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私の父

私の父は笑わない。とかく感情を見せない。
例えるならば、『あたしンち』の父に似ている。

家で食事を取る時も、キッチンに椅子を構えて、一人で食べる。

高校生活や進路のことについて相談しても、「まあ何でもいいじゃん」と、何もアドバイスしてくれない。

祖父が亡くなった時には涙を見せていたが、2時間~3時間には「老衰だったから仕方ない、往生したよ」と言ってケロっとしていた。

父は不思議な人で、ずっと、どこか近寄りがたいと感じていた。
父は何を生きがいとしているのか、何のために生きているのかと思ったこともある。

☆ ☆ ☆

そんな父が、数年前からふと自分の話をしてくれるようになった。

夜遅くまで起きていると、酒を飲んでいい気分になった父が話しかけてくれる。

「俺はな、日本軍の航空母艦が好きなんだ」
そう言って、コツコツと作っていた戦艦のプラモデルを見せてくれることがあった。

またある時は、
「大学の単位って取れているのか?昔、俺が大学に通っていた時はこんな授業があったんだ」
と、自分の大学時代の話をしてくれたこともある。

今でも、不思議で掴めない人なことには変わりない。
ただ、少しずつ、本当に断片的で少しずつだが、父の新たな一面を知ることができている。
近寄りがたい存在ではなくなったことが、自分にはとても嬉しい。

今はとても気恥ずかしくて出来ないが、いつか二人で居酒屋で酌を交わしたい。

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