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気候変動の報告書8年ぶり公表。20年後の世界を予測する


国連の「気候変動に関する政府間パネル」の報告書が公表された。
234人の研究者が執筆に参加し1万4000以上の論文などを基にまとめられたとされる。温暖化に伴う将来予測に関する最新の知見の集約といえるだろう。

1 今回公表されたのは

今日公表されたのは報告書の要約になる。

https://www.meti.go.jp/press/2021/08/20210809001/20210809001-1.pdf

A. 気候の現状、B. 将来ありうる気候、C. リスク評価と地域適応のための気候情報、D. 将来の気候変動について、将来予測に関しては、温室効果ガス排出量に応じたシナリオ(SSP)別に記載されている。

目をひくのは、
2021~2040 年の世界平均気温がどのシナリオでも1.2度以上上がる予測であることだ。
20年以内というと遠い将来の未来の話ではない。
SSP1-1.9:+1.2~1.7℃(約 1.5℃)
SSP1-2.6:+1.2~1.8℃(約 1.5℃)
SSP2-4.5:+1.2~1.8℃(約 1.5℃)
SSP3-7.9:+1.2~1.8℃(約 1.5℃)
SSP5-8.5:+1.3~1.9℃(約 1.6℃)

1度上がったところで何が起こる?

世界規模では、地球温暖化が 1℃進行するごと に、極端な日降水量の強度が約 7%上昇 という記載がある。
今より暑くなるだけではなくより豪雨にさらされるようになるということだ。

温暖化とセットの海面上昇について、こちらは80年後までの予測だが、

○ 1995~2014 年を基準とした 2100 年までの 世界平均海面水位上昇量は、
SSP1-1.9:0.28~0.55 m
SSP1-2.6:0.32~0.62 m
SSP2-4.5:0.44~0.76 m
SSP5-8.5:0.63~1.01 m
( 地域的な平均海面水位上昇量は世界の沿岸部 の約 3 分の 2 では世界平均の±20%以内)

2 将来予測と備え

海面上昇数十センチといえども、海抜の低いところでは死活問題である。また、海面が1m上昇すると、大阪では北西部から堺市にかけて海岸線はほぼ水没、東京でも、堤防などを高くするなどの対策をとらなければ、江東区、墨田区、江戸川区、葛飾区のほぼ全域が影響を受けるとされていることからすると(https://www.jccca.org/faq/15931) 2100年までの最悪シナリオの1mというのはとんでもない上昇だということがわかる。

日降水量の強度が強まれば、自然災害が増え、危険地域では日頃の備え、経済活動でも様々な障害を予想したバックアッププランが必要になるだろう。

また、豪雨や干ばつによって全世界的に農作物の生産に影響が出ることが考えられる。世界中で食料が不足したときに、自国より良い作物を日本に優先的に輸出してくれる国がどれだけあるだろうか。ここからの数年、国内の農家が異常気象で苦しむときに、農業を断念しなくてすむように消費者もサポートしていくことが大切になりそうだ。

3 温暖化を防ぐには

この時期温暖化と聞くと、冷房を使うことも心配になるが、二酸化炭素排出量の中で冷房の占める割合はかなり低い(もちろん無駄はない方がいいが、熱中症になりそうな中で頑張ってもそこまで効果がない)
むしろ家庭で工夫するなら、省エネ製品に変える、車の利用を減らす方が効果がありそうだ(それも必要な車の利用を減らすのではなく宅配便の再配達を減らすことでも実現できる)

家庭からの二酸化炭素排出量(2019年度)
照明・家電製品などから 29.8%
自動車から 26.4%
暖房から 15.7%… 冷房から 2.8%
https://www.jccca.org/download/13337

なお、環境庁のサイトでは、電気代を入力すると電気代と二酸化炭素を減らす方法が提案されるアプリも公開されている(無理のある選択肢も提示されるが)
■うちエコ診断WEBサービス
https://webapp.uchieco-shindan.jp/(外部サイトへ)

かつて将来の世代のためと語られていた温暖化が自分達の人生に迫ってきている。同じ湯の中の蛙でも、湯が沸き始めた状況を把握して行動できるかどうかで未来は変わる。