回帰

僕は、誰かへ向けて書いた小説で、真価を発揮する人間だと思う。ただ、自身の描きたい物語それもいい。好きだし、面白いと思う。それでも、誰かへ向けた物語は、僕の世界そのものだ。誰かへなんて言ってるのに、それはどこまでも自分本位。なのに、どこまでも綺麗なものだ。それが他人からも理解してもらえるものかはわからない。それでも、きっと誰かの心へ、刺さって抜けない、そんなものになる。ふとした瞬間に、この物語を思い出せばいい。恥ずかしげもなく、他人への気持ちを吐露している人間を、思い出せばいい。あんな恥ずかしい人間がいるのなら、自分だって、素直になってもいいと思えばいい。
誰かに守られている存在だから、僕もこの物語で誰かを守りたい。守らせてほしい。
身を隠してください。怖いと嘆くくらいなら、ここに身を隠しててください。貴方たちがいいと思えたタイミングで、出てきたらいいよ。これはそんな物語です。

誰かにとっての、そんな物語です。
一人の男が、一人の女の子に救われる話。
だけど、一方的な関係ではない。彼女だって救われている。
信じたいものを信じ続けれるように。そして、忘れてしまったものを思い出せるように。そうやって、知らず知らずに支え合う。僕らはそんな世界に生きている。生きていく。
この物語を、救いにする人が居ますように。
この物語を理解する人が、少なければ、幸せな世の中です。理解せず、いい話だと思われるのが、一番幸せな世界。そんな気がしています。

大多数になれない、全ての人へ。
守ってくれるものは、ありますよ。

新作小説 「回帰」 作 髙木 春楡

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