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「COVID-19」が「日本」に与えた数多くの影響

 混乱で始まり、混乱のままでこの一年が終わろうとしている。
英国では、新たに見つかった新型コロナウイルスの変異種が発見され、ロンドンとイングランド東部および南東部は、12月20日から再びロックダウン状態に置かれた。
世界各地で、再度ロックダウンを行い、国境封鎖等を厳格に行っている。
もはや、特にヨーロッパ諸国は、完全にパニック映画の世界そのものだ。
 日本は、10月30日に入国制限の追加緩和策を発表したものの、国内感染者数は日々増加の一途を辿り、全国の重症者が最多更新し続けた。
そのため、やり玉となった一つ「GoToイート」は、11月27日に予算切れで終了し、もう一つの「GoToトラベル」は12月28日から翌年1月11日まで、全国一斉に利用を一時停止する事となった。
とはいえ、この「GoToトラベル」の利用者は数多く、様々な場所に人が赴き活気を取り戻した。
当然、反対の声は数多く上がるが、多くの人々が「GoToトラベル」を利用しているのは事実であり、反対の声が圧倒的多く報道されている内容と現実とは大きく乖離していた。
ネットのアンケートを見ると、「GoToトラベル」の反対が多数となっていたが、実際に京都に足を運んでみても、大阪の「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」や難波の街中を見ても、明らかに数多くの観光客が訪れていた。
各旅行予約サイトの予約状況をチェックしていると、好条件のものから次々と予約され、翌日にはあっという間に選択肢が無くなっていく。
「GoToトラベル」は、多くの人達に受け入れられていた。
そして、年末年始を控えたこのタイミングで「GoToトラベルの緊急停止」をする事によって、多くの人たちが不幸になった。
旅館やホテルなどの宿泊業は、食材の手配や人員の確保等の手配や段取り等全てが予定と異なり、混乱し困りきっていた。
年末年始には、有名芸能人のカウントダウンライブや、日本各地において数多くのイベントが開催される。
札幌では、有名な「雪まつり」が毎年の恒例行事だ。
除夜の鐘に初詣と、お寺や神社に出かけたりする方も多いだろう。
「紅白歌合戦」は無観客で開催されるが、熱烈なファンは会場前まであしげく通って、少しでもお目当ての芸能人の顔をひと目でも見ようとしていた人もいるだろう。
これら全てに、当然のごとく大きな影響を与えることとなる。
では、今回の「GoToトラベルの緊急停止」は、
「正しい選択」だったのか、それとも「間違った選択」だったのか。
何れにせよ物事には、必ず様々な側面が存在する。

「GoToトラベル」を実施することで、経済は回った。
同時に「COVID-19」の感染拡大の要因だと騒がれた。

 2020年12月15日時点において、ネットや報道では「政権支持率の低下」を意識したのではないかと、一部では邪推されている。
「政権支持率の低下」だけに絞っていえば、「GoToトラベル」を「実施し続ける」を選択しても「停止をする」を選択しても、いずれにせよ「政権支持率は下がる」のだ。
しかし、どちらを選択しても、「政権支持率が下がる」のであれば、確実に「経済効果」がある事が判っている「実施し続ける」を選択したままの方が「メリットが有る」という事ぐらいは、当然スマートな彼らは判っている。
しかし、今回はその「メリット」を捨てて「デメリットしか無い方を選択」したのは、我々が想像するよりもとても根深く、かなり複雑な物事が数多く内在しているからだと私は考える。
重要な決定する立場の人にも、「COVID-19」によって様々な影響が出ている事を決して忘れてはならない。
彼らは我々より豊かな生活は暮らしているかもしれないし、もちろん大きな権力を持っているだろうが、その分「COVID-19」によって、とてつもなく多く、そして桁違いに大きな影響を我々より受ける事となる。
私も含め、みんな身も心も疲れ果て、神経を摩耗し、ヘトヘトの状態だ。
今の私たちは、「特殊な環境下」で生きているのだから、様々な影響を受けたり、心身ともに摩耗したりするのは「全員平等」だと言うことを見失わないで欲しい。(もちろん、怒りをぶつけたくなる気持ちはよく判る。)

