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「会社のために働くな」と告げてから1年、会社はどうなったか。

「会社のために働いてはいけない」

コロナ禍が本格化していく最中のちょうど1年前、会社のメンバーに伝えたことでした。

・会社の存続より個人の人生
・仕事は自分が本当に役に立ちたい相手と
・誰かと向き合える力をつける

大まかに言うと、これら3つの考え方からなる会社の雇用/報酬形態や仕事のあり方を変化させる決断です。
それから1年が経ったいま、ここで一度振り返ってみようと思い筆をとりました。

もちろんまだまだ試行錯誤の途上ですが、この記事を通じてだれかの役に立てれば嬉しく思います。


「人を支える人」になれているか?

私が経営する70seedsという会社のことを少し。

70seedsは「次の70年に何をのこす?」という問いかけをコンセプトに掲げて、世の中に新しい当たり前を生み出そうとする企業や個人、事業のためにPRやブランディング、編集といった領域での支援に取り組む会社です。

こちらは運営しているウェブメディア『70seeds』。

「次の70年」という時間軸をかかげている通り、バズやフォロワー増やしのような一過性の浮き沈みにとらわれるのではなく、世の中が本質的に必要としていることを実現していくためのパートナーであることにこだわって事業を営んでいます。

ただ、そんな会社だからこそ浮かぶ、ある不安がありました。
それは「自分たちは“人を支える人”たりえているか」ということ。

自分たちが支援したいと思う相手は本気で世の中に変化を起こそうとしている人たちばかり。その気持ちや覚悟に応え、支えるためには自分たち自身の力や覚悟が必要です。

今の自分たちが本当に十分な存在になれているだろうか、という問いかけはずっとつきもので、この半年前にはビジョン・ミッション・ポリシーの策定に取り組むきっかけにもなっていました。

そんなさなかに訪れたコロナ禍。自治体関係の案件を中心にプロジェクトのキャンセルや縮小が続く中、私が考えていたのは「個人の人生を会社の道連れにしてはいけない」ということでした。


会社のために存在している人なんていない

コロナ禍の影響で一時的に半分にまで落ち込んだ売上数字をみながら、私の脳裏をよぎったのは独立前に勤めていた会社でのこと。

経営が傾いていた当時の勤め先では、希望退職者を募ったり営業強化に取り組むことで業績回復を目指していました。ですが、そんな状況下において私の中で育っていったのは「会社のため」に働くことへの疑問。会社を存続させるために無理に案件を獲得してくる、売上を優先するあまり現場では事故が多発するーー。

あれ、この会社って何のために存在しているんだっけ?自分は何のために働いているんだっけ?(ほどなくして私は退職を決めました)

人にはそれぞれ楽しいこと、好きなこと、苦労してでもやり遂げたいことがあって、会社はそれに取り組む/見つける機会を提供するための場でしかありません。さらにいうなら、向かう方向が近い個人が集まった結果、それが会社として成り立つ。

そんな自分自身が求める「会社」のピュアな姿についてコロナ禍で改めて立ち返った結果、冒頭の決断にたどり着くことになったのです。

「会社が潰れたとしても、個人の人生が狂わされることのないような会社にしよう。そうすれば、結果として世の中に必要とされる会社が生まれるはずだ」


自律したポートフォリオで生きるための3つのルール

とは言え、私の思いが他のメンバーにとっては思い込みでしかない可能性もあります。自分が何を考えているのか、皆はどんな働き方ひいては人生を送っていきたいのか、そんなことを「人生への投資」というテーマで、できるだけ丁寧に話し合っていきました。

画像は当時の議論用につくった資料の一部です。

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そして、その結果作り上げていったルールがこちらです。


ルール①70seedsでは「ライスワーク」を受けない

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会社の存続を目的化しない。自分たちが心から力になりたい相手のために仕事をした結果、会社が必要とされ存続している状態を目指すのが1つ目の方針です。

