
 最大撮影倍率は、APS-CのK-70で長辺に14cmほどを写し込めたので、1/6倍くらい。マクロ的とはいえないけど、多くの撮影には困らない程度。

 中村文夫『使うペンタックス』によると、最大径65mm・全長58mmと非常にコンパクト、重量もわずか185g。フィルター径も伝統のΦ49。
 専用バヨネットフードはつけるところがないので、つけるならねじ込み式。

 レンズ構成は6群7枚。アメリカのパテントでレンズ構成も見られます。シンプルにまとめた2群ズーム。古いレンズの流用ではない新設計です。
 ズーミングによる全長変化は、ワイドで伸びて50mmで最短になってテレでまた伸びるタイプです。

 パテントにある開発者名が平川純氏。あのFA Limitedレンズの開発者の手によるもの。あの名匠の作品が数百円から買える……といえばドリームが膨らむかな。

実写

画像1

 広角端35mm、F6.7。
 ファインダーの中だと「だいぶ歪曲収差がある」と思えてたのに、撮った写真を見るとそこまで曲がってる感じでもない。あれ? ファインダー系との相性とかかな?

 解像力は、中央は十分シャープな感じ。
 ただAPS-Cで、少し絞ってるF6.7でも周囲が若干甘くなるのは見える。フルサイズだともっと甘くなるかも。

画像2

 これは52mm・F4.5。
 中間域は歪曲収差はほとんど感じられませんね。
 等倍で見てもやはり解像力不足な感じはなく、なかなかいい感じ。
 蛍光灯の縁にブルー・パープルのフリンジはちょっと出ます。上の縮小サイズなら全然わからないレベルですが。

画像6

 テレ端・F5.6。
 まあ開放になっちゃってるので、周辺にいくと甘いのは見えますけど、中央は十分シャープ。歪曲収差もほとんどない。

画像5

 夜に使ったって、まあそこまで酷いことになるレンズでもなし。まあ暗いから使いにくいんですが。53mm・F4.5。

画像12

 強いハイライトがあるカットなんですが、ここは色ズレとかも出ずに綺麗に写ってる。

前ボケに少しクセあり

 ちょっとクセが目立ってるな、と思ったのは、テレ端で開放で撮ったときの前ボケ。

画像7

 上の写真に写ってる、サギを等倍で見るとこんなん。
 テレ端開放だと、ちょっとだけ前ボケしたところに球面収差が出て、こんなほんわりした写りになるみたい。

 ちょっとピンぼけが苦手なレンズ、たまーに見ますね。ミノルタAF80-200mmF4.5-5.6なんかもそうだったはず。

画像6

 こういうカットでは、画面下半分のちょっと前ボケなところがほわほわ。noteの画像サイズじゃわからんかもですが。

画像7

 拡大するとこんな。

画像8

 同じ場所で、少しだけ絞ってF6.7で撮ったカット。だいぶすっきり。
 ただ、ピント位置がこっちのほうが手前だったみたいで、前ボケ自体が減ってスッキリ見えるだけかもですが。

画像9

 全然正確な比較になってませんが、F6.7でホワっと感は低減されてるように思います。もっと絞ればもっと減るでしょうし。

 ちょっとピンぼけが弱い、というのは、狙ってボケさせてないときに出てしまいがち(上のサギなんかまさに)なので、遠目を撮るなら絞るようにするのが好ましい使い方かな。

画像10

 近接域だと被写界深度が浅くなって、「ちょっと前ボケ」という部分が減るので、あんまりアラは気にならないかな。気になるシーンもあるかもですが。
 これはF6.7で、暗いためにボケ量自体が少ないものの、なかなか前後ボケともにきれいな感じ。

画像11

 開放だと後ボケがうるさくなってる感じがするなあ。
 ボケに球面収差がちょっと残るとボケ味がよくなるらしいんですけど、前ボケがそうなってたら後ボケが二線ボケになっちゃうそうです。これがそれっぽい。(このへん参照のこと)
 近接でもF6.7くらいが美味しいところかな。

まとめ

 35-80mmの狭いレンジにF4-5.6と暗いだけあって、超コンパクトで悪くない画質にまとまってます。焦点距離のレンジはともかく、画質だけなら別に今使ってもダメってことはないレベル。
 「ちょっとピンぼけしてるところが弱い」という点くらいしか、目立つようなアラはなさそうです。
 ただ、こういう方向の無難な良さであれば、今のレンズ、DA18-55mmとか使うほうがいいじゃない、となってしまうのも否定できず。

 私が最近絶賛してるsmc PENTAX-A 35-70mmF4は、アラが出るときは強烈に出る癖玉でもあって、だからこそ今使うと面白くて気持ちが良い。
 当時の、より良い写りを目指すレンズづくりの進歩の中では、こういう癖玉よりも、F35-80mmF4-5.6のようなアラの少ないレンズのほうが、良い設計とされるようには思います。
 それが30年近くの年月が過ぎてしまうと、より良い写りのはずのF35-80mmのほうは「意外とよく写るね」で終わってしまって、癖玉のA35-70mmが面白いといわれてしまう。まあ30年後に中古で3000円で買う奴のことなんか誰も想定しませんが。

 また、「使ってて気持ちが良い」というのは、使う人の思い込みによるところもあります。
 F35-80mmも、「あのFA Limitedを作り出した匠・平川純氏の手によるレンズだ!」というところから入ってたりしたら、好意的なドリームを抱いて好意的にこのレンズを好評価できるかも。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?