 今回の「GoToトラベルの緊急停止」について、視点を変えて見てみたい。
11月10日の記者会見で、「GoToトラベルキャンペーンを利用した人のうち、新型コロナウイルス感染が確認されたのは11月9日時点で131人だったこと、7月22日の事業開始から10月15日までの時点で利用者は少なくとも、延べ3138万人だった」と発表され、11月26日時点では「利用者数は延べ4000万泊を超えてるのに対して、感染者は202人に留まる」と発表された。
これらの数字に対して、やはり正確性に欠けるという声も多く、様々なところで論争の種となった。
 では、今回の「GoToトラベルの緊急停止」を機会に、国と各都道府県が共に「GoToトラベル」が「COVID-19」の感染拡大にどれだけ影響を与えたかを正確な調査を行い、「正確な結果」を発表すれば良いのでないか。
結果内容が良ければ、「GoToトラベル」の再開時には国民がより安心して利用することが出来る。
また、良くない結果であれば、今回の判断は正しかったと裏付けられる。
調査結果については、いつでもネットで確認できる状態であれば、私達は明瞭簡潔に正しく行動する事が可能になる。
今、この「GoToトラベルの緊急停止」の混乱において最も重要な事は、正確な調査を行いその結果を発表する為に最適な期間ではなかろうか。
少々荒っぽい言葉を使えば、ある種の「人体実験」とも言えるが、精密に調査を行う価値はとても大きい。

 今回の決定は、非常に多くの観光地の旅館や旅行会社に大きな打撃を与えると同時にこの年末年始は再び、前回や世界と比べると軽めではあるが再び「セルフ・ロックダウン」を強いられる事となった。
またしても、私達の楽しみを「COVID-19」によって奪われる結果となった。
 しかしながら、世間に反して「COVID-19」によって特需を得ている世界もある。所謂「コロナ特需」だ。
 「マスク」や「消毒液」はその最たるだが、もう「トイレットペーパー」も含めて争奪戦になることは少ないだろう。
ただ、「マスク」に関しては、まだビジネスとして大きく広がる可能性を持つ。
今回のマスク不足に対して、家電メーカーの「シャープ」やスポーツウェアメーカーの「ミズノ」が早々に乗り出した。
前者は、一時期は入手困難な程大人気だったが、マスクが容易に手に入る様になってからは些かコスト的に高く、ビジネスとしては残念ながら尻すぼみとなった。
後者は、スポーツメーカーらしく、洗って何度も使える点や水着やスポーツウェア生地の素材を手掛けていることや、優れたデザインを用意していたが、企業としてはCSRの観点からの取り組みからなのか、「コロナ特需」という目の前に必ず金の出る鉱山があるにも関わらず、鉱山を掘り当てることを事実上棄権し、マスクの販売はほんの数回だけで終わってしまった。
(2020年12月21日現在は、「フェイスガードタイプ」のみ通常販売を行っている。)
結果、その鉱山を掘り当てたのは「ファーストリテイリング社」の「ユニクロ」だった。
手頃な価格はもちろん、オーソドックスなマスクの形で何度も使える物を発売した。
その後、改良を重ね、通気性や装着感も改善され、カラーバリエーションも増やしていった。
子供達には、今年に流行りに流行った「鬼滅の刃」をモチーフにしたマスクが大人気となった。
 次に、「オンライン会議」や「オンライン飲み会」等で利用する「Zoom」や「Teams」といったオンライン会議ソフトと、併せて必要となるブロードバンド契約とネットワーク機器、並びにWebカメラとヘッドセットが爆発的に需要を高めた。
 娯楽は、自宅で楽しめるものが求められ、「TVゲーム関連」と「Netflix」「Amazon Prime Video」といった「動画配信サービス」は軒並み好調だった。
特別定額給付金によって、大型テレビや生活家電が売れに売れた。
他には、対面を避ける事を最小に抑えることが出来る「宅配ピザ」や「通信販売」も大きく伸びた。
全国のトイレに設置されているハンドドライヤーの利用禁止が相次いだ為、「ペーパータオル」の需要が跳ね上がり、対面時に飛沫防止の為にあちらこちらに設置された、「アクリルボード」はテレビ局などはもちろん、ほぼ全ての施設から需要は急激に高まった。
これらを取り扱っている企業は、当事者も驚く程の特需だったろうし、暫くは好調が続くだろう。
そして、もう一つ賑わっている所がある。
「心療内科」だ。

 今は、どこの心療内科も満員で、初診はおろかこれまで通院されている方は予約も取れにくく、治療の肝となるカウンセリングは端折られ、症状を確認して薬を処方して終わるだけの診療する状態が精一杯となっている。
元々、心療内科の患者数は右肩上がりになっていた傾向にあり、その上「COVID-19」の感染拡大により生活様式が一変し、生活自体も難しくなったり元々心が疲れていた方々はより一層辛い環境下になったことから、患者数は激増した。
心療内科は、「安定的且つ継続的な医療提供体制が成り立たなくなる」という点においては、どこよりも先に「医療崩壊」に近い状態となっている。
様々な種類のある精神疾患も、「COVID-19」と同様に危険な病だ。
「COVID-19」の様に感染することは無いが、着実に患者数は増え続けており完治するまでには長い時間を必要とし、場合によっては一生その病と付き合っていかなければならない。
「死」に繋がるという点においても、心療内科が「医療崩壊」に近い状態となっている事は「COVID-19」よりも深刻な問題と言えるのではないだろうか。

