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「遺伝子」って何かを考える

こんにちは。うつ病休職エンジニアの三十郎です。

今年のノーベル化学賞は、遺伝子操作を簡単・安価にした女性達が受賞しました。ところで遺伝子の定義を正しく説明できますか?

1.「遺伝子」は人体の設計図

生物で習った、人間の細胞に46個ある2重らせんのあれでしょ?

残念、ちょっと違います。46個あるのは染色体で2重らせんの塊です。2重らせん:DNA(デオキシ・リボ核酸)は、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類の塩基が60億対も並んだ物です(ヒトの場合)。

じゃあ、遺伝子は?と言うと、DNAの中で体の設計に関わっている部分で、約2.6万存在すると言われています。各遺伝子が何個のDNAで構成されているのか、数はバラバラです。一応、DNA3対で1つの情報単位になります。DNAのうち約5%(諸説有り)が遺伝子らしいので、60億÷2×5%=1.5億対のDNAで構成されています。

何故2で割るかですが、父型の遺伝子と母型の遺伝子のどちらかを選択して、設計するからです。目が母親似で、口が父親似とか言うでしょ。設計図は2枚あって、適宜どちらかを選択しています。これは、どちらかの設計図にエラーがある場合(DNAは紫外線などで損傷します)、もう片方の設計図を使うためと言われています。また、どのように選択しているのか不明ですが、違う設計図が混じり合った方が生存に有利な固体ができるそうです(雑種強勢)。

ちなみに、ゲノムという言葉も聞きますが、これは、DNAが並んでいる順番のことです。DNA鑑定というのは、正式にはゲノム鑑定で、同じ人のDNAは同じゲノムになるから、個人を特定できるのです。

ここで疑問が残ります。95%のDNAは人体の設計に使われていないのに、何故存在するの? 未だ明確になっていませんが、DNAは設計図以外にも、生きるための何かしらの役目も持つと考えられています。

2.遺伝子で何が変わるのか?

設計図が違えば、違う生物になります。しかし、ヒトと他の生物を比べた場合、かなりの割合で共通する遺伝子が存在することが分かった来ました。

共通する遺伝子(2018年記事)

ヒト:ヒト = 99.9%

ヒト:チンパンジー = 96%

ヒト:ネコ = 90%

ヒト:ネズミ = 85%

ヒト:ウシ = 80%

ヒト:ハエ = 61%

ヒト:ニワトリ = 60%

ヒト:バナナ = 60%

ニワトリまでは、何となく分かりますが、まさかバナナと一緒の部分が半分以上もあるとは! また、共通する遺伝子があれば、共通する病気もあるようです。バナナと共通の病気なんて思いも付きません。

更に、高等動物であればDNAサイズが大きいのかというと、違うみたいです。同様に、遺伝子サイズが大きいとも限りません。

ヒト:30億対、マウス:33億対、アフリカハイギョの一種:1300億対、アメーバの一種:6700億対

この辺は、進化の不思議でしかありません。

3.遺伝子を勝手にいじって良いのか?

2019年6月、中国の研究者が世界に先駆けて、ゲノム編集の技術を使ってエイズに耐性がある双子を誕生させたと誇らしげに発表しました。

彼は世界初の偉業を成し遂げたと自慢したかったのでしょうが、そんなことは、やろうと思えば他の国でもできたことで、倫理上の問題でやらなかっただけだと、大バッシングを受けました。そして、研究界から姿をくらませたそうです。

まあ、倫理観に疎い中国がやりそうなことですが、想像力の貧弱さを改めて露呈し、赤っ恥をかきました。

「デザイナー・ベビー」と言う、都合の良い赤ちゃんを作る問題は、DNA編集が容易になったからこそ、倫理上、許される行為なのか議論が湧き上がりました。トウモロコシのように、DNA編集した人間を作っても良いのか? 遺伝子をいじった場合、副作用の有無は、その個体がどのように死ぬかまで待たないと分かりません。なので、誰も責任の持てない問題に手を出したがらないのです。

現在は、遺伝的疾患のある患者に遺伝子治療を施すことまでは認められているようですが、本来なら自然淘汰されるべき個体が生き残ることに問題は無いのか? 生き延びた人が子供を作ることを望んだ場合、許されるのか? 議論は尽きないようです。

でも、どこかで秘密裏に「デザイナー・ベビー」が作られているかも知れません。簡単に作れる時代になったので。倫理観など人それぞれです。やった者勝ちになるかも知れません。あるいは、やった物負けか。


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