また、その中でも「納品が仕事」というアウトプット志向の仕事だけではなく、「その先の売上に貢献する」というアウトカム志向の仕事を増やしていこう、ということも併せて方針として定めました。

そしてこの方針と対になるのが2つ目のルール。


ルール②担当する仕事は個人が決める

会社のためのライスワークを受けないということは、中にいるメンバーの仕事の選び方も変わるということ。一般的な考え方であれば会社の売上目標やバーンレートから個々人の担当売上が設定されるもの。

そうではなく、個人がやりたいかやりたくないかを判断して仕事に向き合っていく仕組みを敷くことにしました。会社にお仕事の問い合わせがあったとき、リソース状況や興味関心が合うメンバーがいなければお受けすることができません。

もちろん、それで会社は回るのか?という葛藤はありました。それを解決するのが3つ目のルールです。


ルール③個人の給与は担当案件の粗利によって決まる

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それまでの「定められた給与を支払う」という考え方を捨て、案件の利益を会社と担当メンバーで折半していく方針に変更しました。例えば月50万円の粗利が発生する案件を関与メンバーが2人で担当する場合であれば、会社:メンバー=1:1、25万円÷2=12.5万円が担当者の給与に組み込まれる、という仕組みです。

また、生み出したアウトカムに応じて報酬が変わるレベニューシェアの案件や自社事業に関しては、売上と連動した報酬とは別途、個人の習熟度に応じた固定フィーが会社から支払われる「ベーシックインカム給」(便宜上こう呼んでいます)を設定しています。

これにより、給与のコントロール権が個人側に渡る、厳しい言い方をすれば自分でポートフォリオを組み立てる力が求められる環境を目指したのです。


このように案件基準、アサイン方針、報酬制度の3つを「自律ポートフォリオ制」とでもいうべきルールとして編集・再設計することで、70seedsは「やりたいことに向かうための場」としての会社をよりピュアな存在に、個人をより自律した存在へとそれぞれ変化を促す一歩を踏み出すことになりました。

(他にも裁量労働制の導入=給与と労働日数が連動しない、フルリモート制、など補助的な制度設計はいくつもあるのですがここでは割愛します)

これらの議論から約1年経ったいま、会社がどうなったかというとーー。


V字回復&給与UP・・・!?

この方針ではやっていけない、と言われるんじゃないか。そもそも仕事を受けられなくなってしまうんじゃないか。そんな心配をよそに、会社の売上・利益はともにコロナ前を超える水準に回復、メンバーの給与も増加しており、新方針の設定後、メンバーの意識と行動がたしかに変わっていることを感じています。

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上に挙げた資料中に「覚悟」という言葉がありましたが、コロナをきっかけに私が持ったのは会社がなくなってもいいから個人を生かすという覚悟でした。

その結果、

ひとりひとりが向き合いたい相手のことを真剣に考える

相手のために成果を出す

会社としても信頼いただける

新しいお仕事につながる

といういいサイクルの入り口をつかむことができたように思います。
すべては、このような状況下で70seedsの力を必要してくださる方々と、ビジョンに一緒に向かってくれるメンバーのおかげです。

余談ですが、私の名刺には#PR#PUNK#PEACEという3つのハッシュタグを記しています。その中でも今回の取り組みはPUNKの精神を体現するものなんじゃないかと、個人的には思っています。

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それは、まじり気のない状態、言い換えれば「徹底的にピュアである」ということ。
自分たちの存在意義とは?会社の役割とは?といった問いに向き合うこと。
共感することに寄り添い、違和感を放置しないこと。

そんなピュアであることへのこだわりが、会社と個人の関係をフラットなものにする。
必要とされなければなくなるし、誰かにとって必要であれば残っていく。

まだまだこの先どうなるかなんてわからない世の中ですが(だからこそ)、とことんピュアな会社であることにこだわり続けたいものです。


※仲間の募集を始めました!70seedsが気になる方はぜひお気軽にご連絡ください〜!!


サポートいただいたお礼に和菓子をご馳走したい気持ちです。これから栗の季節ですね・・・!