 12月21日現在、全国規模で「COVID-19」の感染拡大が続き、大阪と札幌に自衛隊員が派遣され、増え続ける重傷者を受け入れる体制を急ピッチで進められている。
「トリアージ」という言葉がある。
患者の重症度に基づいて、医療・治療の優先度を決定して選別を行うことを「トリアージ」と言う。
既にイタリアやスペインでは、第1波の時点で医療崩壊が起きていた。
特にイタリアは、2008年に発生した世界的な経済金融危機(所謂「リーマン・ショック」)により、国の財政赤字を減らすために医療費支出を抑えることが標的とされた結果、病院の統廃合や病床の削減と医療スタッフの給与削減などが行われた。
その為、今回の「COVID-19」の感染拡大の第1波の際に対してイタリアは全く為す術が無かった。
感染が瞬く間に広がり、各地でクラスター感染が起こり、あっという間に全ての病院の病床が埋まった。
医者や看護師、医療機器と肝心の病床も全く足りなくなった。
そして、「トリアージ」の意味が変わったのだ。
「生存する可能性がより高い患者を優先する」という「命の選択」を医療現場で迫られ、医療従事者はそれを実行した。
医師が「誰を死なせ誰を生かすべきか、私たちは決めなければならない」と苦悩の言葉を述べていた姿がとても心に突き刺さった。
 現在の日本では、高齢者達が多くのベッドを埋め尽くしている。
一方、交通事故で運ばれた若い人や幼い子供が受け入れられず命が失われていくという事が現実化してきた。
従来なら救える命も、今では救えなくなっている。
致命的なのは、「COVID-19」の患者を受け入れる程、「赤字経営」となる事が事態を深刻化させている。

 「COVID-19」といえど、患者の治療により病院に報酬が入るはずのなのに赤字になってしまうという現状を、不思議に思う方もいるかも知れない。
大きな理屈はこうだ。
先ず、「COVID-19」の患者を受け入れると一般患者が感染を恐れて来なくなり、入院中の患者も転院して行く。
そして、「COVID-19」の患者を受け入れた病院には、風評被害というオマケが、もれなくついてくる。
同時に、感染防止策の徹底として病棟の閉鎖が必要となり、施設整備や備品購入などによるコストが増加する。
次に感染者が仮に「0」になっても、次の波に備えて病床を確保しておかなければならない。
そうなると、単純に病床の確保だけではなく、病棟の閉鎖迄を行う必要がある為、実際に利用出来る病床や病室は大きく減ってしまう。
加えて、「COVID-19」の患者には、看護師や医師などを一定数配置しなければならない。
特に重症患者には、容態が安定せず予断を許さない事から24時間体制で、1人の患者に対して6〜8人の看護師が必要となる。
その為、医師や看護師の数が不足する事によって、入院や手術が必要な一般患者の受け入れる事が出来なくなる。
また、医師や看護師は普段は行わない、掃除、洗濯、廃棄等まで行う。
最悪のケースでは、感染防止の為にご遺体を丁寧に包み納棺まで行う。
医療従事者は心身ともに完全に疲労困憊し、去って行く者も少なくない。
自分も感染するという恐怖の最前線で、もはや使命感だけでは持たない。
「COVID-19」の患者を受け入れると、医療機関はジリ貧にしか向かない結果となる。
ただ公の病院であれば、税金という魔法のお金を注入すればある程度保てるが、民間の病院ではそうはいかない。
単純に経営破たんをするのを、使命感を持って待つだけとなる。
それが今の日本の「医療崩壊」だ。

 今回の「GoToトラベル」の停止によって、観光地の旅館や旅行会社に大きな打撃を与えた。
営業時間の制限を強いられた、飲食店も同様だ。
先行きの見えない未来に、精神疾患を患う方も増え続けるだろう。
そして、このまま感染者数が増加し重病者が増加の一途を辿ると、「COVID-19」の患者を受け入れた病院が次々と閉鎖されていき、「トリアージ」のあり方も当然変わって行くだろう。
これらの問題を背負ったまま、この国は新年を迎えようとしている。

 ただ、こんな最中でも個人差はあれど「半沢直樹」や「鬼滅の刃」で感動し「M-1グランプリ」で笑う事が出来るのは、独特の国民性だと思う。
悲観的な方向にばかり目を向けず、明るく楽しい方向に目を向けて復興に向けて歩んでいく。
だからこそ、この日本は戦後からここまで這い上がることが出来たのかもしれない。

率直に申し上げます。 もし、お金に余力がございましたら、遠慮なくこちらまで・・・。 ありがたく、キチンと無駄なく活動費に使わせて頂きます。 一つよしなに。