森博嗣『詩的私的ジャック』
詩的私的ジャック
刃物類の持ち込みが禁止されている機内で刃物を表紙に抱えた小説を読んだ。
S&Mシリーズ4作目。
旅のお供に1日では読み終えられない小説を持って行きたくて選んだ1冊。期待通り2日目に無事に事件は解決した。旅の合間の待ち時間にコツコツと読み進めたからか、彼の書く文章に慣れてきたからか、これまでの作品よりもはやく読み終えた感覚が残る。
電話をかけに行くときにわざわざ少し離れたところに行ったり(この環境において、出先から電話をかけるというのは当たり前に公衆電話からかけるため、わざわざ「公衆電話から」なんて書かれていないのが良い。第二次世界大戦が起きてから第一次世界大戦が生まれるように。)、亡くなった少女が「ポケットベル」を持っていたり。
製図室にこもって建築学生をしている萌絵を脳の片隅に、ある建築家とその生涯をかけた作品の展示を見に行っていた。
ガウディとサグラダファミリア展。
森の作品でも触れられることがあったが、建築はアートでありかつ極めて数学的なものである。そしてそれはとても矛盾したものであるとも思える。ただ、これは同時に考えるから複雑なのであって、それぞれは独立していて単純なのかもしれない。
ガウディがサグラダファミリアに施した彫刻作品と、建築の構造としてとりいれた数々の物理的な性質、その背後にある自然と神の存在。
ここ最近は建築学科が理系に属することへの納得感を感じながら、一方で美術、文学、神学、哲学を文系として認識しているなかでの建築の位置付けを考えている。
ガウディとサグラダ・ファミリア展のグッズのセンチメンタルサーカスがとにかくかわいかった。愛おしい。
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